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学生と祠 《祟り》
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… … … … …
… … …
…
「さかーい。おーい、さかーい」
「いるんだろ?さかーい」
恐怖に震えながら、なんとか石段を上り切った僕らがたどり着いたのは、鬱蒼とした木々に囲まれた開けた場所だった。
(こんな場所があったなんて…)
見落としていたとは思えない場所に戸惑いながらも、僕たちは坂井を探し続けた。ランタンと懐中電灯で周囲を照らしながら進んでいくなか、奥の方に人がしゃがみ込んでいるのが見えた。2人で明かりを向けながら少しずつ近づいてみると、それが坂井であることが程なくして分かった。
(よかった。なんとか見つけられた)
彼と合流できたことで少し安心したものの、どうして彼があれほどまでに執心していたのか疑問に思った。見ると、しゃがみ込む坂井の前には古い祠が鎮座していた。僕はそれを見て、背筋がやけに冷たくなっていくのを感じた。
(やばい。何かは分からないけど、とにかく、ここから離れないと)
僕が何かしらの危機感を感じていると、すっかり安心しきった茂田が坂井に近づいていく。
「おい、坂井。心配させんなって。早いとこ、テントのほうに戻ろ?」
そう言って、茂田が彼の肩に手を置くと、
ガシッ。
「「⁉︎」」
項垂れて顔を下に向けたまま、坂井が茂田の上着の襟元と袖を掴んだ。
「お、お、おい。坂井。離せって」
軽く掴んでいるように見えるが、焦る茂田が振り解こうとするも、全く離す気配がない。
(あいつ、普通じゃない!)
茂田に加勢して、僕も坂井を引き離そうと近づくと、
ら゛ぁ゛‼︎
ホラー映画でゾンビが襲ってくるような叫び声を発しながら、坂井は茂田を数m近く遠くへ放り投げた。通常の人間ではありえないことだ。
「え、ちょ…ちょっと…」
意識を失ったのか、茂田はピクリとも動かなくなってしまった。僕が眼前の惨状に混乱していると、我を失った坂井が突進してきた。
「う゛っ」
腹部から胸部にかけて強い衝撃を受けると、僕は後ろに勢いよく倒された。そして馬乗りになるかたちで、坂井は僕の首を絞めにきた。
う゛ぅぅぅ。
首を絞める坂井の手にじわじわと力が込められていく。
「あ゛っ………」
少しでも空気を取り込もうと、僕は彼の両手を必死に引き離さそうと踠いた。けれども、普段の彼からは想像できないほどの怪力によって、僕の抵抗は無に帰していく。
(や……やばい…)
白濁した両目を大きく見開き、獣のような唸り声をあげる友人の顔を間近にしながら、“死”が脳裏をよぎる。
ヒュッ。
「っ⁉︎」
突然、1枚の紙切れが坂井の横顔に張り付いた。そして、
ボゥッ‼︎
まるで家電製品がショートしたかのように、紙切れが火花を散らして燃え上がった。そのおかげで彼の手が離れ、気道を確保することができた。
「かはっ」
息ができることに安堵したものの生存本能によってなのか、辺りを確認する。少し離れたところで、坂井が顔の右半分を抑えながら踞っていた。僕は立ち上がって、彼の様子を伺おうとすると、
『近づくなっ‼︎』
反射的に声のする方向に顔を向けると、
「ん?」
10mほど離れたところに黒い人影が立っていた。
(誰だ?それにあの明かりたちは…?)
赤く光る物体を周囲に沢山浮いた状態で引き連れながら、その人影は僕の方へと近づいて来る。やがて服装だけでなく、顔がよく見える距離まで来たところで僕は驚いた。
(お…、鬼だ……)
先ほど坂井の横顔に張り付いた物と同じような物たちが赤く光って彼を照らしていることで、その顔を確認することができた。
『今の君の友人は危険だ。下がって』
額から2本の細い角を生やした鬼は、有無を言わさずに僕を自分の背後に下がらせた。
『結界を張っておくから、そこから動かないように』
そう言うと、鬼の周囲を浮いていた何枚かの短冊サイズの紙切れが僕の周囲を囲み始める。よく見ると、それらは御札のようであった。そして役割が“攻撃”から“護り”に変わったことを意味するかのように、赤色から緑色に変わって光り始めた。
う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ‼︎
「っ⁉︎」
見ると、坂井が鬼に向かって突進して来た。しかしすんでのところで鬼が素早く回し蹴りをし、大きく横に吹っ飛ばされる。
がぁ゛っ!
衝撃音とともに木の幹にぶつかると、追い討ちをかけるように赤く光る御札が数枚飛んで行く。
ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!
御札は張り付いたそばから、次々と花火のように爆発していく。坂井の身を案じた僕が思わず結界の中から出ようとすると、
『動いては駄目だ! 』
鬼は僕に一喝し、どこから取り出したのか不思議に思うほどの大きな弓と矢を坂井に向けて構え始めた。
「えっ⁉︎ ちょ、ちょっと⁉︎」
混乱と恐怖で声帯が思うように動かないなか、なんとか声を絞り出すと、
『落ち着いて。これは【祟り下し】。矢の形をした静注剤だ』
光る御札から伸びる縄によって、木の幹に固定された坂井に狙いを定めながら鬼が説明する。
「じょ、じょうちゅう?」
『注射ってこと……だっ!』
ヒュッ。 トスッ。
「っ⁉︎」
坂井の胸に射られた矢は青く輝き、彼の身体の中に溶け込んでいった。そして身体が大きく震え始めると、紫色のような煙が坂井の目や口、耳や鼻から出ていき、彼の頭上で霧散した。
* * *
* *
*
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「さかーい。おーい、さかーい」
「いるんだろ?さかーい」
恐怖に震えながら、なんとか石段を上り切った僕らがたどり着いたのは、鬱蒼とした木々に囲まれた開けた場所だった。
(こんな場所があったなんて…)
見落としていたとは思えない場所に戸惑いながらも、僕たちは坂井を探し続けた。ランタンと懐中電灯で周囲を照らしながら進んでいくなか、奥の方に人がしゃがみ込んでいるのが見えた。2人で明かりを向けながら少しずつ近づいてみると、それが坂井であることが程なくして分かった。
(よかった。なんとか見つけられた)
彼と合流できたことで少し安心したものの、どうして彼があれほどまでに執心していたのか疑問に思った。見ると、しゃがみ込む坂井の前には古い祠が鎮座していた。僕はそれを見て、背筋がやけに冷たくなっていくのを感じた。
(やばい。何かは分からないけど、とにかく、ここから離れないと)
僕が何かしらの危機感を感じていると、すっかり安心しきった茂田が坂井に近づいていく。
「おい、坂井。心配させんなって。早いとこ、テントのほうに戻ろ?」
そう言って、茂田が彼の肩に手を置くと、
ガシッ。
「「⁉︎」」
項垂れて顔を下に向けたまま、坂井が茂田の上着の襟元と袖を掴んだ。
「お、お、おい。坂井。離せって」
軽く掴んでいるように見えるが、焦る茂田が振り解こうとするも、全く離す気配がない。
(あいつ、普通じゃない!)
茂田に加勢して、僕も坂井を引き離そうと近づくと、
ら゛ぁ゛‼︎
ホラー映画でゾンビが襲ってくるような叫び声を発しながら、坂井は茂田を数m近く遠くへ放り投げた。通常の人間ではありえないことだ。
「え、ちょ…ちょっと…」
意識を失ったのか、茂田はピクリとも動かなくなってしまった。僕が眼前の惨状に混乱していると、我を失った坂井が突進してきた。
「う゛っ」
腹部から胸部にかけて強い衝撃を受けると、僕は後ろに勢いよく倒された。そして馬乗りになるかたちで、坂井は僕の首を絞めにきた。
う゛ぅぅぅ。
首を絞める坂井の手にじわじわと力が込められていく。
「あ゛っ………」
少しでも空気を取り込もうと、僕は彼の両手を必死に引き離さそうと踠いた。けれども、普段の彼からは想像できないほどの怪力によって、僕の抵抗は無に帰していく。
(や……やばい…)
白濁した両目を大きく見開き、獣のような唸り声をあげる友人の顔を間近にしながら、“死”が脳裏をよぎる。
ヒュッ。
「っ⁉︎」
突然、1枚の紙切れが坂井の横顔に張り付いた。そして、
ボゥッ‼︎
まるで家電製品がショートしたかのように、紙切れが火花を散らして燃え上がった。そのおかげで彼の手が離れ、気道を確保することができた。
「かはっ」
息ができることに安堵したものの生存本能によってなのか、辺りを確認する。少し離れたところで、坂井が顔の右半分を抑えながら踞っていた。僕は立ち上がって、彼の様子を伺おうとすると、
『近づくなっ‼︎』
反射的に声のする方向に顔を向けると、
「ん?」
10mほど離れたところに黒い人影が立っていた。
(誰だ?それにあの明かりたちは…?)
赤く光る物体を周囲に沢山浮いた状態で引き連れながら、その人影は僕の方へと近づいて来る。やがて服装だけでなく、顔がよく見える距離まで来たところで僕は驚いた。
(お…、鬼だ……)
先ほど坂井の横顔に張り付いた物と同じような物たちが赤く光って彼を照らしていることで、その顔を確認することができた。
『今の君の友人は危険だ。下がって』
額から2本の細い角を生やした鬼は、有無を言わさずに僕を自分の背後に下がらせた。
『結界を張っておくから、そこから動かないように』
そう言うと、鬼の周囲を浮いていた何枚かの短冊サイズの紙切れが僕の周囲を囲み始める。よく見ると、それらは御札のようであった。そして役割が“攻撃”から“護り”に変わったことを意味するかのように、赤色から緑色に変わって光り始めた。
う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ‼︎
「っ⁉︎」
見ると、坂井が鬼に向かって突進して来た。しかしすんでのところで鬼が素早く回し蹴りをし、大きく横に吹っ飛ばされる。
がぁ゛っ!
衝撃音とともに木の幹にぶつかると、追い討ちをかけるように赤く光る御札が数枚飛んで行く。
ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎ ボゥッ‼︎
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!
御札は張り付いたそばから、次々と花火のように爆発していく。坂井の身を案じた僕が思わず結界の中から出ようとすると、
『動いては駄目だ! 』
鬼は僕に一喝し、どこから取り出したのか不思議に思うほどの大きな弓と矢を坂井に向けて構え始めた。
「えっ⁉︎ ちょ、ちょっと⁉︎」
混乱と恐怖で声帯が思うように動かないなか、なんとか声を絞り出すと、
『落ち着いて。これは【祟り下し】。矢の形をした静注剤だ』
光る御札から伸びる縄によって、木の幹に固定された坂井に狙いを定めながら鬼が説明する。
「じょ、じょうちゅう?」
『注射ってこと……だっ!』
ヒュッ。 トスッ。
「っ⁉︎」
坂井の胸に射られた矢は青く輝き、彼の身体の中に溶け込んでいった。そして身体が大きく震え始めると、紫色のような煙が坂井の目や口、耳や鼻から出ていき、彼の頭上で霧散した。
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