ティラミスにホットミルクを添えて

久城葉月

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幸福の幻想

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僕たちは付き合い始めた。彼女は少し変わった感覚を持ってはいたが、明るく可愛い自慢の彼女だった。
その笑顔に僕は何度も癒された。その力は凄まじく、僕にとっては彼女がいない生活などもはや考えられないくらいだった。
やがて僕たちは同棲を始めた。
彼女は朝早く起きて、お弁当を作ってくれた。朝が苦手で、料理もあまりやってこなかったという彼女はそれでも頑張って、彩り豊かなお弁当を作ってくれた。
そして空になったお弁当箱を見せると大いに喜んでくれた。
僕たちはそれぞれ中小企業のサラリーマンと本屋のバイトとして働いていた。家に帰れば、バイトから帰ってきた彼女が出迎えてくれた。幸せだった。
休みの日、彼女はティラミスを作ってくれた。ホットミルクを添えて。
「コーヒーじゃないんだ?」
「今はホットミルクの気分なの」
「ふーん」
彼女の淹れたホットミルクは優しい甘さと温かさで美味しかった。ティラミスも甘さと苦味のバランスが程よく、美味しかった。
こんな幸せが続けばいいと思った。
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