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しおりを挟むトルネさんに教えて貰った宿屋へ行ってみた。
「こんにちは」
入った所は、宿屋?というには質素な造りだった。まぁ小さな村って言ってるし、そんな物だろうと。
受付には6、7歳くらいの赤茶色の髪の男の子が座っていた。
「こんにちは、泊まりたいんだけど、いいかい?」
「お父さーん!お客さんが来たよー!」
奥から大人が出て来た。多分宿屋の主かな。
昔アイドルやってましたって感じのイケメンさんだ。
「あ~ら、いらっしゃいませ~」
ブッッ!!まさかのそのパターンですか!
「あー、こんにちは。トルネさんに教えて貰って来ました。宿泊したいんですが、大丈夫ですか?」
「モッチロンよ~。ワタシはここの宿主のジュリアンよぉ。
うちは、1泊銀貨1枚よぉ。何泊ご希望かしらん?」
濃いな!かなり濃いな!!
ちょっと引き攣っちゃうよ。
「えっと、」
確か、出張ギルドが来るのが6日後だから、
「ひとまず7泊でお願いします」
「かっしこまりました~、では、こちらの宿帳に名前書いてねぇ」
あ、字!書けるのか?言葉は通じたけど⋯⋯。
漢字?平仮名?カタカナ?何で書こう。
困った時のローマ字か。
「あら、もしかして、文字が書けないのかしらん」
「えー、故郷の村の字がここでも使えるのかちょっと分からなくて、ですね」
「そういう事ねぇ。故郷の字でも構わないわよん」
「そうなんですか?」
「ええ。宿帳に本人が書いたって事が大事なのよん。名前には魔力が込められるからねん」
そうか、さっぱり分からん。まぁ日本語でいいなら、
「シン」
うん、カタカナにした。特に意味はない。
ついでに、支払いも。銀貨持ってないから、金貨1枚払って、銀貨3枚のお釣り。
「トルネから聞いてるなら知ってると思うけどぉ、うちの宿は食事なしなのぉ。だから近くの酒場か、トルネの所で買い物してねん」
「はい、聞いてます。大丈夫です」
「それならいいわぁ。お部屋は2階の端の203号室ねん。ごゆっくりぃ」
バチコーンとウィンク。
鍵を貰ってさっさと部屋に行く。
癖ツヨッッ!!ふぅ、笑いそうになっちゃったよ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
部屋は、ベッドと机、イス、簡易のクローゼット、トイレの6畳くらいの部屋だった。
あ、トイレ!ずっと行きたかったんだよ!
初異世界トイレ!
うぇぇぇ、何かウニョウニョしたやつ見えるんだけど⋯⋯。
生理現象には敵わず、意を決して用を足す。
あ、何かこのウニョウニョしたやつが汚れを分解?吸収?するのか。
スッキリしたところで、ベッドへ。
はー、やっと落ち着けたよ。疲れた。
魔物とか魔法とか変なウニョウニョしたやつとか、やっぱりここは異世界なんだな。
ボーッとしときたいけど、やれる事先にやっておこう。
何があるかな。
あ、着替えよう、ずっとスーツだったよ。
トルネさんの店で買った服に着替えて、靴を履き替えてっと。
んー、意外にこの靴歩くのに慣れがいるなぁ。
机の上に、スーツとシャツを畳んで置いて、異世界辞典と所持金、パンと飲み物を出してっと。
あ、洗濯とか風呂とかどうするんだろう?
聞き忘れてたなぁ。
てかミニバン買っても意味なかったじゃん。車ないじゃん。
んで、本屋の特賞で貰った一式はどこ行ったんだよ。
森田カバンも普通のカバンだったし。
スマホもないし。
あーー、マイナス思考てか文句ばっかり出てくるー。
腹が減ってるからかなぁ。
よし、食べよう。
パン⋯⋯硬いな!飲み物でふやかしながら⋯⋯お、この飲み物、スープかな。美味いな。
クラムチャウダーみたいだ。
明日もトルネさんの店で買うかな。
ついでに作り方も聞いてみよ。
朝ごはんの分は残しておこう。
そういえば、今何時だろう。仕事帰りに何か異世界に来て、そのまま⋯⋯。
外を見るとちょっと暗くなってきてるかな?時計は午後5時頃。
同じ時間なのだろうか。
これも聞いてなかったな。
ジュリアンさんの息子さん、名前なんだろう⋯⋯。
あぁ、ダメだ。落ち着いたら眠くなってきた⋯⋯。
考える事いっぱいあるのに⋯⋯。
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