パパLOVE

２１

『あぁ、ずっと』

『だったら…』

ある思いが脳裏をよぎり言葉になって発せられるところだったけど寸前でやめた。

「だったら３人で一緒に住めばいいじゃん」きっとこの言葉は自分勝手で独りよがりで誰も幸せにはなれない言葉。

ママもパパもそれを望まない。

望まないからママとパパは離婚して離れて暮らしている。

『どうした？』

『うぅん、何でもない』

それから３０分くらいお喋りをして電話を切った。

全然話足りない。

話したいことはいくらだってある。

朝まで夜どうし話をしてもきっと足りない。

私とパパを隔てていた９年間を埋めるには何十時間あったって足りない。


翌日。

「香澄ちゃん、パパとはそのあとはどうなの？」

朝のホームルームが始まる１０分前に舞香は私の椅子に一緒に座り、詩美は隣の席に座って話しかけてきた。

「うん、昨日は私のバイト先に来てくれて、夕食を一緒に食べた。パパが住んでいる住所も教えてもらった。今度、遊びに行くんだ」

「香澄ちゃん、良かったね。ずっと待ち望んでいたもんね。」

「何だか腑に落ちないな」

舞香は喜んでくれていたけど、詩美は不機嫌そうにそう言った。

「何が？」

「何で突然現れたんだ？」

「わからないし、聞けないよ」

「そうだよね。せっかく会いに来てくれて、いつでも会えるようになったしスマホで連絡も取り合えるようになったのに余計なことを聞きたくないよね」

「でも、大事なことだろ。逃げんなよ」

「そうだよね」

こういう時、舞香は寄り添って優しい言葉を投げかけてくれる。

逆に詩美は厳しいけど的確な言葉を私に与えてくれる。

どちらも私のためを思って言ってくれる優しい言葉だった。