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具体的な罠
「いいえ。魔法にかかったとはいえ、私に向けた暴言や、私を信じなかった事実は消えません。婚約破棄は決定事項です。ただ」
私は目を細めました。
「彼を『操り人形』のまま捨ててやるほど、私は優しくありませんわ。魔法を解いて、正気に戻って、自分が何をしたかを理解させて……絶望の中で後悔させてから、捨てて差し上げます」
「いいねぇ! ゾクゾクするわ、その冷酷さ!」
マリーが嬉しそうに手を叩きました。
「さて、本丸のミナを追い詰めるには、証拠が必要よ。でも、今の状態だと『アルベルト様が勝手に惚れてるだけ』と言い逃れされる可能性があるわ」
「ええ。目に見えない『心』の問題ですから、証明が難しいですわね」
「だから」
マリーは次に、ガストンとリリィの似顔絵を貼りました。
「まずは、周りの『防壁』から崩すのよ。この二人なら、ボロがいっぱい出るわ」
ターゲット1:ガストン
能力:【増幅】
罪状:騒音公害、および魔法実技でのボヤ騒ぎの原因。
「ガストンの【増幅】魔法は、分かりやすい物理現象よ。ボヤ騒ぎ、あれの魔力データを私が保存してあるわ。分析すれば、火種を大きくしたのはアルベルト様じゃなく、ガストンの魔力だって証明できる」
「それに、奴の声は物理的な破壊力がある。校舎の窓ガラスのヒビ、あれも奴の仕業だ。俺が用務員室から被害届のコピーを入手してきた。器物破損の請求書を送りつけてやろう」
キース様が言いました。
ターゲット2:リリィ
能力:【幻影】
罪状:情報窃盗、証拠捏造。
「そしてリリィ。彼女が一番厄介だけど、一番尻尾を出しやすいわ」
私はうなずきました。
「教科書破りの件と、ドレスのデザイン盗用の件ですね」
「そう。昨日の教科書、あれにはリリィの魔力ざんしがベッタリついていた。私の【鑑定】結果と、ロゼリアの【記録】映像で『リリィが朝、教室にいた』という嘘の証言をしている顔を合わせれば、彼女が犯人だと言い逃れできない証拠になるわ」
完璧な布陣です。科学捜査マリー、物理的証拠キース、そして決定的な映像記録の私。この三つが揃えば、彼らを学園の懲罰委員会にかけることができます。
「手順はこうよ。まずはガストンとリリィを個別に撃破して、ミナを孤立させる。守ってくれる取り巻きがいなくなったところで……ミナの魔法犯罪を告発する」
マリーが黒いペンで、ミナの似顔絵に大きく×印をつけました。
「星降る夜会。そこが決戦の舞台よ」
「夜会で、ですか?」
「ええ。全校生徒、それに国王陛下や貴族たちが集まる晴れの舞台。そこで、彼らの悪事を全部バラしてやるの。観客が多ければ多いほど、彼らの『破滅』は盛り上がるでしょう?」
なんという劇的な演出でしょう。彼らが大好きな劇場型の展開を今度は私たちが利用するのです。
「……ふふ。楽しみになってきましたわ」
私は自然と笑みがこぼれました。胃の痛みなんて、もうどこにもありません。あるのは、獲物を追い詰める狩人のような高揚感だけです。
「ロゼリア」
作戦会議が一段落した時、キース様が私を呼びました。彼は真剣な眼差しで私の手を取りました。
「この作戦が始まれば、もう後戻りはできない。君も傷つくかもしれないし、世間から『冷たい女』と噂されるかもしれない。それでも、やるか?」
キース様の手は大きくて少しゴツゴツしていて、でもとても温かいです。私はその手を両手で包み返しました。
「ええ、やりますわ。だって私には、最強の味方が二人もついていますもの」
私はキース様とマリーを交互に見ました。
「冷たい女? 上等ですわ。私は誇り高き『悪役令嬢』になります。そして、自分たちの身勝手で人を傷つけた彼らに、本当の『貴族の流儀』を教えて差し上げます」
私の宣言に、キース様は満足そうに口元を緩ませました。
「ひゅーっ! しびれるぅ!」
「よし、決まりだ! 作戦開始は明日。まずは手始めに……あの大声男(ガストン)から黙らせに行こうか」
マリーは口笛を吹いてキース様が立ち上がりました。
私たちは顔を見合わせてニヤリと笑いました。優雅なお茶会の時間は終わりです。さあ、反撃ののろしを上げましょう。まずは、あのうるさいスピーカーを破壊しに参りますわよ!
私は目を細めました。
「彼を『操り人形』のまま捨ててやるほど、私は優しくありませんわ。魔法を解いて、正気に戻って、自分が何をしたかを理解させて……絶望の中で後悔させてから、捨てて差し上げます」
「いいねぇ! ゾクゾクするわ、その冷酷さ!」
マリーが嬉しそうに手を叩きました。
「さて、本丸のミナを追い詰めるには、証拠が必要よ。でも、今の状態だと『アルベルト様が勝手に惚れてるだけ』と言い逃れされる可能性があるわ」
「ええ。目に見えない『心』の問題ですから、証明が難しいですわね」
「だから」
マリーは次に、ガストンとリリィの似顔絵を貼りました。
「まずは、周りの『防壁』から崩すのよ。この二人なら、ボロがいっぱい出るわ」
ターゲット1:ガストン
能力:【増幅】
罪状:騒音公害、および魔法実技でのボヤ騒ぎの原因。
「ガストンの【増幅】魔法は、分かりやすい物理現象よ。ボヤ騒ぎ、あれの魔力データを私が保存してあるわ。分析すれば、火種を大きくしたのはアルベルト様じゃなく、ガストンの魔力だって証明できる」
「それに、奴の声は物理的な破壊力がある。校舎の窓ガラスのヒビ、あれも奴の仕業だ。俺が用務員室から被害届のコピーを入手してきた。器物破損の請求書を送りつけてやろう」
キース様が言いました。
ターゲット2:リリィ
能力:【幻影】
罪状:情報窃盗、証拠捏造。
「そしてリリィ。彼女が一番厄介だけど、一番尻尾を出しやすいわ」
私はうなずきました。
「教科書破りの件と、ドレスのデザイン盗用の件ですね」
「そう。昨日の教科書、あれにはリリィの魔力ざんしがベッタリついていた。私の【鑑定】結果と、ロゼリアの【記録】映像で『リリィが朝、教室にいた』という嘘の証言をしている顔を合わせれば、彼女が犯人だと言い逃れできない証拠になるわ」
完璧な布陣です。科学捜査マリー、物理的証拠キース、そして決定的な映像記録の私。この三つが揃えば、彼らを学園の懲罰委員会にかけることができます。
「手順はこうよ。まずはガストンとリリィを個別に撃破して、ミナを孤立させる。守ってくれる取り巻きがいなくなったところで……ミナの魔法犯罪を告発する」
マリーが黒いペンで、ミナの似顔絵に大きく×印をつけました。
「星降る夜会。そこが決戦の舞台よ」
「夜会で、ですか?」
「ええ。全校生徒、それに国王陛下や貴族たちが集まる晴れの舞台。そこで、彼らの悪事を全部バラしてやるの。観客が多ければ多いほど、彼らの『破滅』は盛り上がるでしょう?」
なんという劇的な演出でしょう。彼らが大好きな劇場型の展開を今度は私たちが利用するのです。
「……ふふ。楽しみになってきましたわ」
私は自然と笑みがこぼれました。胃の痛みなんて、もうどこにもありません。あるのは、獲物を追い詰める狩人のような高揚感だけです。
「ロゼリア」
作戦会議が一段落した時、キース様が私を呼びました。彼は真剣な眼差しで私の手を取りました。
「この作戦が始まれば、もう後戻りはできない。君も傷つくかもしれないし、世間から『冷たい女』と噂されるかもしれない。それでも、やるか?」
キース様の手は大きくて少しゴツゴツしていて、でもとても温かいです。私はその手を両手で包み返しました。
「ええ、やりますわ。だって私には、最強の味方が二人もついていますもの」
私はキース様とマリーを交互に見ました。
「冷たい女? 上等ですわ。私は誇り高き『悪役令嬢』になります。そして、自分たちの身勝手で人を傷つけた彼らに、本当の『貴族の流儀』を教えて差し上げます」
私の宣言に、キース様は満足そうに口元を緩ませました。
「ひゅーっ! しびれるぅ!」
「よし、決まりだ! 作戦開始は明日。まずは手始めに……あの大声男(ガストン)から黙らせに行こうか」
マリーは口笛を吹いてキース様が立ち上がりました。
私たちは顔を見合わせてニヤリと笑いました。優雅なお茶会の時間は終わりです。さあ、反撃ののろしを上げましょう。まずは、あのうるさいスピーカーを破壊しに参りますわよ!
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