盆正月

junhon

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お盆に正月がやって来た!?

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「あ~あ、今日でお盆も終わりかぁ」

 茂吉もきち少年は青々とした水田を眺めながらそう呟く。江戸時代のお盆は旧暦の七月十五日。その前後一日ずつを含む三日間が休日となっていた。
 
「明日からまた畑仕事と思うとうんざりするな」

 隣に座った五郎ごろうもその言葉に相づちを打った。二人共まだ歳は十歳。だがそんな子供でも貴重な労働力なのだ。
 
「せっかく姉ちゃんも庄屋さまの所から帰って来れたのにな」

 茂吉には六つ年上の姉がいた。普段は庄屋の屋敷に住み込んで働いている。
 
 庄屋とはいわば村長だ。二人の目の前に広がる水田も庄屋の所有地だった。
 
「なんだよ、姉ちゃんが行っちゃうから寂しいってか?」

「馬鹿、そんなんじゃねーよ。ただ、頑張って働いている姉ちゃんをさ、もう少し休ませてあげたいなって思うんだよ」

 五郎のからかいに茂吉はそう言い返した。まあ、五郎が言うように寂しいのも事実だ。
 
「しょーがねぇよ、俺らが休めるのは盆と正月だけだしな」

 その言葉に茂吉は閃いた。
 
「そうだよ! だったら正月にしてしまえばいいんだ!」

「は……?」

 茂吉が何を言っているか分からず、五郎は変な顔になる。
 
「だからさ――」

 茂吉は五郎に自分の思いつきを説明した。そして二人はニヤリとした顔を交わし合う。
 
「いいなそれ」

「そうだろ?」

 二人はそれを実行に移すため、村の子供達も集めることにするのだった。
 
 
       ◆
 
 
 村の広場で盆踊りが行われ、これでお盆休みも終わりとなる。
 
 その日の夜遅く、茂吉と五郎、そして村の子供達による「盆正月」作戦が決行された。
 
 各人、それぞれの家から置物や棚、ハシゴなど持ち寄る。そしてそれらを庄屋の屋敷の玄関前に積み上げた。そこに季節外れの正月飾りも加え、「お正月」と書いた板を据える。
 
 そして次の日の朝――
 
「な、なんじゃこりゃあああ!」

 庄屋は玄関前に築かれた牆壁バリケードに素っ頓狂な悲鳴を上げた。
 
 これでは外に出られず、片付けさせるために人を呼ぶことも出来ない。
 
 結局、庄屋自身とその家族が一日がかりで片付けることとなる。
 
 こうして、盆休みに新たな休日が付け加えられたのだった。
 
 
 
~終わり~



 この物語自体はフィクションですが、実際に長野県上伊那郡南箕輪村田畑区に「盆正月」という伝統行事があります。
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