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カトリーナとヒューの夏のある日 1

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 あれから、歌の練習はなんとかごまかせている。


 というのも、歌以外の授業をつぶしていることや厳しすぎる指導に家庭や他の先生からお叱りがあり、お歌の授業時間数が前年どおりに戻され。

 そして、ハーラン先生のやりすぎを防止するためか、神様に捧げる歌の練習は全校生徒合同になり、他の学年の担任の先生も加わったので、カトリーナひとりの声がないことを聞き咎めることがなくなったのである。

 気づいても他の先生の手前きつく言わないだけかもだけど……!



 神様に捧げる歌以外は穏やかなハーラン先生とまじめにお勉強をして、たまにヒューともみもみなでなでしたりして穏やかな日常を過ごし、町は短い夏を迎えた。




 カトリーナとヒューも夏らしい装いに衣替えをし、今日は放課後デートである!



 カトリーナは隣のおばあちゃんと仕立てたばかりのミントグリーンのサマードレス姿だ。

 パフスリーブにフリルがいっぱいで女の子らしいの!
 カトリーナとおばあちゃんの力作!

 ポケットの移設は柄が合わないから諦めて、○次元ポシェットを作った。

 どの服にも使えて便利だよ!



 隣のヒューは薄手の襟のないシャツに、軽い素材のオリーブ色のズボン。
 袖も裾も短めでとっても涼しげ。


 ヒューのおうちに勉強道具を置かせてもらい、手を繋いで町におやつを買いに出た。
 放課後に町に出るのはひさしぶりだ。



「お嬢ちゃん、久しぶりだな! また米かい?」

 粉屋さんのおじさんが、店先で肉巻き米串を焼きながら話しかけてきた。

 お祭りの後、パパと米を買いに来たらおじさんにお礼を言われたの。
 肉巻き米串、米串屋台史上空前の大ヒットになったんだって!



 米の売り上げも増えたって感謝されて、買った米におまけしてくれた。

 それからたまに米を買いに寄っている。


「米はまだあるから今日はいいの。肉巻き米串2本ください!」

 ポシェットから硬貨を取り出す。

「カトリーナ、僕が……」

「いいの、シャーベットはヒューがお願いね!」

「はいよ! キースのとこの坊主もよく来てくれるよな、いつもありがとうな!」

 おじさんの渡してくれたあつあつの肉巻き米串にかぶりつく。
 んーおいしいー!



「肉巻き米串やっぱりおいしいね。今年のお祭りでもまた大人気かな」
「そうかもね。この甘いタレもいいね」


 タレが改良されていた!
 おじさんは研究に余念がない!




 米串を片手に町をぶらぶらしていると、視界の片隅で小さな男の子が転んだのが見えた。

 膝に血が滲み、わっと泣き出してしまった。

 カトリーナは迷わず駆け寄る。

「転んだのね。痛いね」

『いたいのとんでけ』しようと伸ばした手を、ヒューが掴んだ。

「カトリーナ」

 ヒューが訴えるような目をしている。
 そうだった、『いたいのとんでけ』は使わないんだった。
 カトリーナはちょっと思案した。



「ヒュー、お水だして、お膝洗ってあげて!」


 ヒューはカトリーナだってできるのに? と思いながらも頷くと、「水よ」と呟いて、てのひらくらいの小さな水の塊を出して、血と泥で汚れたお膝を包み込んだ。
 その水を指先でちょん、とつついた。

(『ちょっとだけいたいのとんでけ』)


 ヒューのお水が消えると、皮がめくれてるけど血はすっかり止まっていた。


「あっ痛くない!」

 男の子はぴたっと泣き止んだ。

「ふふっよかったね!」

「……血が出てびっくりしたんだろうね。気をつけてね」

「そ、そうかも! 恥ずかしいや! お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとう!」

 照れ笑いを浮かべ、男の子は駆けていった。



 手を振り見送って、となりのヒューを見上げた。
 あれっヒュー、また背が伸びた!

「あれなら、いいでしょ?」


 ぱちんとウィンクしてみせる。
 魔法で治したようには見えなかった、よね?



 ヒューは眩しそうな顔で、

「さすが、僕のカトリーナはすてきな女の子だ」



 と、頬に恭しくキスをしてくれた。












あとがき

カトリーナは知りませんが、お歌の授業の変更の裏ではヒューのママが暗躍してます。

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