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それぞれの後日談 (後)side アメリア
文字数が7000オーバーどころか10000文字程度になってしまいました。
長めの文章ですが、最終話ですのでもう少しお付き合い下さいませ。
*公爵夫妻たちの末路を最後(欄外)にオマケで追加しました。(5/20)
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付き合うようになってもアメリアとレンの関係は以前と然程変わらなかった。それはレンの涙ぐましい努力と忍耐力があってこそだった。
一緒に旅に出て二年、付き合ってもうすぐ一年のこの二人はキスやハグ止まりである。最近はほんのちょっと深い口づけをするようにはなってきたが、それ以上の進展は無い。
貴族ならば女性は婚前交渉不可は当たり前。婚約者同士なら有りなのだろうが、万が一、婚約破棄になどなろうものなら乙女では無くなったご令嬢の次の縁談は、、、推して知るべし。
平民ならばその辺は割と問題は無いのだが、それでも自分の妻になる女が乙女である事を望む男が多いのも、推して知るべし。
とは言え、アメリアは『結婚まではー』などと思っている訳ではない。けれど、体を繋いだ場合のリスクが怖いのだ。
別にレンが体を繋いだら用済みとばかりにあっさりとリアを捨てる様な男だと思っている訳では無い。
前世の性の知識はバッチリあるのだが、この世界の閨ごとについてはアメリアはよく分かっていなかった。
だから避妊の仕方も妊娠・出産についてもよく知らない。だって教わる機会も誰かに聞く機会も無かったのだから。
万が一、旅の途中で妊娠なんて事になったらどうなるのか。
出産する時はどうするの?まさか自宅出産?無理っ、考えるだけで怖いんですけど!
という不安があった。そんな不安をレンに話すのも流石のアメリアでも憚られた。
まだ付き合って半年の二人には結婚の予定がある訳でもなかったから。
そう思っていたのはアメリアだけだったのだが、レンの方でも『まだ大人の関係になるのは、、、。」という気持ちを尊重するつもりだった。
相手はまだ十八歳だ。八歳上のレンは二十六歳で、確かに我慢するのは色々辛い。
四六時中、行動を共にしているのだ。色々と、本当に色々と主に体の方が辛い訳だが、貴族社会では令嬢の処女性が重要視されている、と思えば我慢も出来る。
それにレンにはレンの事情もある。
アメリアがそろそろ旅する事にも満足して、定住を考え始めた時、レンは『チャンスだ!』と思った。
今が外堀を完全に埋めきる絶好の機会だ、と。
何なら高い高い塀を築いてリアに知られぬように囲ってしまいたいぐらいには、レンにとってはリアは大事な存在となっていた。
周辺国で二人がまだ行っていない国はアトラータ帝国だけだった。
「次のアトラータ帝国の王都は水の都と呼ばれていて、自然豊かで景観もとても美しい場所だ。
それに各国の商品が集まる流通にの要とも呼ばれるほど交易が盛んで、王都に居るだけで周辺国の特産品を存分に食べられるんだぞ。」
リアは旅先の観光名物の料理を食べるのを毎回楽しみにしていた。趣味と言っても良い。だから王都ガレリオをアメリアはきっと気に入る筈だ。
「もし気に入ったらそこに定住するのも良いかも知れないな。
王都から馬車で半日行った所にはダンジョンもあるんだ。そのダンジョンでしか取れない珍しくて美味しいフルーツもあるそうだ。
リアの好きな限定品てやつだな。」
「へぇ~、そうなんだ。確かに気に入ったら定住するのも良いかもね。」
良しっ!餌に食いついた!
内心、ニンマリとしながらもリアに本心がバレない様にレンは平静を装った。何しろ恋人同士にはなったものの、二人の間にはまだ温度差があるとレンは二人の関係をそう分析している。
リアは『面倒だ。』と思ったら、さっさと居なくなりそうで油断は出来ない、とレンは常々警戒していた程だった。
アトラータ帝国に入国すると遠方に小さく白い山の様な物が見える。
「あれはアトラータ帝国の王城だな。あの辺りが王都ガレリオだよ。」
リアの視線に気付いたレンが言った。遠くに見える城はこの距離からでも白いと分かる。
城は旅人にとって目印の様に、乗り合い馬車に乗っている間もずっと遠くに見えていた。王都に近づくにつれ、白い山の様に見えていた城は次第にはっきりとその輪郭を現してきた。
王都のシンボル的存在の王城の背後には、王族が住む為の宮殿が幾つか建っていた。
高い塀に囲まれた王都に入るには門で身分証の確認をする必要がある。乗り合い馬車に乗っていた乗客も一旦降りる。
問題なく門番の許可をもらい王都に足を踏み入れると、二人の前にスッと一台の黒塗りの馬車が停まった。
「リア、これがS級冒険者の特権だ。」
レンはにこやかにそう言って、アメリアを馬車に乗るように促した。
乗り合い馬車よりも段違いに良い馬車の乗り心地にリアは喜んだ。機嫌の良いリアにレンはさりげなく告げる。
「実は俺、このアトラータ帝国の生まれなんだよ。久しぶりの帰郷だからギルドに行く前に実家に寄ってもいいか?」
そう言えば、レンの家族の話を聞いた事が無かったな、とアメリアはふと思った。
あまり自分の事を話したがらないアメリアに遠慮してか、レンはリアの家族の事を尋ねようとはしなかったし、遠慮してか自分の話もしようとはしなかった。
それはアメリアを気遣っての事、とアメリアはそう思ってその気配りに好感を持っていたが、レンにはレンの事情があったからだと、この数時間後にアメリアは知る事となる。
馬車は段々、王都の中心に近づいてきて、レンの実家は随分と良い立地の場所にあるんだな、と思い、アメリアはふとディバイン公爵家の屋敷を思い出す。
どの国でも大抵、王都の中心地は貴族の屋敷やタウンハウスが建っているんじゃなかったっけ?もしかしてレンの実家って貴族?
アメリアは嫌な予感がして、上機嫌で彼女の隣に座るレンを見た。
「ねぇ、レン?レンの実家って、貴ー。」
アメリアが言いかけた時に不意に馬車が停まった。外で何やら話す声が聞こえると馬車は再びゆっくりと動き出した。
けれど先程と違って外から街の賑やかな喧騒は聞こえてこない。いよいよ現実になりそうな嫌な予感の気配にアメリアが心の中で逃げの姿勢になった時、馬車は停まり扉の外に人の気配がした。
「さぁ、リア。実家に着いたぞ。先ずは湯船に浸かって旅の疲れを癒やしてくれ。」
そう言ってアメリアに向けるレンの笑顔がこの上なく嬉しそうで、それが逆にアメリアの不安を煽った。
だが、アメリアが何か言う前に、扉は開きレンは馬車を降りてからアメリアの手を取ってアメリアを抱き寄せるように、いや、ホールドするかの様にガッチリと腰に手を回して馬車から降ろした。
アメリアは馬車からは降りたが、レンはアメリアを下ろす事なくそのまま歩き出す。周囲には侍女や従僕のような者たちや騎士も居る。それらの者たちが表情一つ変えずにレンの後ろにつき従う。
そしてアメリアが立て抱きにされたまま連れて来られた目の前には、青を基調としているらしい煌びやかな宮殿、後方には入国した時から目にしていた白亜の城が聳え立っていた。
!!!!!!!!!
「帰る、、、、。」
ボソリと呟いたアメリアの声は聞こえている筈なのに、誰の耳にも届かなかった様でレンたち一行は宮殿の中に歩みを進める。
そうしていつかの様にアメリアは侍女たちによってジャブジャブと洗われて、身支度を整えられると王子様の格好をしているレンに引き渡された。
そして気付けばアメリアは謁見の間に居たのだった。
「・・・・・・・ダマサレタ。」
小さく呟くアメリアは、揃って厳しい顔つきをしている周囲の人たちを見渡した。
「グレン、三年振りに帰って来たと思ったら、一体どういう事なの?」
不意に玉座の片方に座る女性が眉を顰めて責める様な口調で言った。
「挨拶も無しにいきなりですか?先触れの手紙は送っていたはずですが?」
私、全然歓迎されていないよね?いや、私も歓迎されたくて此処に来た訳でも無いし来た理由も分かってないんだけど?
「・・・グレンフォードよ。いきなり『嫁を連れて帰る』の一言しか書いていない手紙を先触れと言うのか?
それでなくとも今はテオドールの事で城では混乱を極めているというに、、、。」
どうやら厳しい顔をしていたのは、レンたちだけの所為では無いらしい。
しかし、『嫁を連れて帰る』とは一体、どういう事か?
アメリアが説明を求めて隣に立つレンを見上げれば、レンはニッコリ笑ってからアメリアの前で跪いた。
「リア、俺と結婚しよう!」
結婚して下さい、でもなく結婚してくれでもなく、そんな話を一度も二人でした事が無いのにいきなり『結婚しよう!』とは何なんだ!?
しかも親には『嫁を連れて帰る』と連絡済みとは順番がめちゃくちゃではなかろうか。
そんなプロポーズなど勿論、
「いえ、しま「リア!ありがとう!一生大事にするよ!」・・・・。」
レンはアメリアが全てを言う前にガバリとアメリアを抱きしめる。
『オイ、コラっ!これは一体、何なんだ!?』
アメリアだけじゃなく、謁見の間に居た全員が、レンの公開プロポーズからの力技に内心同じ事を思った筈だ。
「レン、、、後で殴る。」
しかし、ボソリと呟いたアメリアの言葉にレンは都合良く了承の意と受け取った。
そうして周囲の困惑を気にせず、アメリアの腰に手を回してガッチリとホールドすると、レンは皇帝陛下たちの方に向き直った。
「という事で、わたしたちは結婚する事になりました。ところでテオドールが何かしたんですか?」
という事でも何もないだろう!
というのが全員の総意だったろうが、レンのあまりにも開き直った態度に皇后たちももはや返す言葉も無い。
それより何より、第三皇子のテオドールのやらかしで、宮殿はてんやわんやの大騒ぎで事態収拾に頭を悩ませている所だったのだ。
そこへ『ちょっと外の世界を見に行ってくる。』と軽いノリで冒険者稼業を楽しむべく出て行った第二皇子グレンフォードの三年振りの帰国が『嫁を連れて帰る』だ。
皇后で無くとも厳しい顔つきになるのは仕方がなかった。しかもどうやら第二皇子の相手も平民か、となれば、宰相をはじめ、大臣たちも渋い顔の一つや二つもするだろう。
侍女によって全身整えられたアメリアは薄化粧に伸びた髪をハーフアップスタイルで纏められていて目を見張るほどの美少女だ。
しかし、質素だが品があり丈が足首まであるワンピースを着ているアメリアの、この服装は平民が着る衣装でもあった。
「テオドールが昨日、学園の卒業パーティーで側近候補たちとともに婚約者のアネット嬢に婚約破棄を言い渡したのだ。平民出身の特待生の女生徒を横に侍らせてな。」
皇帝は口の中に苦虫が何匹居るのか?と思うぐらいの表情で答える。
「はっ?確かテオドールは幼少の頃からアネット嬢一筋だったでしょう?」
「そうよ。それなのに平民の女生徒が半年前に編入してきてから、あの子はおかしくなってしまったのよ!」
皇后が眉間に青筋立てて吐き捨てるように言った時、何やら部屋の外が騒がしくなったと思ったら、バンっと物凄い音を立てて扉が開いた。
「きゃー!!グレン様っ!会いたかったですぅ~。」
「ま、待ってよ、プリシラ。この部屋は勝手に入っちゃダメだよっ。」
突然の乱入者に部屋に居た全員が呆気に取られた。
皇帝が誰かと会っている筈の謁見の間に、不敬にも乱入してきたのは、ピンク髪にピンクの瞳の少女とレンの様な服装をした青年だった。
「テオっ!一体、これはどういう事なのっ!」
「は、母上、申し訳ありません。兄様が戻ったと聞いたプリシラが急に、、、、。」
皇后の叱責にテオと呼ばれた青年は縮こまりながらもボソボソと声を出す。そんな様子など、お構い無しに少女はレンの側までやって来たかと思ったらピョンピョンと飛び跳ねている。
え、何だ、この混沌な状態は。
割と物事に動じないアメリアさえ、今の状況に頭が追いつかない。
「あのっ、初めましてっ、グレン様。私、貴方のプリシラですっ。キュルンっ。」
「・・・・・・・・・・・。」
心なしか、レンのアメリアの腰を抱く手に力がこもった気がする。
「えへへへ、グレン様に早く会いたくて、私、攻略を頑張っちゃいましたぁ。
スチルで見た通り、黒髪赤い瞳で物凄くイケメンですねっ。キュルルンっ。」
何、この子。語尾の言葉って漫画でよくある背景に書かれた効果音?それを自分で言っちゃうの?
アメリアは盛大にどん引いた。どん引きしたどさくさに紛れてこの場から去りたかったがレンの右手がアメリアの腰から離れる事はない。
「ちょ、ちょっと、プリシラ!君は僕の恋人になってくれるんだろう?」
テオドールがレンとプリシラの間に割って入ろうと情けない声を出してやって来た。
「ちょっとぉ~、テオったら邪魔しないでよ!
テオはシークレットキャラのグレン様に会う為の踏み台だったのよ。
もう用は済んだから悪役令嬢のアネットの所に戻ればぁ。キャハっ。」
このプリシラという美少女はさっきから随分と失礼な事を言っている。しかもこの国の皇子に向かって。不敬罪というやつになるんじゃなかろうか?
「あの、プリシラ、さん?今は私たちが皇帝陛下と謁見している最中ですので、レンとの話は後にしてくれませんか?」
「はぁ~?ちょっとアンタ何を言って、、、、。
てか、アンタっ!!
悪役公爵令嬢アメリア・ディバインがどうして此処にいんのよっ!」
プリシラは振り返ってアメリアの方を向くと、目を大きく見開いて叫んだ。
え?どうしてこの子が私の名前を知っているの?
アメリアは驚いたが、レンを始め謁見の間に居た者たちも皆驚いていた。
アメリア・ディバイン公爵令嬢。
令嬢の名前に聞き覚えは無いが、ディバイン公爵家には聞き覚えがある。
アトラータ帝国はロレアル国と長く友好関係を築いてきた。他国を跨いでの付き合いではあるが、数代前に皇女がロレアル国の王太子に嫁いで以降、より一層交流が盛んになった。
だから王族は勿論、大臣たちもロレアル国の高位貴族の家名は頭に入っていた。公爵家なら尚更だ。
「まさか、ディバイン公爵家のご令嬢だったのか?」
「いやしかし、ディバイン公爵家にそんな名の者は。」
周囲が騒つく中で、更にプリシラが爆発発言をした。
「アメリア・ディバイン、、、。
あれっ?ガルバ伯爵の後妻になったんだからアメリア・ガルバ?
んん、でもアメリアって散々、ガルバ伯爵に嬲られて、それで伯爵の息子を誑かして悪役令嬢になって学園に戻って、、、。
ああ、確か公式じゃアメリア・ディバインだったわ。」
プリシラのこの大きな独り言に一番大きく反応したのはレンだった。
「はっ?ガルバ伯爵?嬲られた、、、、?」
ブツブツ呟きながら殺気をただ漏れにさせているレンの頭に、アメリアは手刀を食らわす。
「レンっ!後妻になるのが嫌だからその日の内に家出したって、私が言ったのを忘れたの?」
そう言えばそうだった、とレンは落ち着きを取り戻しながら、リアを貶める発言をしたプリシラをひと睨みする。
「きゃっ、グレン様に見つめられちゃった。トゥンクっ。」
「誰がお前を見つめるものか。俺が見つめるのはリアだけだ。」
そう言ってレンはプリシラに見せつけるようにアメリアを抱き寄せる。
「えぇっ!?何言っちゃってんの、グレン様!
ん、あれっ?グレン様には魅了アイテムが効いてない?
え?何で?
私に見つめられたら魅了の力で、男はみぃんな私の虜になる筈なのにぃっ!」
プリシラの自爆発言は留止まる事が無い。この魅了の力に即座に反応したのは皇后たちだった。
もしやテオドールがこの女に入れ込んだのは、魅了という禁術のせいか!?
「あぁっ!!もしかしてアメリアの所為?
アンタ、『スタ☆ラブ』の1作目の中の魅了アイテムをヒロインから奪ってグレン様を攻略しちゃったの?
酷いっ!グレン様は『スタ☆ラブ 2』のシークレットキャラなのよ?
私のなんだからグレン様を返してよっ!」
プリシラがアメリアに詰め寄ってくるが、一体全体この宇宙人は何を言っているんだろうか?
何か本当に色々と面倒だ。
低いテンションながらプチ~ンとアメリアの堪忍袋の緒が切れた。
「プリシラ、うるさい。」
唾がかかりそうなほど顔を近づいてくるプリシラに、アメリアは渾身の一撃、デコピンをかました。
その強烈な一発にプリシラは後ろへとのけ反って倒れそうになる。慌ててアメリアはプリシラの手を取って自分の方に引き寄せた。
その時、プリシラの両の瞳からキラキラと光る小さな何かが落ちた。落ちたと同時にプリシラの足がそれを踏んでしまった。
「きゃー!!魅了アイテムのピンクのコンタクトがぁ!
アメリアっ、どうしてくれんのよ、割れちゃったじゃないっ。」
琥珀色の瞳をしたプリシラの言葉も皇后たちは聞き逃さなかった。
アメリアは、アメリアの渾身の一撃に体勢は崩したものの、痛がるどころか気にもしないで『魅了だ、コンタクトだ。』と騒いでいるプリシラに只々驚いていた。
こうしてアメリアのよく分からない内に騒動は一挙に終結したらしい。
まず、第三皇子テオドールの件は、プリシラが魅了アイテムという物を使って、男たちを虜にしていた事。
それによってテオドールを始め、数組の婚約破棄に発展しかけたが、プリシラが禁術を使っていた、とプリシラ陰謀説が学園及び関係者一同に公表された。
そしてプリシラが魅了の力を失った事で、罠に掛かった男子生徒たちが正気に戻ったとして婚約破棄は無かった事になった。
プリシラは犯罪者の焼印を額に入れられて国外追放となったそうだ。
テオドールの婚約者アネット嬢はアメリアに
『やっぱり悪役令嬢は勝つんですね!』
と、よく分からない言葉を言いながら、涙ながらに感謝の言葉を述べていた。
後日、アネット嬢とのお茶会で、アネット嬢は三歳の頃に前世の記憶を思い出し、この世界が『スタ☆ラブ』という乙女ゲームの世界であると気付いた、と打ち明けられた。
『スタ☆ラブ』というゲームはシリーズ化され数作販売されており、2作目はこのアトラータ帝国が舞台で、ヒロインがプリシラの筈だった、とアメリアは聞かされた。
けれど、前世のアメリアはゲームには全く興味が無かった。アネットに熱心に語られてもさっぱり意味が分からなかった。
そしてレンとリアの結婚問題は、アメリアがテオドールをプリシラの魔の手から救った事と、ロレアル国のディバイン公爵家の令嬢である事の確認が王族間で取れた為、問題無く承認された。
皇子妃という大役から逃げたかったアメリアの気持ちとは裏腹に、満場一致で承認されてしまった。
けれど、危うく『国を救った英雄』の称号まで可決されそうになって、それを阻止する為に全力で王妃様たちを説得したアメリアに『皇子妃を辞退する』余力は残っていなかった。
それにレンの追加のプレゼンがアメリアの心をぐっと捉えた。
「皇子妃になれば、王家の影を使いたい放題だ。リアがよく話してくれたソフィーの近況だってあっという間に調べてくれる。
何だったら一か月は掛かる手紙の受け渡しも影を使えば、二週間。いや、一週間で届く。だから頻繁に連絡を取り合えるぞ。」
これを密かに聞いていた王家の影たちは『そんな使い方は無い』と呟いていたが、その後、安心安全、秘密厳守の飛脚便へとシフトして国内外を飛び回る活躍をする事となり、きっかけをくれたアメリアに深く感謝したという。
レンとアメリアの婚姻の許可が降りた二週間後、アメリアはレン経由で影からの調査報告書を受け取った。
『ソフィーがアメリアの代わりにガルバ伯爵の下に向かった。』
という下りでアメリアは報告書をグシャリと握り潰したが、レンに促されて続きを読んだ。
そこにはガルバ伯爵領で生き生きと暮らしているソフィーの様子が記されていた。
ガルバ伯爵について誤解があった事、ガルバ伯爵の子息に見初められて結婚した事、実はソフィーがアメリアの本当の異母妹であった事。
驚いたり笑ったり報告書に嬉しそうに目を通すアメリアをレンは微笑ましく見つめていた。
影からはディバイン公爵家での過去のアメリアの扱いについての調査報告書も受け取っていたが、レンは一読するとすぐに燃やしてしまった。あまりに腹が立ったからだ。
アメリアが望めば、ディバイン公爵家の者たちを纏めて始末する心づもりもあった。
けれど、現在のディバイン公爵家の調査報告書を受け取ったアメリアは読みもせずにゴミ箱に放り投げた。『興味が無い』と言って。
だからレンは何もしない事に決めた。どうせディバイン公爵家は風前の灯だ。アメリアついてロレアル王家に確認を取ったのだから、王家もディバイン公爵家のアメリアへの所業を把握した事だろう。
それにどうやらアメリアのソフィーはガルバ伯爵家で本当の娘の様に可愛いがられているらしい。あちらはあちらで動いている事だろう。
レンは国に戻っては来たが、内政向きの性格では無い。だから今後は外交を主として友好関係である国々へ数年単位で赴いてアトラータ帝国を支えていくつもりだ。
それにはきっと自由で居たがるアメリアも受け入れてくれるだろう。
そんな事を考えていると、アメリアがじぃっとレンを見つめている事に気がついた。
「どうした、リア?」
まだ俺の伴侶となる事に納得出来ていないのだろうか。
「あのね、レン。ソフィーに会いに行きたいの。」
「そうだな。落ち着いたら会いに行こう。」
アメリアの望む事なら何でも叶えてあげたい。これからの事を父上たちや大臣たちと調整をして半年以内には何とか時間が取れるだろうか。
レンが頭の中で考えていると、リアがまだ何かを言いたそうにしている。
「大丈夫だ。必ず連れて行くから。」
安心させる為にそう言えば、リアはレンから少し視線を逸らして言った。
「あのね。ソフィーの居る場所まで馬車で二か月くらい掛かるじゃない?こ、子どもが出来たりしたら馬車旅も出来なくなるから、その前にソフィーに会いに行きたいの。」
リアの言葉の意味を理解するのに三十秒。
リアを抱きしめて三分でレンはロレアル国への最短の道のりを考える。
そうしてレンは三日後にはリアを連れてロレアル国へ向かっていた。
それは誰もが驚く黒塗り馬車の単騎一気駆け。片道二か月掛かる道のりを行きは一か月、帰りは驚異の三週間。
出発前に簡易な婚約式を挙げ、帰還後、僅か一か月で結婚式を挙げた時には既に周囲はグレンフォードのアメリアへの執着に呆れ果てていた。
ロレアル国滞在中、アメリアとソフィーは片時も離れる事なく過ごしていた。それはそれぞれのパートナーが嫉妬しかける程に。
二人はまたの再会を約束して涙の別れをしたが、五年後、レンの仕事でロレアル国への赴任が決まると互いの子どもも含めて家族同士での付き合いが始まる事となる。
レンとアメリアは婚姻後、甘い甘い新婚生活を二年ほど送り、アメリアが色々な意味で疲弊しかけた頃にアメリアの懐妊が分かった。
奇しくも一年前に結婚したテオドールとアネットの間にも子が出来た事が分かる。
お互いに大きなお腹でお茶会をするアメリアとアネットはそろそろ臨月を迎える。
「私のお腹も大きくて前に突き出している感じですけれど、アメリア様のお腹も随分大きいですわねぇ。」
「あれ、言ってなかったっけ?医師の見立てだと、どうやら双子みたいなんだよねー。」
あっさりと言ったアメリアの言葉にアネットは目大きく瞬いたかと思うと、瞳をキラキラと輝かせた。
「まぁっ!やっぱり!!アメリア様っ、双子のお名前はもうお決めになりましたの?
もしかしてラン ー。」
興奮してアメリアに近づいてきたアネットの口に、アメリアはスッと手を当て口を閉じさせる。
アネットの言いたい事は何となく分かる。けれど言葉の続きをアメリアが知る必要は無い。
だって私は乙女ゲームを知らないから、私も私の家族にも関係のない事だ。
だからこれからも、知らない私は好きに生きるのだ。
END
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最後まで拙作にお付き合い下さりありがとうございました。
オマケ 1 < キャロラインのその後 >
ディバイン公爵家の爵位返納の際に、サッサとダニエルに見切りを付けて、他の貴族との再婚を目論むも誰からも相手にされず、数年後、アメリアがアトラータ帝国の王子の伴侶となったのをどこからか聞きつけてアトラータ帝国に乗り込む。
城門で『第二皇子妃の身内だ。』『これまで育ててやった恩を返せ!』などと騒ぎ立て、偶然通りかかったレンの逆鱗に触れ、『第二皇子妃の家族を騙った不届き者』として捕らえられて百叩きの刑に。そして国外に放り出されてその後は生死不明。
オマケ 2 < ディバイン公爵のその後 >
ソフィーをガルバ伯爵(前伯爵にでしたが)の後妻にと送った事で、王家に公爵家の所業を報告され、アトラータ帝国からもアメリアについて確認があった為、本人たち(ディバイン公爵家)の知らないところで貴族たちに事実が知られる事に。
夜会等に出席する度に冷たい視線とコソコソと噂される事に悩まされる様になり、借金も返せない状態だった為、爵位を返納し借金を相殺し社交界から離れる事で貴族たちからの視線から逃れられたと安堵する。
が、常に人からの視線を感じ続けて(被害妄想も含む)『どうしたら人々の目から逃れられるのか。』と悩み続け、『アメリアとソフィーの公爵を見ていた目』をふと思い出す。
彼女たちだけは自分と同じ目をして見てくれていたじゃないか。きっと彼女たちなら自分を見ないで(居ない者扱いして)いてくれる!
という思考に陥り、ソフィーに会いにガルバ領に突撃、即捕縛される。公爵の話を聞いた伯爵たちに、『それならば』と、一度踏み入れたら二度と出て来られないという人が近寄らない森に連れて行かれる。
人が居ない事に喜んで森に入った公爵だったが、鳥や動物たちの視線に気づいて(妄想)視線から逃れようと森の奥深くへと闇雲に走り続けて、、、、、。
という末路でした。
因みに公爵家の使用人たちは、自分の事しか考えていない公爵夫妻が次の仕事先を紹介する事も紹介状を出す事もせず、公爵家の噂を知っている貴族たちが雇う訳もなく路頭に迷う者が続出、です。
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一話完結モノを書いてみたくて練習を兼ねて書き始めた作品でしたが、アメリアの後日談に至っては前・中・後編にしたにも関わらず、後編は一万文字を超えてしまいました。若干、削りましたがそれでも約一万文字に。
思い通りに書き進めるのは難しいですね~。これからも精進したいと思います。
この作品では初めてHOTランキング1位を獲得し、お気に入り登録も今までにない数になっていてとても驚いています。
あまりの反響に尻込みしてしまいましたが、沢山の人に読んで頂けた事は大変嬉しくこれからの作品投稿の励みにもなっております。
本当にありがとうございました。
しずもり
長めの文章ですが、最終話ですのでもう少しお付き合い下さいませ。
*公爵夫妻たちの末路を最後(欄外)にオマケで追加しました。(5/20)
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付き合うようになってもアメリアとレンの関係は以前と然程変わらなかった。それはレンの涙ぐましい努力と忍耐力があってこそだった。
一緒に旅に出て二年、付き合ってもうすぐ一年のこの二人はキスやハグ止まりである。最近はほんのちょっと深い口づけをするようにはなってきたが、それ以上の進展は無い。
貴族ならば女性は婚前交渉不可は当たり前。婚約者同士なら有りなのだろうが、万が一、婚約破棄になどなろうものなら乙女では無くなったご令嬢の次の縁談は、、、推して知るべし。
平民ならばその辺は割と問題は無いのだが、それでも自分の妻になる女が乙女である事を望む男が多いのも、推して知るべし。
とは言え、アメリアは『結婚まではー』などと思っている訳ではない。けれど、体を繋いだ場合のリスクが怖いのだ。
別にレンが体を繋いだら用済みとばかりにあっさりとリアを捨てる様な男だと思っている訳では無い。
前世の性の知識はバッチリあるのだが、この世界の閨ごとについてはアメリアはよく分かっていなかった。
だから避妊の仕方も妊娠・出産についてもよく知らない。だって教わる機会も誰かに聞く機会も無かったのだから。
万が一、旅の途中で妊娠なんて事になったらどうなるのか。
出産する時はどうするの?まさか自宅出産?無理っ、考えるだけで怖いんですけど!
という不安があった。そんな不安をレンに話すのも流石のアメリアでも憚られた。
まだ付き合って半年の二人には結婚の予定がある訳でもなかったから。
そう思っていたのはアメリアだけだったのだが、レンの方でも『まだ大人の関係になるのは、、、。」という気持ちを尊重するつもりだった。
相手はまだ十八歳だ。八歳上のレンは二十六歳で、確かに我慢するのは色々辛い。
四六時中、行動を共にしているのだ。色々と、本当に色々と主に体の方が辛い訳だが、貴族社会では令嬢の処女性が重要視されている、と思えば我慢も出来る。
それにレンにはレンの事情もある。
アメリアがそろそろ旅する事にも満足して、定住を考え始めた時、レンは『チャンスだ!』と思った。
今が外堀を完全に埋めきる絶好の機会だ、と。
何なら高い高い塀を築いてリアに知られぬように囲ってしまいたいぐらいには、レンにとってはリアは大事な存在となっていた。
周辺国で二人がまだ行っていない国はアトラータ帝国だけだった。
「次のアトラータ帝国の王都は水の都と呼ばれていて、自然豊かで景観もとても美しい場所だ。
それに各国の商品が集まる流通にの要とも呼ばれるほど交易が盛んで、王都に居るだけで周辺国の特産品を存分に食べられるんだぞ。」
リアは旅先の観光名物の料理を食べるのを毎回楽しみにしていた。趣味と言っても良い。だから王都ガレリオをアメリアはきっと気に入る筈だ。
「もし気に入ったらそこに定住するのも良いかも知れないな。
王都から馬車で半日行った所にはダンジョンもあるんだ。そのダンジョンでしか取れない珍しくて美味しいフルーツもあるそうだ。
リアの好きな限定品てやつだな。」
「へぇ~、そうなんだ。確かに気に入ったら定住するのも良いかもね。」
良しっ!餌に食いついた!
内心、ニンマリとしながらもリアに本心がバレない様にレンは平静を装った。何しろ恋人同士にはなったものの、二人の間にはまだ温度差があるとレンは二人の関係をそう分析している。
リアは『面倒だ。』と思ったら、さっさと居なくなりそうで油断は出来ない、とレンは常々警戒していた程だった。
アトラータ帝国に入国すると遠方に小さく白い山の様な物が見える。
「あれはアトラータ帝国の王城だな。あの辺りが王都ガレリオだよ。」
リアの視線に気付いたレンが言った。遠くに見える城はこの距離からでも白いと分かる。
城は旅人にとって目印の様に、乗り合い馬車に乗っている間もずっと遠くに見えていた。王都に近づくにつれ、白い山の様に見えていた城は次第にはっきりとその輪郭を現してきた。
王都のシンボル的存在の王城の背後には、王族が住む為の宮殿が幾つか建っていた。
高い塀に囲まれた王都に入るには門で身分証の確認をする必要がある。乗り合い馬車に乗っていた乗客も一旦降りる。
問題なく門番の許可をもらい王都に足を踏み入れると、二人の前にスッと一台の黒塗りの馬車が停まった。
「リア、これがS級冒険者の特権だ。」
レンはにこやかにそう言って、アメリアを馬車に乗るように促した。
乗り合い馬車よりも段違いに良い馬車の乗り心地にリアは喜んだ。機嫌の良いリアにレンはさりげなく告げる。
「実は俺、このアトラータ帝国の生まれなんだよ。久しぶりの帰郷だからギルドに行く前に実家に寄ってもいいか?」
そう言えば、レンの家族の話を聞いた事が無かったな、とアメリアはふと思った。
あまり自分の事を話したがらないアメリアに遠慮してか、レンはリアの家族の事を尋ねようとはしなかったし、遠慮してか自分の話もしようとはしなかった。
それはアメリアを気遣っての事、とアメリアはそう思ってその気配りに好感を持っていたが、レンにはレンの事情があったからだと、この数時間後にアメリアは知る事となる。
馬車は段々、王都の中心に近づいてきて、レンの実家は随分と良い立地の場所にあるんだな、と思い、アメリアはふとディバイン公爵家の屋敷を思い出す。
どの国でも大抵、王都の中心地は貴族の屋敷やタウンハウスが建っているんじゃなかったっけ?もしかしてレンの実家って貴族?
アメリアは嫌な予感がして、上機嫌で彼女の隣に座るレンを見た。
「ねぇ、レン?レンの実家って、貴ー。」
アメリアが言いかけた時に不意に馬車が停まった。外で何やら話す声が聞こえると馬車は再びゆっくりと動き出した。
けれど先程と違って外から街の賑やかな喧騒は聞こえてこない。いよいよ現実になりそうな嫌な予感の気配にアメリアが心の中で逃げの姿勢になった時、馬車は停まり扉の外に人の気配がした。
「さぁ、リア。実家に着いたぞ。先ずは湯船に浸かって旅の疲れを癒やしてくれ。」
そう言ってアメリアに向けるレンの笑顔がこの上なく嬉しそうで、それが逆にアメリアの不安を煽った。
だが、アメリアが何か言う前に、扉は開きレンは馬車を降りてからアメリアの手を取ってアメリアを抱き寄せるように、いや、ホールドするかの様にガッチリと腰に手を回して馬車から降ろした。
アメリアは馬車からは降りたが、レンはアメリアを下ろす事なくそのまま歩き出す。周囲には侍女や従僕のような者たちや騎士も居る。それらの者たちが表情一つ変えずにレンの後ろにつき従う。
そしてアメリアが立て抱きにされたまま連れて来られた目の前には、青を基調としているらしい煌びやかな宮殿、後方には入国した時から目にしていた白亜の城が聳え立っていた。
!!!!!!!!!
「帰る、、、、。」
ボソリと呟いたアメリアの声は聞こえている筈なのに、誰の耳にも届かなかった様でレンたち一行は宮殿の中に歩みを進める。
そうしていつかの様にアメリアは侍女たちによってジャブジャブと洗われて、身支度を整えられると王子様の格好をしているレンに引き渡された。
そして気付けばアメリアは謁見の間に居たのだった。
「・・・・・・・ダマサレタ。」
小さく呟くアメリアは、揃って厳しい顔つきをしている周囲の人たちを見渡した。
「グレン、三年振りに帰って来たと思ったら、一体どういう事なの?」
不意に玉座の片方に座る女性が眉を顰めて責める様な口調で言った。
「挨拶も無しにいきなりですか?先触れの手紙は送っていたはずですが?」
私、全然歓迎されていないよね?いや、私も歓迎されたくて此処に来た訳でも無いし来た理由も分かってないんだけど?
「・・・グレンフォードよ。いきなり『嫁を連れて帰る』の一言しか書いていない手紙を先触れと言うのか?
それでなくとも今はテオドールの事で城では混乱を極めているというに、、、。」
どうやら厳しい顔をしていたのは、レンたちだけの所為では無いらしい。
しかし、『嫁を連れて帰る』とは一体、どういう事か?
アメリアが説明を求めて隣に立つレンを見上げれば、レンはニッコリ笑ってからアメリアの前で跪いた。
「リア、俺と結婚しよう!」
結婚して下さい、でもなく結婚してくれでもなく、そんな話を一度も二人でした事が無いのにいきなり『結婚しよう!』とは何なんだ!?
しかも親には『嫁を連れて帰る』と連絡済みとは順番がめちゃくちゃではなかろうか。
そんなプロポーズなど勿論、
「いえ、しま「リア!ありがとう!一生大事にするよ!」・・・・。」
レンはアメリアが全てを言う前にガバリとアメリアを抱きしめる。
『オイ、コラっ!これは一体、何なんだ!?』
アメリアだけじゃなく、謁見の間に居た全員が、レンの公開プロポーズからの力技に内心同じ事を思った筈だ。
「レン、、、後で殴る。」
しかし、ボソリと呟いたアメリアの言葉にレンは都合良く了承の意と受け取った。
そうして周囲の困惑を気にせず、アメリアの腰に手を回してガッチリとホールドすると、レンは皇帝陛下たちの方に向き直った。
「という事で、わたしたちは結婚する事になりました。ところでテオドールが何かしたんですか?」
という事でも何もないだろう!
というのが全員の総意だったろうが、レンのあまりにも開き直った態度に皇后たちももはや返す言葉も無い。
それより何より、第三皇子のテオドールのやらかしで、宮殿はてんやわんやの大騒ぎで事態収拾に頭を悩ませている所だったのだ。
そこへ『ちょっと外の世界を見に行ってくる。』と軽いノリで冒険者稼業を楽しむべく出て行った第二皇子グレンフォードの三年振りの帰国が『嫁を連れて帰る』だ。
皇后で無くとも厳しい顔つきになるのは仕方がなかった。しかもどうやら第二皇子の相手も平民か、となれば、宰相をはじめ、大臣たちも渋い顔の一つや二つもするだろう。
侍女によって全身整えられたアメリアは薄化粧に伸びた髪をハーフアップスタイルで纏められていて目を見張るほどの美少女だ。
しかし、質素だが品があり丈が足首まであるワンピースを着ているアメリアの、この服装は平民が着る衣装でもあった。
「テオドールが昨日、学園の卒業パーティーで側近候補たちとともに婚約者のアネット嬢に婚約破棄を言い渡したのだ。平民出身の特待生の女生徒を横に侍らせてな。」
皇帝は口の中に苦虫が何匹居るのか?と思うぐらいの表情で答える。
「はっ?確かテオドールは幼少の頃からアネット嬢一筋だったでしょう?」
「そうよ。それなのに平民の女生徒が半年前に編入してきてから、あの子はおかしくなってしまったのよ!」
皇后が眉間に青筋立てて吐き捨てるように言った時、何やら部屋の外が騒がしくなったと思ったら、バンっと物凄い音を立てて扉が開いた。
「きゃー!!グレン様っ!会いたかったですぅ~。」
「ま、待ってよ、プリシラ。この部屋は勝手に入っちゃダメだよっ。」
突然の乱入者に部屋に居た全員が呆気に取られた。
皇帝が誰かと会っている筈の謁見の間に、不敬にも乱入してきたのは、ピンク髪にピンクの瞳の少女とレンの様な服装をした青年だった。
「テオっ!一体、これはどういう事なのっ!」
「は、母上、申し訳ありません。兄様が戻ったと聞いたプリシラが急に、、、、。」
皇后の叱責にテオと呼ばれた青年は縮こまりながらもボソボソと声を出す。そんな様子など、お構い無しに少女はレンの側までやって来たかと思ったらピョンピョンと飛び跳ねている。
え、何だ、この混沌な状態は。
割と物事に動じないアメリアさえ、今の状況に頭が追いつかない。
「あのっ、初めましてっ、グレン様。私、貴方のプリシラですっ。キュルンっ。」
「・・・・・・・・・・・。」
心なしか、レンのアメリアの腰を抱く手に力がこもった気がする。
「えへへへ、グレン様に早く会いたくて、私、攻略を頑張っちゃいましたぁ。
スチルで見た通り、黒髪赤い瞳で物凄くイケメンですねっ。キュルルンっ。」
何、この子。語尾の言葉って漫画でよくある背景に書かれた効果音?それを自分で言っちゃうの?
アメリアは盛大にどん引いた。どん引きしたどさくさに紛れてこの場から去りたかったがレンの右手がアメリアの腰から離れる事はない。
「ちょ、ちょっと、プリシラ!君は僕の恋人になってくれるんだろう?」
テオドールがレンとプリシラの間に割って入ろうと情けない声を出してやって来た。
「ちょっとぉ~、テオったら邪魔しないでよ!
テオはシークレットキャラのグレン様に会う為の踏み台だったのよ。
もう用は済んだから悪役令嬢のアネットの所に戻ればぁ。キャハっ。」
このプリシラという美少女はさっきから随分と失礼な事を言っている。しかもこの国の皇子に向かって。不敬罪というやつになるんじゃなかろうか?
「あの、プリシラ、さん?今は私たちが皇帝陛下と謁見している最中ですので、レンとの話は後にしてくれませんか?」
「はぁ~?ちょっとアンタ何を言って、、、、。
てか、アンタっ!!
悪役公爵令嬢アメリア・ディバインがどうして此処にいんのよっ!」
プリシラは振り返ってアメリアの方を向くと、目を大きく見開いて叫んだ。
え?どうしてこの子が私の名前を知っているの?
アメリアは驚いたが、レンを始め謁見の間に居た者たちも皆驚いていた。
アメリア・ディバイン公爵令嬢。
令嬢の名前に聞き覚えは無いが、ディバイン公爵家には聞き覚えがある。
アトラータ帝国はロレアル国と長く友好関係を築いてきた。他国を跨いでの付き合いではあるが、数代前に皇女がロレアル国の王太子に嫁いで以降、より一層交流が盛んになった。
だから王族は勿論、大臣たちもロレアル国の高位貴族の家名は頭に入っていた。公爵家なら尚更だ。
「まさか、ディバイン公爵家のご令嬢だったのか?」
「いやしかし、ディバイン公爵家にそんな名の者は。」
周囲が騒つく中で、更にプリシラが爆発発言をした。
「アメリア・ディバイン、、、。
あれっ?ガルバ伯爵の後妻になったんだからアメリア・ガルバ?
んん、でもアメリアって散々、ガルバ伯爵に嬲られて、それで伯爵の息子を誑かして悪役令嬢になって学園に戻って、、、。
ああ、確か公式じゃアメリア・ディバインだったわ。」
プリシラのこの大きな独り言に一番大きく反応したのはレンだった。
「はっ?ガルバ伯爵?嬲られた、、、、?」
ブツブツ呟きながら殺気をただ漏れにさせているレンの頭に、アメリアは手刀を食らわす。
「レンっ!後妻になるのが嫌だからその日の内に家出したって、私が言ったのを忘れたの?」
そう言えばそうだった、とレンは落ち着きを取り戻しながら、リアを貶める発言をしたプリシラをひと睨みする。
「きゃっ、グレン様に見つめられちゃった。トゥンクっ。」
「誰がお前を見つめるものか。俺が見つめるのはリアだけだ。」
そう言ってレンはプリシラに見せつけるようにアメリアを抱き寄せる。
「えぇっ!?何言っちゃってんの、グレン様!
ん、あれっ?グレン様には魅了アイテムが効いてない?
え?何で?
私に見つめられたら魅了の力で、男はみぃんな私の虜になる筈なのにぃっ!」
プリシラの自爆発言は留止まる事が無い。この魅了の力に即座に反応したのは皇后たちだった。
もしやテオドールがこの女に入れ込んだのは、魅了という禁術のせいか!?
「あぁっ!!もしかしてアメリアの所為?
アンタ、『スタ☆ラブ』の1作目の中の魅了アイテムをヒロインから奪ってグレン様を攻略しちゃったの?
酷いっ!グレン様は『スタ☆ラブ 2』のシークレットキャラなのよ?
私のなんだからグレン様を返してよっ!」
プリシラがアメリアに詰め寄ってくるが、一体全体この宇宙人は何を言っているんだろうか?
何か本当に色々と面倒だ。
低いテンションながらプチ~ンとアメリアの堪忍袋の緒が切れた。
「プリシラ、うるさい。」
唾がかかりそうなほど顔を近づいてくるプリシラに、アメリアは渾身の一撃、デコピンをかました。
その強烈な一発にプリシラは後ろへとのけ反って倒れそうになる。慌ててアメリアはプリシラの手を取って自分の方に引き寄せた。
その時、プリシラの両の瞳からキラキラと光る小さな何かが落ちた。落ちたと同時にプリシラの足がそれを踏んでしまった。
「きゃー!!魅了アイテムのピンクのコンタクトがぁ!
アメリアっ、どうしてくれんのよ、割れちゃったじゃないっ。」
琥珀色の瞳をしたプリシラの言葉も皇后たちは聞き逃さなかった。
アメリアは、アメリアの渾身の一撃に体勢は崩したものの、痛がるどころか気にもしないで『魅了だ、コンタクトだ。』と騒いでいるプリシラに只々驚いていた。
こうしてアメリアのよく分からない内に騒動は一挙に終結したらしい。
まず、第三皇子テオドールの件は、プリシラが魅了アイテムという物を使って、男たちを虜にしていた事。
それによってテオドールを始め、数組の婚約破棄に発展しかけたが、プリシラが禁術を使っていた、とプリシラ陰謀説が学園及び関係者一同に公表された。
そしてプリシラが魅了の力を失った事で、罠に掛かった男子生徒たちが正気に戻ったとして婚約破棄は無かった事になった。
プリシラは犯罪者の焼印を額に入れられて国外追放となったそうだ。
テオドールの婚約者アネット嬢はアメリアに
『やっぱり悪役令嬢は勝つんですね!』
と、よく分からない言葉を言いながら、涙ながらに感謝の言葉を述べていた。
後日、アネット嬢とのお茶会で、アネット嬢は三歳の頃に前世の記憶を思い出し、この世界が『スタ☆ラブ』という乙女ゲームの世界であると気付いた、と打ち明けられた。
『スタ☆ラブ』というゲームはシリーズ化され数作販売されており、2作目はこのアトラータ帝国が舞台で、ヒロインがプリシラの筈だった、とアメリアは聞かされた。
けれど、前世のアメリアはゲームには全く興味が無かった。アネットに熱心に語られてもさっぱり意味が分からなかった。
そしてレンとリアの結婚問題は、アメリアがテオドールをプリシラの魔の手から救った事と、ロレアル国のディバイン公爵家の令嬢である事の確認が王族間で取れた為、問題無く承認された。
皇子妃という大役から逃げたかったアメリアの気持ちとは裏腹に、満場一致で承認されてしまった。
けれど、危うく『国を救った英雄』の称号まで可決されそうになって、それを阻止する為に全力で王妃様たちを説得したアメリアに『皇子妃を辞退する』余力は残っていなかった。
それにレンの追加のプレゼンがアメリアの心をぐっと捉えた。
「皇子妃になれば、王家の影を使いたい放題だ。リアがよく話してくれたソフィーの近況だってあっという間に調べてくれる。
何だったら一か月は掛かる手紙の受け渡しも影を使えば、二週間。いや、一週間で届く。だから頻繁に連絡を取り合えるぞ。」
これを密かに聞いていた王家の影たちは『そんな使い方は無い』と呟いていたが、その後、安心安全、秘密厳守の飛脚便へとシフトして国内外を飛び回る活躍をする事となり、きっかけをくれたアメリアに深く感謝したという。
レンとアメリアの婚姻の許可が降りた二週間後、アメリアはレン経由で影からの調査報告書を受け取った。
『ソフィーがアメリアの代わりにガルバ伯爵の下に向かった。』
という下りでアメリアは報告書をグシャリと握り潰したが、レンに促されて続きを読んだ。
そこにはガルバ伯爵領で生き生きと暮らしているソフィーの様子が記されていた。
ガルバ伯爵について誤解があった事、ガルバ伯爵の子息に見初められて結婚した事、実はソフィーがアメリアの本当の異母妹であった事。
驚いたり笑ったり報告書に嬉しそうに目を通すアメリアをレンは微笑ましく見つめていた。
影からはディバイン公爵家での過去のアメリアの扱いについての調査報告書も受け取っていたが、レンは一読するとすぐに燃やしてしまった。あまりに腹が立ったからだ。
アメリアが望めば、ディバイン公爵家の者たちを纏めて始末する心づもりもあった。
けれど、現在のディバイン公爵家の調査報告書を受け取ったアメリアは読みもせずにゴミ箱に放り投げた。『興味が無い』と言って。
だからレンは何もしない事に決めた。どうせディバイン公爵家は風前の灯だ。アメリアついてロレアル王家に確認を取ったのだから、王家もディバイン公爵家のアメリアへの所業を把握した事だろう。
それにどうやらアメリアのソフィーはガルバ伯爵家で本当の娘の様に可愛いがられているらしい。あちらはあちらで動いている事だろう。
レンは国に戻っては来たが、内政向きの性格では無い。だから今後は外交を主として友好関係である国々へ数年単位で赴いてアトラータ帝国を支えていくつもりだ。
それにはきっと自由で居たがるアメリアも受け入れてくれるだろう。
そんな事を考えていると、アメリアがじぃっとレンを見つめている事に気がついた。
「どうした、リア?」
まだ俺の伴侶となる事に納得出来ていないのだろうか。
「あのね、レン。ソフィーに会いに行きたいの。」
「そうだな。落ち着いたら会いに行こう。」
アメリアの望む事なら何でも叶えてあげたい。これからの事を父上たちや大臣たちと調整をして半年以内には何とか時間が取れるだろうか。
レンが頭の中で考えていると、リアがまだ何かを言いたそうにしている。
「大丈夫だ。必ず連れて行くから。」
安心させる為にそう言えば、リアはレンから少し視線を逸らして言った。
「あのね。ソフィーの居る場所まで馬車で二か月くらい掛かるじゃない?こ、子どもが出来たりしたら馬車旅も出来なくなるから、その前にソフィーに会いに行きたいの。」
リアの言葉の意味を理解するのに三十秒。
リアを抱きしめて三分でレンはロレアル国への最短の道のりを考える。
そうしてレンは三日後にはリアを連れてロレアル国へ向かっていた。
それは誰もが驚く黒塗り馬車の単騎一気駆け。片道二か月掛かる道のりを行きは一か月、帰りは驚異の三週間。
出発前に簡易な婚約式を挙げ、帰還後、僅か一か月で結婚式を挙げた時には既に周囲はグレンフォードのアメリアへの執着に呆れ果てていた。
ロレアル国滞在中、アメリアとソフィーは片時も離れる事なく過ごしていた。それはそれぞれのパートナーが嫉妬しかける程に。
二人はまたの再会を約束して涙の別れをしたが、五年後、レンの仕事でロレアル国への赴任が決まると互いの子どもも含めて家族同士での付き合いが始まる事となる。
レンとアメリアは婚姻後、甘い甘い新婚生活を二年ほど送り、アメリアが色々な意味で疲弊しかけた頃にアメリアの懐妊が分かった。
奇しくも一年前に結婚したテオドールとアネットの間にも子が出来た事が分かる。
お互いに大きなお腹でお茶会をするアメリアとアネットはそろそろ臨月を迎える。
「私のお腹も大きくて前に突き出している感じですけれど、アメリア様のお腹も随分大きいですわねぇ。」
「あれ、言ってなかったっけ?医師の見立てだと、どうやら双子みたいなんだよねー。」
あっさりと言ったアメリアの言葉にアネットは目大きく瞬いたかと思うと、瞳をキラキラと輝かせた。
「まぁっ!やっぱり!!アメリア様っ、双子のお名前はもうお決めになりましたの?
もしかしてラン ー。」
興奮してアメリアに近づいてきたアネットの口に、アメリアはスッと手を当て口を閉じさせる。
アネットの言いたい事は何となく分かる。けれど言葉の続きをアメリアが知る必要は無い。
だって私は乙女ゲームを知らないから、私も私の家族にも関係のない事だ。
だからこれからも、知らない私は好きに生きるのだ。
END
============================================
最後まで拙作にお付き合い下さりありがとうございました。
オマケ 1 < キャロラインのその後 >
ディバイン公爵家の爵位返納の際に、サッサとダニエルに見切りを付けて、他の貴族との再婚を目論むも誰からも相手にされず、数年後、アメリアがアトラータ帝国の王子の伴侶となったのをどこからか聞きつけてアトラータ帝国に乗り込む。
城門で『第二皇子妃の身内だ。』『これまで育ててやった恩を返せ!』などと騒ぎ立て、偶然通りかかったレンの逆鱗に触れ、『第二皇子妃の家族を騙った不届き者』として捕らえられて百叩きの刑に。そして国外に放り出されてその後は生死不明。
オマケ 2 < ディバイン公爵のその後 >
ソフィーをガルバ伯爵(前伯爵にでしたが)の後妻にと送った事で、王家に公爵家の所業を報告され、アトラータ帝国からもアメリアについて確認があった為、本人たち(ディバイン公爵家)の知らないところで貴族たちに事実が知られる事に。
夜会等に出席する度に冷たい視線とコソコソと噂される事に悩まされる様になり、借金も返せない状態だった為、爵位を返納し借金を相殺し社交界から離れる事で貴族たちからの視線から逃れられたと安堵する。
が、常に人からの視線を感じ続けて(被害妄想も含む)『どうしたら人々の目から逃れられるのか。』と悩み続け、『アメリアとソフィーの公爵を見ていた目』をふと思い出す。
彼女たちだけは自分と同じ目をして見てくれていたじゃないか。きっと彼女たちなら自分を見ないで(居ない者扱いして)いてくれる!
という思考に陥り、ソフィーに会いにガルバ領に突撃、即捕縛される。公爵の話を聞いた伯爵たちに、『それならば』と、一度踏み入れたら二度と出て来られないという人が近寄らない森に連れて行かれる。
人が居ない事に喜んで森に入った公爵だったが、鳥や動物たちの視線に気づいて(妄想)視線から逃れようと森の奥深くへと闇雲に走り続けて、、、、、。
という末路でした。
因みに公爵家の使用人たちは、自分の事しか考えていない公爵夫妻が次の仕事先を紹介する事も紹介状を出す事もせず、公爵家の噂を知っている貴族たちが雇う訳もなく路頭に迷う者が続出、です。
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一話完結モノを書いてみたくて練習を兼ねて書き始めた作品でしたが、アメリアの後日談に至っては前・中・後編にしたにも関わらず、後編は一万文字を超えてしまいました。若干、削りましたがそれでも約一万文字に。
思い通りに書き進めるのは難しいですね~。これからも精進したいと思います。
この作品では初めてHOTランキング1位を獲得し、お気に入り登録も今までにない数になっていてとても驚いています。
あまりの反響に尻込みしてしまいましたが、沢山の人に読んで頂けた事は大変嬉しくこれからの作品投稿の励みにもなっております。
本当にありがとうございました。
しずもり
この作品は感想を受け付けておりません。
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