パパLOVE

鷲宮@

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ママはパパとは違うママの匂いがして、女性らしい柔らかい感触がした。

ママってホントに美人だしカワイイ。

女性の私から見ても本当に魅力的で見ているだけでギュッと抱きしめたくなる。

こんなに素敵な女性なのにパパと離婚をしてずっと独りでいる。

私の思い出の中のママとパパはスゴく仲が良くて、周りからはおしどり夫婦と呼ばれていた。

子供の私から見ても、いつも新婚の夫婦のようにアツアツだった。

もちろん喧嘩しているのは見たことがない。

大好きなママと大好きなパパ…2人の子供でいられて幸せだった。

ずっと続くと思っていた幸せなのに…突然の終わりを迎えてしまった。

お風呂から出て、リビングに行くとママは趣味の刺繍をやっていた。

ママが刺繍をしだすようになったのは、私と2人で暮らすようになってからだった。

きっとパパと別れてしまった悲しさを埋めるために始めたことなのかもしれない。

「ママ、私にもやらせて」

「いいよ、やってみて」

ママはやりかけの刺繍枠に布を固定した物を私に渡してくれた。

「ママ、スゴく上手だしキレイに出来てる。これにはさすがに出来ないよ」

「いいから続きをやってみて」

「えぇぇ~~変になっちゃうよ」

「その方が個性的でいいかもしれないわよ。さあ、やって」

「うん」

やり方は何度も教えてもらったことがあるので、基本的なことなら出来る。

チャコペーパーで描かれた図案を下に布に刺繍針を刺していった。

教わった通りに勧めて行くと案外上手に出来ているような気がしてきた。

「上手、上手」

「まぁね」

私は調子に乗って手元を見ずに針を刺した

「イッ‥」

案の定、針を指に刺してしまった。

指先を見ると、針を刺した場所から血が少しずつ湧き出てきた。
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