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誕生! 魔法超女!
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「キレテルー!」
街に突如として怪物が現れた。それはダンベルの頭部にマッチョな筋肉を供えた巨人である。その全長はおよそ十メートル。胸には何故か白黒のパンダの顔が刻まれていた。
「な、なに!? なんなの!」
逃げ惑う人波の中の一人、中学二年生の鹿島のどかが悲鳴を上げる。栗色の髪をツインテールにした愛らしい少女だったが、その顔には恐怖と困惑が浮かんでいた。
「――あ!」
人波に押され、のどかは転倒する。人々はそんなのどかに構うことなく我先にと逃げだし、誰も居なくなった歩道に一人取り残された。幸い、怪物はビルを破壊するのに夢中でのどかの存在に気づいてはいない。
そんなのどかの目の前に一匹の白猫が現れる。いや、一見猫のように見えるがその造形はどこかおかしい。妙に顔が丸いし、ウサギの様に長い耳が垂れ下がっている。尻尾も狐みたいにフサフサだ。
そしてその謎生物が言葉を発した。
「ねえキミ、ボクと契約して〈魔法超女〉になってよ」
「……え!?」
動物が人間の言葉を喋るのに、のどかは目をしばたかせる。戸惑うのどかに構わず、謎生物は言葉を続けた。
「ボクの名前はビルダ。あの怪物は〈Xパンダー〉と言う宇宙からの侵略者が造りだしたものだ。あいつに対抗できるのは〈魔法超女〉となったキミしかいない」
「魔法少女!?」
実は、のどかは今でもニチアサの魔法少女番組を毎週楽しみにしている。そして「超女」を「少女」と聞き間違えた。憧れの魔法少女に自分が成れるという事態に二つ返事で頷く。
「うんうん! 契約する! 私を魔法少女にして!」
「ありがとう。契約成立だ」
ビルダは満足げに頷き、何やら呪文のような言葉を唱え始める。のどかの足下に魔法陣が浮かび上がった。
「さあ、出でよ魔法超女プリティマッスル!」
「え?」
その名前に何やら嫌な予感を覚えたのどかだったが、変身バンクが始まってしまう。
のどかの着ていた服が粒子となって分解され、光あふれる空間から幾条ものリボンが伸びる。それはのどかの身体に巻き付いてフリフリなドレスへと変化した。
そしてのどかの身体が膨れ上がっていく。
「魔法超女プリティマッスル!」
変身バンクを終えたのどかはポーズ――サイド・チェストを決める。これはのどかの意思とは関係ない強制的なものだ。いわゆる「お約束」である。
「――て!? え、え、えーーー!?」
のどかは変身した己の姿に悲鳴を上げた。
ツインテールは長く伸びてピンク色に変わり、その身体はゴスロリな白とピンクの衣装をまとっている。さらに身長は二メートルにまで伸び、その服をはち切れんばかりの筋肉が押し上げていた。
「ナイスマッスル!」
ビルダはその筋肉に惜しみない賞賛を送った。
その姿は、端的に言えば『北〇の拳』のラ〇ウがピンクのツインテールになってフリフリドレスを着ている様を想像してもらえばいいだろう。愛らしい顔も劇画調に変わっていた。
「いやぁあああああああああ!!」
変わり果てた己の姿にのどかは悲鳴を上げる。
「な、なんなの! この姿は!?」
「それはキミが内包している魔力を筋力に変換しているんだ。ボクが見込んだ通り、素晴らしい筋肉だ!」
「いやいやいや、普通見た目はちょっと変わるだけでしょ!?」
「ふむ。ボクもこの星の娯楽番組を調べたんだけど、あんな細腕で巨大な敵を倒せるわけがないだろう? 力こそパワーだよ」
「なんでそこはファンタジーじゃないのよ!」
「さあ、今のキミは少女――女性という性別を超えた〈超女〉となった。世界の平和を守るために戦うんだ、プリティマッスル!」
「こんなの私がなりたかった魔法少女じゃない~~!」
そうやって二人が騒いでいると、さすがに怪物キレテルーもそちらに気づく。
「キレテルー!」
その拳が二人の頭上から振り下ろされる。
「うるさい!」
苛立ち紛れにのどかの放ったアッパーが、闘気を放つカウンターとなってキレテルーに直撃した。
「ナイスマッスル~~」
キレテルーは満足げな表情を浮かべて浄化される。
その様子を遠くから眺めていたパンダの頭にナイスボディの怪人、Xパンダーは呟く。
「魔法超女プリティマッスル、今回はこれで手打ちといたしましょう」
――こうして、魔法超女プリティマッスル最初の戦いは幕を閉じた。
しかし、地球征服を企むXパンダーはさらなる怪物を送り込んでくるだろう。戦えプリティマッスル! 世界はキミの筋肉にかかっている!
合い言葉は「ナイスマッスル!」だ!
※続きません(笑)。
街に突如として怪物が現れた。それはダンベルの頭部にマッチョな筋肉を供えた巨人である。その全長はおよそ十メートル。胸には何故か白黒のパンダの顔が刻まれていた。
「な、なに!? なんなの!」
逃げ惑う人波の中の一人、中学二年生の鹿島のどかが悲鳴を上げる。栗色の髪をツインテールにした愛らしい少女だったが、その顔には恐怖と困惑が浮かんでいた。
「――あ!」
人波に押され、のどかは転倒する。人々はそんなのどかに構うことなく我先にと逃げだし、誰も居なくなった歩道に一人取り残された。幸い、怪物はビルを破壊するのに夢中でのどかの存在に気づいてはいない。
そんなのどかの目の前に一匹の白猫が現れる。いや、一見猫のように見えるがその造形はどこかおかしい。妙に顔が丸いし、ウサギの様に長い耳が垂れ下がっている。尻尾も狐みたいにフサフサだ。
そしてその謎生物が言葉を発した。
「ねえキミ、ボクと契約して〈魔法超女〉になってよ」
「……え!?」
動物が人間の言葉を喋るのに、のどかは目をしばたかせる。戸惑うのどかに構わず、謎生物は言葉を続けた。
「ボクの名前はビルダ。あの怪物は〈Xパンダー〉と言う宇宙からの侵略者が造りだしたものだ。あいつに対抗できるのは〈魔法超女〉となったキミしかいない」
「魔法少女!?」
実は、のどかは今でもニチアサの魔法少女番組を毎週楽しみにしている。そして「超女」を「少女」と聞き間違えた。憧れの魔法少女に自分が成れるという事態に二つ返事で頷く。
「うんうん! 契約する! 私を魔法少女にして!」
「ありがとう。契約成立だ」
ビルダは満足げに頷き、何やら呪文のような言葉を唱え始める。のどかの足下に魔法陣が浮かび上がった。
「さあ、出でよ魔法超女プリティマッスル!」
「え?」
その名前に何やら嫌な予感を覚えたのどかだったが、変身バンクが始まってしまう。
のどかの着ていた服が粒子となって分解され、光あふれる空間から幾条ものリボンが伸びる。それはのどかの身体に巻き付いてフリフリなドレスへと変化した。
そしてのどかの身体が膨れ上がっていく。
「魔法超女プリティマッスル!」
変身バンクを終えたのどかはポーズ――サイド・チェストを決める。これはのどかの意思とは関係ない強制的なものだ。いわゆる「お約束」である。
「――て!? え、え、えーーー!?」
のどかは変身した己の姿に悲鳴を上げた。
ツインテールは長く伸びてピンク色に変わり、その身体はゴスロリな白とピンクの衣装をまとっている。さらに身長は二メートルにまで伸び、その服をはち切れんばかりの筋肉が押し上げていた。
「ナイスマッスル!」
ビルダはその筋肉に惜しみない賞賛を送った。
その姿は、端的に言えば『北〇の拳』のラ〇ウがピンクのツインテールになってフリフリドレスを着ている様を想像してもらえばいいだろう。愛らしい顔も劇画調に変わっていた。
「いやぁあああああああああ!!」
変わり果てた己の姿にのどかは悲鳴を上げる。
「な、なんなの! この姿は!?」
「それはキミが内包している魔力を筋力に変換しているんだ。ボクが見込んだ通り、素晴らしい筋肉だ!」
「いやいやいや、普通見た目はちょっと変わるだけでしょ!?」
「ふむ。ボクもこの星の娯楽番組を調べたんだけど、あんな細腕で巨大な敵を倒せるわけがないだろう? 力こそパワーだよ」
「なんでそこはファンタジーじゃないのよ!」
「さあ、今のキミは少女――女性という性別を超えた〈超女〉となった。世界の平和を守るために戦うんだ、プリティマッスル!」
「こんなの私がなりたかった魔法少女じゃない~~!」
そうやって二人が騒いでいると、さすがに怪物キレテルーもそちらに気づく。
「キレテルー!」
その拳が二人の頭上から振り下ろされる。
「うるさい!」
苛立ち紛れにのどかの放ったアッパーが、闘気を放つカウンターとなってキレテルーに直撃した。
「ナイスマッスル~~」
キレテルーは満足げな表情を浮かべて浄化される。
その様子を遠くから眺めていたパンダの頭にナイスボディの怪人、Xパンダーは呟く。
「魔法超女プリティマッスル、今回はこれで手打ちといたしましょう」
――こうして、魔法超女プリティマッスル最初の戦いは幕を閉じた。
しかし、地球征服を企むXパンダーはさらなる怪物を送り込んでくるだろう。戦えプリティマッスル! 世界はキミの筋肉にかかっている!
合い言葉は「ナイスマッスル!」だ!
※続きません(笑)。
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