私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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嫉妬は見苦しい

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「アルベルト様、信じてください。私はやっていません。これは誰かが私を……」 

「黙れ!!」

ドンッ!  アルベルト様が、私の机を拳で叩きました。大きな音がして、私はビクリと肩を震わせました。

「証拠が出ているじゃないか! リリィが見たと言っている! お前の手は汚れている! お前の机から破れたページが出てきた! これでもまだ、しらを切るつもりか!?」

「それは……全部、仕組まれたことです!」

「誰がそんなことをするんだ! ミナはお前と仲良くしたいと言っていたぞ! それなのにお前は!」



アルベルト様は私を睨みつけました。その目は、かつて私に向けてくれていた優しさなんて欠片もありません。完全に犯罪者を見る目です。

「ロゼリア。僕はガッカリしたよ」

彼は冷たく言い放ちました。

「昔のお前は、もっと賢くて、品のある女性だと思っていた。でも、今はどうだ?」

彼は、泣いているミナの肩を抱き寄せながら私を見下しました。

「自分より愛されるミナが羨ましくて、教科書を破り捨てる……。そんな陰湿な嫌がらせをするなんて」

そして、私の心を殺す最後の一言を口にしました。

「嫉妬に狂った女の顔は見苦しいな。醜いよ、ロゼリア」



プツン。

私の中で何かが切れました。それは、十年間つなぎとめていた婚約者としての情という細い糸でした。

(醜い?  私が?  あなたのために、毎日勉強してマナーを磨いて、あなたの失敗をフォローして、あなたの家の恥にならないように必死に生きてきた私が?)

ぽっかりと、心に穴が開いたような気がしました。でも不思議で涙は出ませんでした。

昨日の夜、キース様の前で全部泣き干してしまったからかもしれません。その代わりに、心の中に冷たい氷の柱が一本、スッと立ったような感覚になりました。



(……ああ、そうですか)

私は思いました。もう、いいや。こんな人たちに、私の言葉を届ける必要なんてない。馬鹿につける薬はないと言うけれど本当にその通りだわ。

私はスッと背筋を伸ばしました。そして、右目を大きく見開きました。いつものように、感情を押し殺すためではありません。明確なとして、彼らをターゲットにするためです。



――カチッ。【記録開始】

目の前の光景を保存します。私を「醜い」と言い放ったアルベルト様の歪んだ顔。その腕の中で、ニヤリと口の端を吊り上げて笑っているミナの顔。

勝ち誇った顔のリリィと面白がっているガストン。私を犯人扱いしてヒソヒソ笑うクラスメイトたち。

全員、顔と名前を覚えました。この教室にいる敵を一人残らずリストアップしました。

「……わかりましたわ」

私は静かに口を開きました。声は震えていません。自分でも驚くほど落ち着いた声でした。
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