【ラスト・パラダイス】 一人ぼっちのダンジョン攻略 少年は命がけのゲームを、孤独に戦いぬく

猫野 にくきゅう

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スライムの森

第16話 睡魔 A

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 今日の授業は、ひたすら眠かった。
 昨日夜遅くまでゲームをしていたことが祟り、今日は寝不足である。

 こう書くと、よくある学生のよくある悩みの様だが、僕の場合は一味違う。

 僕はゲーム世界に入り込み、ゲーム内のダメージや疲労が現実の肉体に反映される『完全没入型』ゲームをしている。現実世界でもHPとMPの減少を、そのまま引き摺っているのだ。


 という訳で、僕は今、身体の痛みと疲労感と、眠気に抗いながら授業を受けている。……この状態で居眠りをしなかったのは、ひとえに学校で目立ちたくなかったからだ。

 友達のいないコミュ障の僕は、根性で授業を耐え抜いた。

 



 ────そして、昼休み。

 僕は人気のない、校舎裏に来ている。
 ゲーム世界で手に入れた能力、『スロウ』を使用してみる為だ。

 肉体の疲労は寝起きに比べれば、かなりマシになって来た。
 ゲーム内の『宿屋』や『テント』でログアウトすると、HPとMPが徐々に回復する仕様なので、朝よりも今の方が体調はいい。

 コンディションに少し余裕が出来たので、ステータスを見て気になっていたことを確かめようと思う。

 
 僕の『特技』に、『スロウ』という能力が増えていた。

 どうやら冒険者や魔法使いなどの『職業レベル』を上げて行けば、自動で特技などを習得できる様だ。

 『スロウ』という名前から、恐らく敵の素早さを下げる能力だと思われる。

 実際に使って検証してみよう。







 僕は地面に落ちていた、枯れ葉を手に取る。
 それを上に掲げてから、手を放し落とす。

 枯れ葉目掛けて、心の中で『スロウ』と唱えた。
 
 ……ピタっ!

 枯れ葉は、空中で停止した。

 
 …………。

 よく見ると、完全に停止しているのではなく、少しずつ地面に向かい落ちて行っている。

 ────成功だ。

 この能力は僕の予想通り、対象のスピードを下げる能力の様だ。


 僕は空中に浮いた状態の枯れ葉を、手で掴もうとして異変に気付く。

 手が動かない。
 いや、身体全体が動かない。

 ……?

 …………少しずつは、動く。
 
 『動かない』のではなく、『ゆっくり』としか動かせない。


 ……。

 この『スロウ』という特技は、世界全体の動きをゆっくりにする能力のようだった。

 
 ……。
 
 ……凄い能力だ。

 凄い能力ではあるのだが、役に立たない能力だ。
 能力の使用者の動きもゆっくりになるのだから、何も変わらないのと一緒だ。

 ────敢えてメリットを上げるなら、敵の動きを見極めるのには使えそうだ。




 近接戦闘の戦士だと、使える能力かも知れない。

 攻撃中に『スロウ』を使い、敵の防御姿勢を見てから、確実にヒットする軌道に攻撃を修正するとか、逆に敵の攻撃を見極めて、確実に防御できるようにする。

 戦闘中に一時停止できる能力、か……。

 ……。

 使いこなせれば、かなり強力かもしれない。
 特に、実力の拮抗した相手との戦いで、効果を発揮すると思う。

 逆に相手との実力差に開きがあるれば、あまり意味がないかも知れない。
 

 ……。

 僕が実戦で使うなら、レッドスライムの素早い動くを捉えるために……。 

 …………!?

 僕はここで、閃いた。

 僕の攻撃手段は、ダークショットだ。


 ダークショットなら、ほとんど身体を動かす必要はない。

 『スロウ』使用中に、連射出来るんじゃないか……?


 二体の敵を、同時に攻撃できるだろうか────?
 
 ゆっくりとだが、動くことは出来る。
 狙いを少し変えるだけなら、可能だろう。

 弾丸の補充はどうだろう?
 これは動かなくてもいい、可能なはずだ。


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