吸血鬼は今夜も宵闇に笑う

夜乃

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「血って赤いしドロドロしてるし、やっぱり飲むもんじゃないと思うに一票!!」「「「いや、飲まなきゃ死ぬんだよ!!」」」

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吸血鬼______。

19世紀だったか18世紀だったか、たしかその辺りに存在したとされている血を吸う化け物。
十字架や太陽の光を嫌い、夜になると表舞台に出てきては人間や他の生物の血を吸い生きている。
伝説上の化け物として大して今では信じられていない。

そう、でもね。
存在しちゃうんだ。
現に私は吸血鬼の血が混じっている。
人間と吸血鬼のハーフ。
吸血鬼としての力は弱い癖に、食事は血でないとダメという大変めんどくさい体の作りをしている。


「おい、羽鳥(ハドリ)。今日の分だ。それ飲んだら行くぞ。」


私、羽鳥(ハドリ)は力がない。
それが何を意味するかと言うと、自分で血を手に入れる事が出来ないのだ。
だから私は父の知り合いの子供である夜野(ヨルノ)に血を分けて貰っていた。


「夜野(ヨルノ).........。ありが....とう。」


言い忘れていた....。
私は血を見ると気絶してしまう。
血を見ると全身の血の気が引いてしまい貧血を起こしてしまうのだ。


「うーむ....。相変わらず重症だな。ったく世話の焼ける....。」


夜野(ヨルノ)は私を起き上がらせ無理やり私の口をこじ開け血を流し込んできた。


「んぐっ!!!もがぁ........っ!!!」


のっ、喉がっ!!!
し、死ぬっ!!死ぬって!!


「ぶはっ!!!ゲホッ!ゴホッ!」


女子としてあるまじき咳き込み方で空気を肺に送り込む。
キッ、と夜野(ヨルノ)を睨むけれど彼はもう靴を履いて外に出ようとしていた。


「ほれほれ、行くぞ。2人とも多分もう待ってるぞ。」


誰のせいだっ!と、思うが口には出さない。
いや、正確に言い出せないだけだ。
今は午前1時。
寝静まった街は静かに街の街灯だけが照らしていた。
吸血鬼は人間よりも身体能力に優れている。
夜野(ヨルノ)と私は次々と住宅街の屋根を飛び移り、とある公園に飛び降りた。


「よっ!遅かったじゃん。まぁ大方予想はつくけど。」
「相変わらずみたいだね。夜野(ヨルノ)もお疲れ様。」
「何よー!!言っておくけど私悪くないからね!!?血がダメなこと知ってるのに夜野(ヨルノ)が私に血を投げてくるからっ!!」
「吸血鬼としてそれはちょっといただけないのでは.....。」


ひどい....。
潤川(ウルウガワ)は味方だって信じてたのに....。
潤川(ウルウガワ)はみんなのまとめ役を担ってくれてる女の子。
もう1人は奥乃(オウナイ)。
夜野(ヨルノ)の悪友だ。
でも夜野(ヨルノ)と違って優しく男気がある。


「おい、余計なこと考えてたろ、今。」


どうしてバレるのか....。


「そんな事より、早く仕事にかかろーよ。お腹空いちゃうよ。」


奥乃(オウナイ)の一言で私以外のみんなの目の色が変わる。
私は生まれつき黒色。
色の変化は全くない。
潤川(ウルウガワ)は紫の瞳に、奥乃(オウナイ)は翠の瞳に、夜野(ヨルノ)は紅の瞳へと変わる。
吸血鬼は瞳の色によって強さが変わる。
金の瞳が一番上級種となり、そこから銀、蒼、紅、翠、紫、茶、黒の順番となる。
蒼と紅に差はなく同列とするため序列としては夜野(ヨルノ)が一番高く、奥乃(オウナイ)、潤川(ウルウガワ)それから私となる。
はなから3人は私を戦力として数えていない。
歩けるお荷物程度だ。
まぁ食わせてもらってるんだから文句は言えない。
不満はあるけど.....。


「標的確認。目標は南東へ向かい進行中よ。側近の護衛は4人。いつも通り、前衛は夜野(ヨルノ)、羽鳥(ハドリ)のお守りと中衛をこなすのが奥乃(オウナイ)、バックアップに私がまわるわ。」


私達の仕事。
仕事と言ってもお金欲しさに仕事をしている訳では無い。
と、言うか生きるために働かなくてはならない。
私達吸血鬼は普通は人々から疎まれる存在だ。
そんな私達が急に人々の前に現れて仕事と血をください。
なんて言ったら袋叩きに合うのは目に見えてる。
だから私達は自力で血を手に入れるしかない。
けどこの中の4人とも罪のない人から血を奪うのを良しとしないと考えている人ばかりだ。
だから私達が狙うのは、罪のある人。
決して許される事ではないことに手を染め、人をゴミのように扱ってきた人が肉の塊になるのを何度も見てきた。
私達がそうした。
結局私達が悪なんだろう。
人の命を奪っているのだから。
それは変わらなくていい。
それでも私達は悪は悪でも、狙う人間くらいは決めたいのだ。
誰にも知られることは無かったとしても。


「今回の標的の詳細な人柄をもう1度聞かせてくれないか。」


私は奥乃(オウナイ)の一言でボーッしていた頭を現実に引き戻す。


「今回の標的は銃やら麻薬やらを密輸入しては高額で売りさばく犯罪者だね。当然人を殺してたりもする。名前はケーニッヒ・イェルノー。」
「へー、そりゃご大層な肩書きつきだな。ありがとさん。相変わらず情報が早いな。」


黙って追従していた夜野(ヨルノ)が口を開く。
普段はちゃらんぽらんだが仕事になると真面目になる。


「おい、車を視認した。あの黒のベンツだ。この方角は港か?」
「なら、車を降りた瞬間を狙いましょ。合図は私が出すわ。夜野(ヨルノ)、護衛も殺ってしまっていいよ。」
「了解!!奥乃(オウナイ)、そこのスカタンを頼んだぞ。」
「あいよ。まかされた。」


スカタンって言われた....。
まぁ、否定はできないか。
車は未だ進行を止めず、真っ直ぐ港へ向かった。
そして、夜野(ヨルノ)の読み通り港へ車が止まり、中から護衛と思われる数人が出てきた。
全員が武装しており、常人であれば十数人いても蹂躙されるだろう。
でも、こっちは吸血鬼。
人間に遅れをとるほど衰退はしちゃいない。
私は戦えないけれど....。
全員が配置につき準備が整った。
ここで全員が懐から仮面を取り出す。
顔を知られるわけにはいかない私達には必須のアイテムだ。
全員が仮面を取り付けた時、車からゆっくりと標的が姿を現した。


「Go!!」


羽鳥(ハドリ)の合図が出た瞬間に待機していた夜野(ヨルノ)が飛び出し、まず護衛の1人を上段蹴りを顎にくらわせ無力化する。
突然の襲撃者に護衛たちに驚愕と混乱が生まれる。
その隙を見逃すほど奥乃(オウナイ)と羽鳥(ハドリ)は甘くない。
私を小脇に抱えながら平然と相手に向かって突撃する。
奥乃(オウナイ)の能力は植物操作と怪力。
怪力は私を小脇に抱えてる時点で分かるはず。
別に私が重いという話ではないので誤解のないようにっ!!!
植物操作は言葉通り、植物の成長を操ったり、自在に生やしたりする事ができる。
奥乃(オウナイ)は植物を次々とコンクリートの上から生やしていき、急激に成長させ大きなムチとして扱う。


「ごはっ!なっ、なんだコイツらっ!!!」


護衛が1人、また1人と逃げ出していく。
しかしそれを夜野(ヨルノ)は見逃さない。
夜野(ヨルノ)の能力は炎を操る。
逃げ出していく護衛の前に火を放ち退路を断つ。


「逃げられると思うなよ?」
「ヒィッ!!」


ひと睨みしただけで武装した護衛達が次々と無力化されていく。
ボスであるケーニッヒ・イェルノーは自分の命を最重要と考えたらしい。
護衛2人を連れてその場から逃げ出していた。


「チッ!奥乃(オウナイ)!!植物伸ばせないかっ!!?俺の炎はあそこまで飛ばせねぇ!!」
「やってみる!!ちょいとハドちゃんを頼めるかい!?ウルちゃん!!」


えっ!!!?投げたっ!!!
今、私投げられましたよっ!!?
ポイって!!
本当に荷物程度しか考えられてないんじゃないの!!?
死ぬっ!!!!
恐怖から両目をギュッと瞑ったら、ひときわ強く風が吹き、優しく私の体を包み込んだ。
潤川(ウルウガワ)だ。
潤川(ウルウガワ)の能力は風の制御。
風を起こし、私の体を包み込み勢いを消し私をキャッチしてくれた。


「大丈夫?奥乃(オウナイ)には後でペナルティね。」
「だ、大丈夫じゃないかも....。」
「???どこか怪我した?」
「こ、腰が抜けて立てない....。」


ドサッ!!痛いっ!!
放り投げられたっ!!!
いや、もとい。
叩きつけられたよっ!!?


「私の心配を返して。」


冷徹な目で見ないでくださいよ....。
癖になっちゃ........いや、辞めておこう。
冗談言ってる場合じゃない。


「あなたの吸血鬼としての身体能力をもってすればあんなのどうという事はなかったはずよ。」
「う....。」
「日頃から人間じみた生活してるからよ。まぁ、あなたの能力は私達には無いものよ。どう使っても私達には文句を言う筋合いなんてないわ。大事に使いなさい。」


私の能力。
それは吸血鬼が苦手とする十字架や日光に耐性があるという事。
吸血鬼の序列が上になればなるほど弱点は大きくなってしまう。
私の場合、序列は最下位、オマケに半分人の血が入っている。
この能力は私に発現して当然の能力かもしれない。


「____っ!!わた___を__いうのかっ!!?」


ボーッとしていたが、悲痛な叫び声が聞こえ我に返る。
恐らく奥乃(オウナイ)が標的を追い詰めたんだろう。
見ると、護衛を倒し尽くし、退屈そうな表情を浮かべる夜野(ヨルノ)もいた。


「なぜだ。なぜ私を殺そうとする....。お前達には何も危害など加えていないではないかっ!!」


ケーニッヒ・イェルノーは毒づく。
けれど........。


「何言ってんだ?じーさん。俺達はなぁ、別にアンタに恨みがあるわけじゃねぇ。ただ、生きるために....。生き残るために殺ってるだけだ。」
「だから、さ....。」
「「運が悪かったと、あの世で悔やみな。」」


奥乃(オウナイ)の植物で締め上げ、夜野(ヨルノ)の炎で燃やす。
死に際にケーニッヒはこう残した。


「化け物め....。宵闇に響く鎮魂歌(レクイエム).....。情報通りだったか....。」


そう、私達は懸賞金をかけられている。
超悪人を裁くに裁きまくる極悪正義のヒーローとして。
私達はそんな事は気にしない。
今日も今日とて生きるために仕事をするだけ。
殺した分だけ私達は生きていける。

血を得るために私達は今日も宵闇を舞う_____。
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