【爆撒英雄サトルのガイア建国記】

池上 雅

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*** 183 サロモン商会への出資と依頼 ***

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「あー、会頭さん」

「よろしければサロモンとお呼び下さいませ……」

「それじゃあサロモン。
 よかったらこの果物を食べてくれないか?
 ああ、ここにいる皆もだ」

「こ、これは…… 見たことも無い実ですな……」

「ああ、種だけ残して皮も全部食べちゃってくれ」

「おお、これは旨い果実だ。
 いくらでも食べられそうですわ」

「はは、あんまり喰うと却って害があるかもだぞ。
 なんせそれはあの『世界樹』の実だからな」

「げえぇぇぇぇぇっ!!!
 あ、あの伝説の世界樹の実っ!
 一口齧れば5年は寿命が延び、ひとつ食せば20年は延びるという!
 こ、これはどこで手に入れられたのでありましょうかっ!」

「ああ、ちょっと前に世界樹とその仲間を助けてやったら、世界樹の奴お礼だって言って、わさわさ実をつけてくれるようになったんだわ。
 だからそんなに希少なもんでもないぞ」

「も、もし売り出せば、ひとつ大金貨100枚は下らないとされる世界樹の実がわさわさと……
 ほ、ほんにあなた様のお力は底が知れませんの……」


「それじゃあサロモンにお願いがあるんだけど聞いてくれるかい?」

「な、なんなりとお申し付けくださいませ……」

「あのさ、サロモン商会って、この大陸中にいくつ支店を持ってるのかな?」

「はい、大陸東部に200カ所ほど、大陸西部には30カ所ほどでございます」

「さすがだな。
 それじゃあその支店を、東西全ての国の128の王都に最低でも1カ所。
 大きな国ならそれに応じて複数カ所。
 それから約6000ある街のすべてに広げてくれ。
 ああ、出来れば地所は借りずに購入して欲しい。
 そうだな。最低でも50メートル四方は欲しいな。
 都や街の中心でなくとも構わない。
 広さが確保できるのなら城壁の外でもいい。
 それから約2万5000ある村にも出張所が欲しい。
 最低でも30メートル四方の土地が必要だ。

 建物は…… 
 そうだな、今ある建物は別にして、土地が確保出来たら俺が建てよう
 また、全ての支店と出張所には、最低でも1人の責任者を置いてくれ。
 ああ、商売の巧拙は問わない。E階梯さえ高ければ問題ないぞ。

 もちろん費用は俺が負担する。
 実費の5割増しで払うから」


 お、サロモンの顔つきが変わったか。
 これが大商会会頭のビジネスのときの顔なんだな。
 はは、かなりおっかない顔だわ。

「莫大な費えがかかりますぞ……」

「ああ、いくらかかってもかまわん」

「それに城壁の中の上流地区ならともかく、城壁の外や街では安全の確保が難しくなりますが」

「いやむしろ上流地区ではなく、平民や奴隷でも気軽に立ち寄れる場所がいいんだ。
 建物の警備はすべて俺が引き受ける。
 もちろん警備のための要員もだ。
 従業員は、大きな支店なら5人や10人は必要だろうが、小さな支店なら1人でも構わん」

「それではあまり多くの商売は出来ませんが……
 新規に出した支店では何を商えばよろしいのでしょうか……」

「ああ、まず最初にお願いしたいのは孤児を引き取ることだ。
 その国、その街、村の全ての孤児院から全ての孤児を引き取って欲しい。
 そして孤児たちは、全員このガイア国に連れて来て健全で文化的な環境で育ってもらう。
 サロモンの孤児院のようにな」

「10歳以上の子たちならともかく、乳幼児などはこの地より離れた国からの移送には耐えられぬかもしれませぬ」

「問題無い。
 俺たちは『転移の魔道具』という道具を持っている。
 まあ俺の持っている『転移』のスキルを誰でも使えるように道具化したものだ。
 全ての支店にガイア国直通の魔道具を設置しよう。
 そうすれば移動にかかる時間もゼロになる」

「ふう、そのような道具まで開発されていたとは……
 まさにあなた様のお力は底が知れませんぞ。
 ただ、腹立たしいことに、大陸西部の孤児院はすべてあの大聖国の息がかかっております。
 それも孤児院とは名ばかりで、8歳まで育てた子を奴隷として売るための施設でもあります。
 ですから孤児の引き取りにも金銭を要求して来るはずです」

「その一点だけでも奴らは全員終身刑だな。
 わかった、1年以内に大聖国は滅ぼそう」

 ああ、俺の目つきがヤバかったらしい。
 サロモンが怯んでるわ……

「まあ、当面は孤児の引き取りにカネがかかってもかまわん。
 たかがカネだし、孤児たちの暮らしの方が遥かに大事だ。
 それにどうせ大聖国は全て解体して、聖職者を名乗る犯罪者共は全員捕えるからな」

「畏まりました」

「それから、孤児たちを引き取った後は、貧民街で炊き出しを始めてくれ。
 そのために貧民街にも建物を確保して欲しい。
 目的は、住民のうち、まずは15歳未満の子供、または15歳未満の子を連れた寡婦などにガイア国への移民を勧めて貰うことだ。
 その次は怪我や病気などで働けなくなったやつ、その次は老人、そして仕事が見つからない奴を勧誘して移民させてもらいたい。
 もちろん炊き出し用の料理は全て俺が用意する。

 ああ、この炊き出しにも充分な護衛をつけるつもりだ。
 護衛の数は総計1000人ほどしか用意出来ないので、全ての支店で一斉に動くことは出来ないかもしれないが、それでもこの護衛のレベルは全員4ケタはあるので安心してくれ」

「よ、4ケタでございますすか……
 それでは1人でこのビスト将軍1000人に匹敵しましょうな……
 それが1000人でございますか……」

 あ、なんか全員が視線を上に向けてる……
 そうか、ビスト将軍100万人が雄叫び上げてる姿を想像したか。
 そこまでむさい絵もなかなか無いな。
 あ、みんなげーってなってる……
 本人もだ!


「ま、まあ、取りあえずはそこまでを当面の施策目標として欲しいんだが……
 その後、俺の準備が整い次第、奴隷商から奴隷の買い取りを始めて貰いたい」

「奴隷…… でございますか。
 このガイア国には奴隷はいないと……」

「ああ、もちろんだ。
 買い取った奴隷はすべて解放して移民として受け入れる」

「で、ですがサトル神さま。
 そ、そんなことをすればまずは奴隷の価格が高騰してしまいますぞ」

「まったく構わん。
 カネなどいくらでもあるし、またいくらでも稼げるからな」

「ふう、それにですな、そのように奴隷の価格が高騰すれば、奴隷商の連中がならず者を雇って本格的に奴隷狩りを始めることでしょう。
 そうなれば、無辜の民にも犠牲が生じるかと……」

「ああ、それを防ぐための手立ては考えてある。
 そのために準備は必要だが、それにはそれほどまでの時間はかからないだろう」

「はぁ、すべてはすでに計画が為されているということなのですな。
 差し出口を申しまして誠に失礼いたしました」

「いや、それも全く構わん。
 というか感謝する。
 俺とて全知全能ではない。
 誤謬の可能性を知るためにもそうした指摘は絶対に必要だ。
 むしろ商人としての観点から指摘してもらいたいからこそ、サロモンに会いたいと思っていたんだからな」

「痛み入りましてございます……」

「さて、そうした施策を準備するに当たっても、資金は必要だろう。
 今、支度金を用意する」

 俺はその場に大金貨を詰めたコンテナを2つ転移させた。
 はは、前面がガラス張りのせいで結構な迫力だな。

「こ、こここ、これは…… ま、まさか大金貨が!」

「ああそうだ。
 このコンテナ1つには、大金貨が約5万枚、約16トン分入っている。
 ひとつにはビクトワール大金貨、もうひとつには大聖国大金貨が詰まっているぞ」

「あ、合わせて10万枚の大金貨ですとっ!」

「これはサロモン商会への謝礼の前払いの一部と思ってくれていい。
 最終的には、土地代や奴隷購入費用などの必要経費を除いてこのコンテナを10個支払おう。
 謝礼はそれで足りるかな?」

「ご、50万枚……
 ビクトワール王国全体の国家予算の3年分……
 そ、それだけのカネを、単なる謝礼として下さると仰せですか……」

「ああそうだ。商会に仕事を頼むからには謝礼は必要だからな」

「あの……
 たいへんなご無礼を申し上げますが、サトル神さまのご資産は……」

「はは、大丈夫だから安心してくれ。
 この金貨コンテナだけでも、あと40万個は持っているからな」

「よ、40万っ!
 大金貨40万枚ではなく、コンテナで40万個っ!
 だ、大金貨200億枚っ!
 そ、そそそ、それは……」

「はは、ビクトワール大王国の国家予算の13万年分はあるか。
 でもそれだけじゃないぞ。
 確かこの大陸では塩も通貨として通用するんだったよな」

「は、はい……」

「アダム、今現在で塩コンテナはいくつ貯まってるかな?」

「塩壺も含めましたら、先日コンテナ換算で1000万個を突破しております」

「おー、防衛軍やドワーフ達も頑張ったなぁ」

「いっ、いいい、1000万個っ!」

「ははは、大陸最大の商会の会頭にそこまで驚いて貰えると、頑張った甲斐があったってぇもんだ」

「あ、あの…… ど、どのように頑張られたのでありましょうか……」

「ああ、それは明日見学してもらおうか……」

「あ、ありがとうございます……」


 やや蒼ざめた顔をしたイシス王子が口を開いた。

「それは私どもにも見学させて頂けるものなのでしょうか」

「もちろん」

「それでサトル神さまは、わたくしにどのようなお役目を果たさせるおつもりなのでございましょうか。
 残念ながら、私はまだガイア国にとっての敵性国家の王族でございます。
 ビクトワール大王国が滅びた後、もしくはわたくしが廃嫡された後ならば、如何様にも働かせて頂きますが……」

「はは、さすがだな。その律義さは実にいい。
 安心してくれ。現時点では王子に利敵行為を依頼する気は無い。
 だが、この大陸を統一した後には重要な役割を期待しているんだ」

「重要な役割…… でございますか……」

「そうだ。王子にはヒト族の大族長になって貰いたい」

「大族長……」

「カン違いしないでくれよ。
 王ではなく大族長だ。
 現在のガイア国にはヒト族を除いて、獣人族・亜人族が22種、400万人いる。
 その中でも一族や同族を率いる族長は全部で5000名ほどだが、この族長というのは全体への奉仕者であって君主ではないんだ。
 故に世襲もほとんど行われていない。
 通常、最も一族への貢献度が高く、また公正なリーダーシップを持つ者が選ばれる。

 さらにその族長の中から選ばれたのが大族長だ。
 大族長は種族の立場を離れ、ガイア国全体のために働いてくれている。
 まあ言ってみればヒト族の国に於ける大臣みたいなもんだな。
 この大族長が種族ごとに22人居る訳なんだが、王子にはヒト族代表として23番目の大族長になって貰いたいと思っているんだよ。
 そしてこの大族長の取り纏め役、まあ宰相の立ち場として悪魔族のベギラルムという者がいる。
 こいつも俺と同様、別の世界から来た者なんだが、まあ今度紹介するわ。

 ということで、今夜はもう遅くなったからそろそろ寝るとするか。
 ああ、何かあれば声に出してアダムを呼んでくれ。
 すぐに念話でアダムが返事をしてくれるから……」


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