機動戦姫スノーホワイト

junhon

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本編

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 軌道世紀0079年、地球から最も遠い軌道都市ベルト3はマルス公国を名乗り、地球連合政府に宣戦布告した。
 
 
       ◆
 
 
「ぜ、全滅!? 十二機のビッグ・トムが全滅? 三分もたたずにかぁ!?」
 
 そう愕然がくぜんとする司令官の乗った宇宙戦艦も、エンジンをビームで打ち抜かれて爆散する。
 
「さらに出来るようになったわね、スノーホワイト!」

 防衛網を突破したその白いモビルドレスに迫りながら、赤いMDモビルドレスレッドフッドのウィッチ――ロート・ケップヘンはつぶやいた。
 
 今現在、地球の間近でマルス軍と連合軍の激しい戦いが行われている。その中心にあるのがスペースコロニー〈クリュソメリア〉だ。マルス軍はこのコロニーを地球の連合軍本部に落下させようとしていた。
 
 ギリシャ語で「黄金の林檎りんご」の名を冠したコロニーは、今や大質量兵器として地球の重力に捕らわれる阻止限界点に迫りつつある。マルス軍は皮肉を込めてこの作戦を「毒林檎作戦」と称していた。
 
「なんでこんな物を地球に落とすの? これでは地球が寒くなって人が住めなくなる。核の冬が来るわ!」

 MDスノーホワイトのウィッチ、ビアンカ・ネーヴェは叫ぶ。
 
「地球に住む者は自分たちの事しか考えていないわ。だから抹殺すると宣言したのよ」

 レッドフッドのウィッチ、ロートは戦いながらも冷ややかに答えた。

「人が人に罰を与えるなんて!」

 エースウィッチ同士の戦いは熾烈しれつを極める。しかし、ロートに足止めされている間にコロニーは阻止限界点に到達しようとしていた。

「くっ……こうなったら奥の手よ!〈七人の小人セブンドワーフ〉!」

 スノーホワイトの腰をスカートのように囲んでいたパーツが分離する。それらは個別に飛び回りレッドフッドにビームを放った。
 
「リャリノスチー粒子下で誘導兵器!?」

 ロートは驚愕きようがくに声を上げる。光以外の電磁波を阻害するリャリノスチー粒子が散布された戦闘空域で、誘導兵器は有り得なかった。
 
「ぐっ……くっうぅ!」

 ビアンカは激しい頭痛に顔をゆがめる。それは〈FTフエアリーテールフィールド〉というウィッチの精神波領域を拡張する技術。だが使用する者の脳に多大な負担をかけるのだ。
 
「――しまった!」

〈七人の小人〉のビームがレッドフッドの右腕を貫く。その隙を突きスノーホワイトは最大加速でコロニーを追った。

 だが、AIの計算ではコロニーが阻止限界点に到達する方が早い。
 
「ん? あれは!?」

 ビアンカの目が阻止限界点の手前に広がる輝きを捉えた。
 
 それは連合軍が用意した切り札〈魔法の鏡ミロワール〉。無数の小型ミラーパネルを用いて巨大な凹面鏡を作り、太陽光を集中して目標へ照射する兵器だった。それが迫るコロニーを焼き、爆発させる。
 
「やったの!?」

 爆発したコロニーは大きく二つに分かれた。
 
「ダメ! 落ちちゃう!」

 軌道計算の結果、分断されたコロニーの片方は地球の重力に捕らわれたままだ。
 
「させない!」

 スノーホワイトは阻止限界点を超えてコロニーの前に出る。それはスノーホワイトも地球へ落ちる決死の行動だった。MDに大気圏を突破する能力はないのだ。
 
「メルフェン・キャノン、フルパワー!!」

 スノーホワイトの胸部が開き、極太のビームが放たれる。だが超巨大建造物のコロニーを破壊するには至らない。
 
「無駄なことを……」

 ロートはその様子を眺め、皮肉げに口元をゆがませる。
 
(ビアンカ、わたしの力をあなたにあげる)

「アシェン!?」

 声なき声がビアンカに語りかけた。それは心を通わせながらも手にかけてしまった敵のウィッチ、アシェン・プテルのものだ。
 
 スノーホワイトの展開するFTフィールドが広がっていく。そして共に戦った仲間たちの声がいくつも響いた。
 
「私の身体をみんなに貸すわ!」

 フィールドに集まるウィッチたちの思念がスノーホワイトにエネルギーとして注ぎ込まれる。メルフェン・キャノンは直径数キロの光の柱となりコロニーを完全に破壊した。
 
 
       ◆
 
 
「わぁ、綺麗きれい! まるで光の雪が降っているみたい」

 地球に住むひとりの少女は夜空を見上げ、流星となって燃え尽きるコロニーの破片をそう言い表すのだった。
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