私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり

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狙われた学園祭

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王立学園の年に一度のお祭り、学園祭の日がやってきました。いつもは静かな校舎が、今日だけはカラフルなリボンや風船で飾られ、美味しそうな匂いに包まれています。

「いらっしゃいませー! 焼きそばはいかがですかー!」 

「魔法射的、一回10銅貨だよ!」

「美味しいパンケーキですよー!」

賑やかな呼び込みの声。楽しそうな音楽。私とキース様は、人混みを縫って歩いていました。



「すごい人だな。はぐれないようにしないと」  

キース様が、自然に私の手を引いてくれます。  

その大きく頼もしい背中を見ているだけで、私は幸せな気分になりました。

「ええ。今日は思いっきり楽しみましょうね、キース!」

私たちは、クラスの出し物を見たり、屋台で買った熱々のたこ焼きをフウフウしながら食べたりしました。

あの『おせっかい王子』ルーカスのことも、今日だけは忘れて楽しめそうです。



――そう、思っていたのですが。

「さあ! ここでメインイベントの開催だーっ!!」

正午の鐘が鳴った瞬間、グラウンドにある特設ステージの照明がビカァッ! と点灯しました。

大音量のファンファーレが鳴り響き、生徒たちの注目が一気にステージへ集まります。

「何かしら? プログラムには『演劇部の発表』と書いてありましたけれど……」

私が首を傾げていると、ステージの中央に白いタキシードを着た人物がさっそうと現れました。



キラキラとした金髪。バラを背負ったような笑顔。間違いありません。ルーカス王子です!

「親愛なる学園のみんな! そして、美しき乙女たち! 楽しんでいるかい!?」

「キャーッ! ルーカス様ぁー!」 

「こっち見てぇぇ!」

「ルーカス様、かわいいーー!」

黄色い歓声が上がります。彼はすっかり、この学園のスター気取りです。ルーカス王子はマイクを握りしめ、芝居がかった口調で叫びました。



「今日は、みんなにお願いがあってこのステージを借り切った! 題して、『愛と友情のアルベルト救済チャリティー』だ!!」

「……は?」  

私とキース様の口が同時にポカンと開きました。

ルーカス王子は、ステージの巨大スクリーンに昔のアルベルト様の写真(すごくカッコつけている肖像画)を映し出しました。

「みんな知っているね? この国の元王子、アルベルトを! 彼は今、、辺境の寒い大地で苦しんでいる! 悪い魔女に騙されただけの、を救いたくはないかーっ!?」



会場の空気がざわつきます。ルーカス王子のファンたちが、サクラのように叫びました。

「救いたーい!」

「アルベルト様かわいそう!」

「みんなでアルベルト王子を助けよう!」

その声につられて、事情をよく知らない生徒たちも「確かに、騙されただけなら可哀想かも……?」と思い始めています。  

これはマズいです……。場の空気という魔物が、嘘を真実に変えようとしています。



「そこで! この会場に、彼を救う鍵を握る人物がいる!」

ビシッ!  ルーカス王子が指差した先。スポットライトが動き、観客席にいた私を照らし出しました。

「ロゼリア・バレンシア嬢! さあ、ステージへ上がってきてくれ!」

「えっ……!?」 

私は眩しさに目を細めました。周りの視線が全部私に突き刺さります。断れば、「冷たい女」として一生噂されるでしょう。 

でも行けば、彼のおかしな論理に巻き込まれる。完全な罠です。



「行く必要はない!」 

キース様が私の前に立ち、ライトをさえぎってくれました。 

「こんな茶番、付き合う義理はないぞ!」

「……いいえ、キース」  

私は強い意志を込めて顔を上げました。

「逃げたら負けですわ。それに……ここでハッキリさせておかないと、彼は一生つきまとってきます」

私はキース様に目配せをしました。そして、ポケットに入っていた通信機を握りしめてマリーに合図を送った。
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