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ラグエリア大陸編~生動の章~

第3話『買い物』

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「では、残りは明日でよろしいですね?」
「はい。よろしくお願いします」

 とりあえず、資金として金貨100枚を手にして1番の立て札に向かう。

 顔や手がが豹で背広っぽい服の亜人が受付をしている。
 男の人(?)なのかな?
 流石に豹の顔で性別は分からない。

「受付をさせてもらいます。レパルドと申します。今日はどのような要件でしょうか?」
「あの、身分証の発行をお願いします」
「では、書類を用意しますので、この水晶玉に手を置いてください」
「こうですか?」
「それで結構です。……どうやら犯罪はしてませんね。適正は、『オールラウンダー』ですので、レベル1の職業からお好きなのを選べます」

 そう言って、豹人の受付男性から紙を渡される。
 紙にはレベル1の職業が書かれている。
 うわっ。結構多いなぁ。

「職業は普通一度決めると変更はできませんが、オールラウンダーに限っては変更が可能です。ただし変更するとそれまでの職業熟練度がリセットされますのでお気をつけください。ただし、熟練度が満了しますとその職業を習得したことになり、別の職業に移ることができます」
「分かりました。職業はゆっくり決めてもいいのですか?」
「構いませんよ。では、この書類にサインをお願いします」
「あ、はい」

 書類に目を通すとごくごく一般的な注意事項や犯罪を犯した場合の罰則などが書かれていた。
 俺はサインをして渡す。

 身分証カードは1分ほどで出来上がり手渡される。
 真っ白なカード。
 中央部分に『ハルト タカハシ』と印字されている。

「カードの名前の欄を押しますと、本人の情報を確認することができます」
「お。本当だ」

 名前を押すとカードの表示が切り替わり、名前が左上に表示されてそれ下に最低限の情報が書かれていた。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 ハルト タカハシ 19歳 無職
 カードランク:白 貢献度:0/100
 犯罪歴:無
 カード貯金:0D(ドエル)


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


「無職の部分を押すと職業欄が表示されます。選んで押せば職業が決定します」
「カードランクって何ですか?」
「カードにはランクがあり『貢献度』が溜まることでカードの色が変わります。ランクが上がることで様々なサービスや減税が受けられます」
「カード貯金というのは?」
「世界共通通貨であるドエルをグランドギルドに預けることができます。それをカードに表示でき、またグランドギルドに所属する店では支払いにカードを提示することで貯金額から支払うことができます」
「じゃあ、ついでに金貨10枚分を貯金してもらえますか?」
「では、カードをお預かりさせてもらいます」

 カードが戻ってくるとカード貯金額が100万Dとなっていた。

「では、身分証カードの発行額として銀貨1枚か1000ドエルいただきます」
「じゃあ、金貨で支払います」
「受け取りました。では……銀貨99枚のお返しになります」
「確かに。あの、どこかお薦めの泊まるところはありますか?」
「でしたら、ここを出て右に3軒隣にある『金鹿(きんか)亭』という宿屋がお薦めです」
「ありがとうございます」

 俺はグランドギルドを出て門に戻り、仮の身分証を返却して入町料の銀貨1枚を渡し身分証カードを見せる。
 そして薦められた『金鹿亭』に向かった。

「ここか…。なかなか立派な建物だな」
「ですね」
「今更なんだが、アカリって俺以外には見えてないのか?」
「本当に今更ですが……通常は見えないようになってますが、見えるようにも出来ます」
「じゃあ、フェアリーを連れているのってこの世界ではどうなんだ?」
「珍しくはありませんが、召喚獣扱いになりますので職業が『召喚士』でないと怪しまれます」
「じゃあ、しばらくは見えない状態で頼む」
「分かりました」

 話が終わったところで建物の中に入る。

「あら、いらっしゃい。金鹿亭にようこそ」
「すいません。泊まりたいのですが」
「1階なら一泊銀貨15枚。2階なら銀貨12枚。3階なら銀貨10枚だね。また、夕食と朝食と付きなら銀貨1枚追加料金を貰うよ」
「じゃあ、とりあえず3階の部屋を食事付きで10日間分お願いします」

 そう言って、金貨1枚と銀貨10枚を渡す。

「おや、兄さん、計算早いねぇ~。はい。ちょうどだね。じゃあ、301号室を使いな」
「ありがとうございます」

 鍵を受け取り部屋に向かう。

「へ~。なかなか綺麗じゃないか」

 必要最低限にベッドと机に椅子、クローゼットがある。
 掃除などはちゃんとされているが、ベッドの寝心地が悪い。
 木のベッドに薄い敷布団に毛布のみ。
 スプリングの効いたベッドやフカフカ布団に慣れている俺には非常に厳しい物がある。

「とりあえず、生活用品を買い揃えないとな」
「では、買い物に出かけますか?」
「だな」

 部屋を出て鍵をかけて1階へ。

「おや、お出かけかい?」
「はい。服や雑貨品を買おうかと。お薦めの店はありますか」
「服ならマーサの服屋が良いね。雑貨品ならジョルネオ商店だね。どっちもこの大通りを右に向かって歩けば看板があるから分かるはずだよ」
「ありがとうございます」

 言われた通り大通りを歩く。
 まあまあの人だかりで賑わっている。
 店を探す中『ギルド』と書かれた建物が何軒かあった。
 
「あの建物は何なんだ?」
「冒険者所属のギルド……組織と言った方が分かりやすいでしょうか?」
「どういうとこなの?」
「冒険者はギルドに所属することでソロでは受けられない『チーム討伐依頼』を受けられるようになります。当然ですがソロ依頼より報酬額が良く、貢献度や職業熟練度も多くもらえます。リスクは依頼に失敗すると色々な罰則が付くことですね。また、ギルドにも『ランク』があります。ギルドランクが高いとグランドギルドから月々に報奨金がもらえ、指名依頼やグランドギルド加入店で様々サービスが受けられます」
「なるほど。でも、今の俺には関係ないかな」
「そうですね。マスターは先にご自分の能力を扱えるようになるのが先ですね」
「頑張るよ」

 歩くこと5分ほどで『マーサの服屋』の看板が見えた。

「お。ジョルネオ商店もあった」

 マーサの服屋から2軒先にジョルネオ商店が見える。
 まずはマーサの服屋から覘くことにする。

「すいません。下着を上下で3着と服も上下で3着欲しいんですが?」
「いらっしゃい。下着類はあのあたりで、服はこっちだよ」
「どうも。手に取って見ても良いですか?」
「強く引っ張たりしなけりゃ良いよ」
「分かりました」

 触ってみて分かったこと。
 絹ではなく布地なのでちょっとゴワゴワする。
 あと、パンツはトランクスタイプが主流のようだ。
 一安心。

 シャツは白が多い。
 あとは黒やグレー。
 ズボンも同様だ。

 結果、下着の上下を4着にシャツとズボンのセットも4着買うことにする。
 他にもジャケットが目に入る。

「あの……このジャケット」
「気になりるかい?」
「え、ええ……」
「これは、魔物であるブラックワイバーンの革で作られたジャケットだよ」
「ブラックワイバーン……普通のジャケットに無い何かがあるとか?」
「もちろんだよ。普通のジャケットより丈夫だ。それに熱や魔法に対する耐性も高い。まあ、その分値段も高いがね」
「いくらです?」
「金貨2枚だよ」
「買います」

 高い買い物かとも思ったが、黒光りしたジャケットのカッコよさに一目惚れしたので即買いだ。

 服屋での買い物後は雑貨屋に行く。
 生活用品としてコップやスプーンにフォークに食事用ナイフなど買うも箸や歯ブラシ、タオルなんかはなかった。
 しょうがないのでキッチン用品や野営用の品物など買っていく。

 雑貨屋を後にし生地屋に行く。
 生地屋には綿生地もあたので丸々買うことにした。
 金貨1枚だった。さすがに高いね。
 ついでに生地を着る専用のはさみも売ってもらった。

 そして何と言っても布団も売っていたことが分かり、心の中で小躍りしてしまった。
 布団はとても高級品で、毛布だけでも金貨1枚はする。
 綿生地にクインバードの産毛を入れて作った掛布団に綿生地にミルシープの毛で作った敷布団があった。
 金額はどちらも金貨5枚。

 高い。
 高いが買う。
 ここは惜しんではダメだ。

 ホクホク顔で俺は生地屋を後にしたのだった。
 いや、良い買い物した。
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