転生賢者、異世界でゆるふわスローライフを目指すが最強すぎて大変!

犬ティカ

文字の大きさ
2 / 2

憧れのスローライフ⁈

しおりを挟む
村に着いた僕は、まずその穏やかな雰囲気に驚かされた。石造りの家々が並び、道を行き交う村人たちがのんびりと挨拶を交わしている。ここなら、まさにスローライフを満喫できそうだ。

「こんにちは、新しく来られた方かい?」

優しげな声に振り返ると、そこには村人らしき年配の男性が立っていた。笑顔が穏やかで、背中を少し丸めたその姿はまさに「村のおじいさん」といった風だ。

「ええ、そうです。この村で暮らそうと思って、家を探しているんです」

僕は素直にそう伝えると、彼はにっこりと笑った。

「そうか、それなら空いている家がいくつかあるから、案内しよう」

親切な村人に導かれ、村の中を歩く。話を聞く限り、この村は魔物に襲われることも少なく、みんなが平和に暮らしているという。まさに僕が望んでいた場所だ。

「この家なんかどうだい?」

彼が案内してくれたのは、小さな木造の家。石畳の道に面していて、裏には畑もある。手入れが行き届いていて、すぐにでも住めそうな感じだ。

「すごくいいですね。ここにします」

「気に入ってくれて良かった。ここは少し前に住んでいた方が都会に引っ越してね、それからずっと空いていたんだよ」

家の鍵を受け取り、中に入ってみる。中も清潔で、家具まで揃っている。僕は少しホッとしながら、ようやく一息つける場所を見つけた気がした。

「さあ、これで僕のスローライフが始まるんだな」

そう言ってベッドに腰掛けたその時、突然、村の外から響き渡る叫び声が聞こえた。

「助けてくれ! 魔物が出たぞ!」

村の門の方から、慌てふためいた村人たちの声が聞こえてくる。僕は一瞬、耳を疑ったが、どうやら本当のようだ。先ほどの年配の男性も急いで外へ飛び出していく。

「……まさか、早速厄介ごとに巻き込まれるとは」

スローライフを目指していた僕の計画は、わずか数時間で打ち砕かれた。

外に出てみると、村の外れに巨大な熊のような魔物が迫ってきていた。村の若者たちが必死に武器を手に戦っているが、まるで太刀打ちできていない。すでに負傷者も出ているようで、状況は深刻だ。

「くそ、何でこんなことに……」

僕はため息をつきながら、その場に立ち尽くしていたが、どうやら放っておくことはできなさそうだ。

「……仕方ない、ちょっとだけ力を使ってみるか」

僕は心の中で神様に感謝しながら、無意識に体を動かした。すると、すっと手の中に青白い光が集まり、次の瞬間、頭の中に魔法の詠唱が自然と浮かんできた。

「『エクスプロージョン』」

僕が呟くと同時に、巨大な爆発が魔物の目の前で起こり、その体を吹き飛ばした。村人たちは一瞬唖然としていたが、次第に歓声が上がる。

「す、すごい……あの人が一瞬で魔物を!」

「もしかして、伝説の賢者じゃないか?」

「いや、あれは人間の力じゃないぞ……」

村人たちの驚きと賞賛の声が次々と耳に入ってくる。僕はなんとも言えない表情でその場を離れ、再び家に戻ることにした。

「これじゃあ、全然スローライフじゃないじゃないか……」

ため息をつきながらベッドに倒れ込む。どうやら、この世界では僕が望んでいたような平和で静かな生活は、まだまだ遠い夢のようだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました

Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。 「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」 元婚約者である王子はそう言い放った。 十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。 その沈黙には、理由があった。 その夜、王都を照らす奇跡の光。 枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。 「真の聖女が目覚めた」と——

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...