49 / 66
付喪神とトンネル 《後日談》
しおりを挟む
夏季休暇中に心霊スポットで置いてけぼりにされた日から幾分かの時が経過し、私は大学で講義を受ける日々を再び送っていた。
あの日、明け方近くに自宅であるアパートに着いた私は、部屋で電源を切っておいたスマートフォンを起動させてみた。案の定、膨大な数の着信履歴と留守番電話、そして全てを既読するのが嫌になるほどのメールの山が、そこにはあった。私に謝罪する者、無言で先に帰ったことに怒る者、居場所を尋ねる者などなど。私を突き飛ばした馬鹿からは一応謝罪の言葉があったものの、大事にしないでほしいという旨で呆れるばかりであった。
(捨てて来て、マジで良かった~)
その後何度も馬鹿たちから連絡が来るので、全員にメールを1通だけ送信して着信拒否にした。ただひと言、
『許さない』
と。
どのような経緯かは分からないが、連中が心霊スポットで私にした行為が噂として拡まっている。深夜のトンネルに女性を1人置き去りにして車で逃げた薄情な連中として。他にも真偽定かではない誇張された内容が数多く囁かれ、連中の信頼度は無いに等しい。恋人に捨てられた者、バイト先にまで噂が拡まって辞めた者、女の敵として白い目で見られる者。私を除いた全員が他人から距離を置かれている。
(大学に来なくなるのも時間の問題では?)
1番驚いたのは、メンバー内で仕切り屋だった戸畑が実は私に好意を寄せていたということだ。肝試しで私を先頭にしたのは、もしも私が恐怖で動けなくなったら、すかさず優しくリードして惚れさせる魂胆だったらしい。
(きもっ)
奴は今、“片想いの相手をパニクって置いてけぼりにした情けないゴリマッチョ”として語られている。
茂木にいたっては、女性を突き飛ばして怪我を負わせた上に口外しないことを迫ったとして、ご両親のもと大学を自主退学した。いや、させられた。私は単純に関わりたくなかったのと、あの日出会った不思議な薬売りのおかげで、とっくに回復していたこともあって、どうこうするつもりはなかった。けれど愚息の行為に青ざめたお堅い職業のご両親が、治療費として厚めの封筒を持ってアパートに訪ねて来た。突然のことで対応に困るとして、後日場所を改めて私の両親と一緒に会い、治療費とともに2度と関わらないという契約書を本人に書かせた。それ以降、馬鹿の顔は見ていない。
そうそう。あの日、私を自宅まで送り届けてくれた屋根付き3輪バイクの付喪神は、今うちのアパートの駐輪場にいる。どうやら新たな持ち主を探している最中だったそうだ。意気投合した私たちは移動手段と持ち主募集を介して利害一致したことから、奇妙な同居生活を始めることとなった。ちなみに付喪神の彼は元々真っ白な姿であったが、女子大生が乗るには味気ないと判断したのか、今はオレンジ色と黒色を基調としたデザインになっている。
かなり荷物を詰め込められるので、通学や買い物などで重宝している。保険やナンバーなどの細かい手続きは、彼の知り合いである妖がひと通りやってくれた。お礼に実家から送られてきて開けていない日本酒を渡してみたら、かなり喜ばれた。
あの日、明け方近くに自宅であるアパートに着いた私は、部屋で電源を切っておいたスマートフォンを起動させてみた。案の定、膨大な数の着信履歴と留守番電話、そして全てを既読するのが嫌になるほどのメールの山が、そこにはあった。私に謝罪する者、無言で先に帰ったことに怒る者、居場所を尋ねる者などなど。私を突き飛ばした馬鹿からは一応謝罪の言葉があったものの、大事にしないでほしいという旨で呆れるばかりであった。
(捨てて来て、マジで良かった~)
その後何度も馬鹿たちから連絡が来るので、全員にメールを1通だけ送信して着信拒否にした。ただひと言、
『許さない』
と。
どのような経緯かは分からないが、連中が心霊スポットで私にした行為が噂として拡まっている。深夜のトンネルに女性を1人置き去りにして車で逃げた薄情な連中として。他にも真偽定かではない誇張された内容が数多く囁かれ、連中の信頼度は無いに等しい。恋人に捨てられた者、バイト先にまで噂が拡まって辞めた者、女の敵として白い目で見られる者。私を除いた全員が他人から距離を置かれている。
(大学に来なくなるのも時間の問題では?)
1番驚いたのは、メンバー内で仕切り屋だった戸畑が実は私に好意を寄せていたということだ。肝試しで私を先頭にしたのは、もしも私が恐怖で動けなくなったら、すかさず優しくリードして惚れさせる魂胆だったらしい。
(きもっ)
奴は今、“片想いの相手をパニクって置いてけぼりにした情けないゴリマッチョ”として語られている。
茂木にいたっては、女性を突き飛ばして怪我を負わせた上に口外しないことを迫ったとして、ご両親のもと大学を自主退学した。いや、させられた。私は単純に関わりたくなかったのと、あの日出会った不思議な薬売りのおかげで、とっくに回復していたこともあって、どうこうするつもりはなかった。けれど愚息の行為に青ざめたお堅い職業のご両親が、治療費として厚めの封筒を持ってアパートに訪ねて来た。突然のことで対応に困るとして、後日場所を改めて私の両親と一緒に会い、治療費とともに2度と関わらないという契約書を本人に書かせた。それ以降、馬鹿の顔は見ていない。
そうそう。あの日、私を自宅まで送り届けてくれた屋根付き3輪バイクの付喪神は、今うちのアパートの駐輪場にいる。どうやら新たな持ち主を探している最中だったそうだ。意気投合した私たちは移動手段と持ち主募集を介して利害一致したことから、奇妙な同居生活を始めることとなった。ちなみに付喪神の彼は元々真っ白な姿であったが、女子大生が乗るには味気ないと判断したのか、今はオレンジ色と黒色を基調としたデザインになっている。
かなり荷物を詰め込められるので、通学や買い物などで重宝している。保険やナンバーなどの細かい手続きは、彼の知り合いである妖がひと通りやってくれた。お礼に実家から送られてきて開けていない日本酒を渡してみたら、かなり喜ばれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、10人の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
