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第1章『ラクテリア王国編』

第13話『旅立ち5・荷馬車を改造したら人間を辞めてました』

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 俺とドラさんは商会ギルドに、マリルとミケは食料調達と言うそれぞれ目的に沿った行動を取る。

 最初、ドラさんを紹介するとギルド職員たちが驚いたが、姿を戻すとその驚きはさらに増加した。
 まあ、ドラさんは『竜馬』ではなく『竜馬王』だしな。

「まあ、なんだ。竜馬の登録をしちまおう。名前はドラニクスで良いんだな?」
「はい。お願いします」
「じゃあ、本題と行くか」
「『意思疎通メガホン』のことですね?」
「そうだ。買い取りたいんだが……いくつ用意できる?」
「そうですね。全部で3つでどうでしょう?」
「助かる。何か頼みたいことがあれば優遇するが?」
「それでしたら、高質な荷馬車を購入したいのですが」
「うむ。ならば良いのがある。本来2頭の馬で牽かせるために造ったのだが、どこをどう間違えたのか1と3/4頭分と言う中途半端な大きさでな。だがドラニクスなら丁度いい感じだろう。荷馬車の造りも衝撃吸収性の高い『カーボントレント材』で出来ているからな」
「それはスゴイですね。でも結構な値段になるんじゃ……」
「なら、意思疎通メガホン3つと交換……でどうだ?」
「良いんですか?」
「まあ、なんつーか、お前のソレは値段の付け方が難しいからな」
「じゃあ、それでお願いします」
「うし。じゃあ、早速ブツを見に行くか」
「よろしくお願いします」

 ギルマスの後に続き荷馬車を見に行く。
 ドラさんも文句を言うことなく無言で続いた。

「コイツなんだが……」
「おおっ」

 ギルマスが紹介した荷馬車は、カーボントレント材っで出来ていると言うことだったが、黒光りした艶やかな馬車だった。
 外装の装飾も拘りがあり、乗るのが躊躇ためらわれるほどの美しさがあった。

『うむ。私が引っ張るのに相応しい荷馬車よ』
「ドラさんが気に入ってくれたのならよかったでです」
「じゃあ、これで良いだな」
「はい。お願いします」

 応接室に戻り契約書にサインをして、俺は『意思疎通メガホン』を3つ、ギルマスに渡す。
 荷馬車はギルドの倉庫の一室を借りることにした。

 まあ、一応は荷物乗せが済むまでとなっているが、実際は付与魔法を施すまでの時間が欲しいと言うのが目的である。

 どんなに優れてた材質であっても木材である以上は腐ることもあるし痛むこともある。
 なので、『腐敗防止』と『自動修復』は確実にかけるとして、後は『軽量化』と『結界』も付けておこう。

 その上で、俺は『ある実験』をしてみようと思ったのだ。
 言わば、『走る家』を造ろうと思ったのだ。

『確かに中はそこそこ広いが家と言うほどとは思えんが?』
「ですね。このままではそうですが……」

 俺は荷馬車の出入り口にに取り付けられたカーテンに『ある付与魔法』を施すことにした。

「えっと、『固有空間』と」

 カーテンが光り、中に入るとそこは荷馬車の中ではなかった。
 無機質で真っ白な無の空間が広がっている。

「思った通りだな。後は……」

 魔力を高め『想像』する。
 草原、森、湖、小動物たち、青空の広がる。
 そして、一軒の家が出来上がる。

「――『固定』」

 そう言うと、俺は魔力を浮乗に戻す。

 まずは確認してみる。
 土に草、木や水、空気も『本物』ソックリであった。

「良いな。これなら、畑も作れるな」

 そして家の中に入る。1階は玄関、二層リビングにキッチンに浴室と洗濯所と遊戯室、4ヶ所のトイレを完備させ、2階はすべて個室にした。
 個室もフローリングと畳の二層部屋だ。一部屋12畳はあるのでゆったりと出来るだろう。
 一応、部屋ごとに家具や電化製品も配置してあるので、後は個人の私物を入れるだけでいつでも住めるわけだ。

 つまり、この空間の中は俺の魔力によって、俺のいた世界の物で溢れさせることも可能なのだ。

 まあ、あまり近代化はさせるつもりはないが……。

「しかし、ここまで出来るとはなぁ……」

 自分でやっておいてなんだが、よくできたもんだ。
 後は、出入りできる人の『制限』をかけられるようにするだけだ。

「本当にとんでもないことをしましたね」
「あ、アルテナ様っ!?」
「お久しぶりですね、スバルさん」
「ですね。あの……良いんですか地上に現れても」
「ここは厳密に言えば『地上』ではありませんからね」
「え?そうなんですか?」
「ここスバルさんが造った『世界』です」
「……えっと、『世界』ってのは大袈裟なのでは?」
「いえ。間違いなくここは『新世界』です」

 うん。俺は何かやらかしたらしい。

「それは問題事なんですね?」
「端的に言えば私たちの世界には何ら影響はありません」

 え?じゃあ、何が問題なのだろうか?

「スバルさんはここを作るまでは『人間』でした。しかし……」
「あ、あの……聞くのが怖いんですが」
「そうは言っても事実から目を逸らすのは……」
「ですよねー」

 アルテナ様の憐れむような顔に俺は覚悟を決めた。

「スバルさんは『神様見習い』になりました。これによりステータスに変化が……」
「えっと、どのようになったんでしょうか?」
「ご自分でご確認ください」

 正直、見るのが怖い。

 確認の前にレベルについて少し話そう。
 このルーグではレベルに限界上限が無いらしい。

 冒険者ランクがSで平均レベルが300越えらしい。
 レベル41の俺がDランクになれたのはグリーたちとパーティを組んでいたことが功を奏しただけだ。
 後は付与武具の効果もあったしね。
 実際にはランクF、評価が高ければランクEに上がれた……と言う程度のレベルなのだ。
 しかも、俺の能力の伸びは平均をしたまえ悪程度。

 それがどのようになったのか……。

 覚悟を決めて自分のステータスを確認する。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 スバル・クジョー/久城 昴 年齢/17歳 種族/神様見習い 称号/人間を捨てた男

 LV.41
 HP99999999/999999999(神様候補で限界突破)
 MP99999999/999999999(神様候補で限界突破)
 スタミナ/9932
 パワー/9701
 ディフェンド/9902
 スピード/8998
 コンディション/9104
 ラック/9999(神様候補で限界突破)

 7柱神の加護(ちょっと) 神様見習いの加護

 ギフトスキル(隠蔽)/
  格闘技術インプリティング 物置空間ストレージ ルーグ全言語会話 ルーグ全言語書記
  無病息災ヘルスケア 創意工夫クラフター 新世界(箱庭)ワールドクラフト

 称号スキル(隠蔽)/
  状況判断(LV.999) 形勢逆転(LV.999) 神域(LV.1) 真眼(LV.1)
  身体能力調整(LV.999) 成功率(LV.MAX)

 魔法/
  付与魔法LV.MAX(隠蔽) 全属性魔法LV.MAX(隠蔽) 回復魔法LV.MAX(隠蔽)
  生活魔法LV.MAX(隠蔽) 空間魔法LV.MAX(隠蔽)

 装備/
  雷迅刀剣スパークソード(パワー+55) ブレ―リザードの軽硬鎧(ディフェンド+75)
 全反射のブルーリザードシールド(ディフェンド+22) 赤の魔力の指輪ルーンリング(パワー+3)
 青の魔力の指輪ルーンリング(スピード+3) 黄色の魔力の指輪ルーンリング(コンディション+3)


 ◆◆◇◆◆◆◆◇◆◆


「……これはヤバイだろう」
「ですね」
「いやいや、このままじゃ破壊神になるよ」
「それは大丈夫です。称号スキルの身体能力調整がありますから。ただし、戦闘はなるべく他人に見られないようにしてください」
「あ、それくらいで良いんですか?」
「問題はそこではありません。称号スキルの『成功率(LV.MAX)です」
「それって、俺がすることが全部成功するってことですか?」
「そうです。これは世界の因果律にも関係します。なので、『封印』させてもらいます」
「確かにその方が良いですね」
「まあ、『成功率(LV.MAX)』が無くても、付与魔法は失敗しないでしょうけど……」
「……ですよねー」

 何かすいません。
 自重を心掛けます。

「とにかく、この世界の住人に広ませてはならないと考えられるような物はなるべく作らないようにしてくださいね」
「確かに、他人に見せられない物は作っちゃダメですね」

 これは素直に反省しよう。

「では、失礼しますね」
「この度は御迷惑をおかけしました」
「まあ、やってしまったことはもう取り返せませんから、これからは気をつけてください」
「了解です」

 こうして、アルテナ様は帰っていった。
 俺は、普通に人間を辞めることになった。
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