重い女

junhon

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愛のダイエット

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「俺たち、別れよう」

 付き合っている彼氏(まーくん♡)の「会いたい」という連絡に、待ち合わせ場所の喫茶店で一時間前から待っていると、まーくんは席に着くなりそう切り出す。
 
「ど、どうして!? わたしいつでもまーくんのことをおもっているのに!?」

 クリスマスに告白されて三ヶ月。突然の別れ話に私は身を乗り出してたずねる。
 
「……重いんだよ」

 まーくんは私と目も合わせずにそうつぶやいた。
 
 重い? どういうこと? 私スタイルには自信があるのに……。
 
「とにかくそういうことだから、じゃあな」

 そう言って席を立つまーくんの腕に私はしがみつく。
 
「待って! 私のどこがいけないの? 直すから! まーくんのためなら何でもするから!」

「そういうとこだよ!」

 そう言ってまーくんは乱暴に私の腕を振り払った。
 
 床に尻餅しりもちをついた私は、しばし呆然ぼうぜんとまーくんの背中を見送った後、周囲の視線にもかまわずその場で泣き崩れる。
 
 どうして? どうして? 中学の時も、高校の時も、そして大学に入って付き合ったまーくんも、みんな私のことを重いって言う。
 
 一晩泣き明かした後、私は高校からの友人・圭子けいこに相談した。
 
「あー、それは体重のことじゃなくてね」
 
 ファミレスのテーブルでケーキを食べながら圭子は訊ねる。
 
「あんたさ、彼氏にどのくらいLINE送ってた?」

「う~ん、一日五十回くらい?」

「既読が付かなかったり返信がない時は?」

「そりゃもう、五分おきに送るよ。何かあったら大変だもの」

「はぁ……」

 圭子はため息をつく。何がいけないんだろう? 私はいつもまーくんのことを想っていたし、今なにをしているか知りたいと思うのは当然だろう。

「彼氏の誕生日プレゼントには何あげた?」

「手編みのマフラー、五メートルくらいのやつ。まーくん一月半ばの生まれだったから大変だったよ。一週間くらい徹夜した」

「……あのねぇ、そういう過剰な束縛や愛情表現がいけないのよ。男からしたらウザいし気味が悪い。『重い』っていうのはそういうこと」

 私はまーくんの言っていた「重い」という言葉の意味を初めて理解した。でも、でも! 好きならしょうがないじゃない!
 
「あんたにはダイエットが必要ね。『愛のダイエット』が」

 それから半年後――
 
 スマホに彼氏からデートのさそいの連絡が来る。えーと、スケジュールが空いてる日は……。
 
 OKの返事を送り、今日きようのデートの待ち合わせ場所へと向かう。あら? 今度はまた別の彼氏からの食事のお誘いだ。
 
 圭子に言われて「愛のダイエット」を頑張ったけど、あふれる好きの気持ちは抑えられない。――ならば、分散すればいい。
 
 今、私は五人の男の人と付き合っている。
 
 ダイエットには失敗したけど、こうして私は「軽い女」になったのだった。
 
 
 
~END~
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