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第3章 幼子たちと子守役たちはモフモフ巡りをする
3-2
しおりを挟む青の鬣の長は、巨木の幹を斜めに駆け上がっていった。枝のある位置まで登ると、今度は枝から枝へと飛び移りながら登っていった。
その間の幼子たちは、恐れるどころか大喜びで、幹を駆け抜けるスピードに歓声を上げ、どんどん遠くなる地上に目をみはった。
「わお~ん!『すごいはやい!』」
「ぴぃ~ぴぴっ!『すごいたかいとんだ!』」
流石にかすみでも、いまだに此処まで早く高くは飛べない。
「あおいたてがみのおさ、しゅごいでしゅ、きにのぼってましゅ、おそらとんでましゅ~」
鬣から手を離さんばかりに興奮して身を乗り出す幼子たちに、若葉色の長はあきらめた様に身を包んだ守る力を強めた。
ひときわ太い枝に飛び乗った青の鬣の長は、その枝元に空いた大穴の前で足を止め、再び身を伏せた。
『幼子たち、これが空の出入り口なのである。手を離さぬかとはらはらしたが、無事に到着したのである。 若葉色の長に感謝するのである。
我は此処までであるから、あとは若葉色の長の案内に付いて行くのである。』
蒼い鬣から降りた幼子たちは、翠の耳と並ぶと青の鬣の長に向かって
「わお~ん!『はやかった、ありがと~』」
「ぴぃ~!『はやくたかくとんだ、ありがと』」
「とても、たのちかったでしゅ、ありがとごじゃました。」
丁寧にお礼を述べると、手や尾を振って、戻っていく蒼い鬣を、見送った。
蒼い鬣の見送りを済ませ、緊張して若葉色の長に続いて穴を潜った幼子たちを、みかん色の尻尾が出迎えた。
『いらっしゃいなのね~この先はたくさんの者が住んでるところなのね~でも、一度に全員と挨拶するのは無理なのね~
今回はあたしが皆の分も挨拶するのね~よろしくなのね~』
ミカン色の毛玉が、にこやかにふわふわもふもふな尻尾を揺らした。
見知った尻尾のお出迎えには、幼子たちも緊張を解き、楽しそうに応えた。
「ぴぴっ!『みかんいろのしっぽ、こんにちは』」
「わふっ!『みかんいろのけだま、よろしく』」
「こにちわ、このまえ、ありがとごじゃました、たしゅかりまちた。
それから、かってによびなちゅけて、よんで、ごめんにゃしゃい、いやならよばないでしゅ、どーしたらいいでしゅか?」
しずくがきちんとお伺いを立てると、ふわもふな尻尾で幼子たちをなでなでして、
『みかん色とはこの色のことなのね?ならその名で呼ばれたいなのね~この尻尾は、色も形もお気に入りなのね~』
みかん色の尻尾は、快く呼び名を受け取った。
みかん色のしっぽを先頭に、幼子たちと若葉色の長は進んでいった。
「ここに、きたこと、ありまちたか?ん~でもなんかちまう?」
穴の先が、どこかで見たような違うような景色で、しずくが戸惑っていると、早速辺りを駆け回って
「わふ~っ!『すこしせまい?』」と、ゆきが広場と道を検分し、
「ぴぃ~!『くうどーちいさい?』」と、かすみは壁面の洞穴入り口を検分していた。
「あ~、おへやにょ、いりくち、ちかくに、いっぱいありましゅね~むこうの、かべも、ちかいでしゅかね?」
しずくも違和感の正体に気付いたところで、若葉色の長が話し始めた。
『ふむ、よく見ている、正解だ。この辺まで登ると、巨木内のうろ自体が狭まっていて、その分道や広場も少し狭い。
ふ~む、空洞の入口がこのあたりに多く感じるか、確かにうろの上部は、どこも空洞の数が多い。』
『うろの上部では、空洞も狭くて、たぶんその分だけ数が多いなのね~しかも、道から外れたところに空いた入り口も割とあるなのね~ほらあそこにもなのね~』
続けてみかん色の尻尾が補足説明して指示したのは、道から上った壁面の途中だった。
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