18 / 25
レンとリアの旅 〜過去編〜
リア、ライバル現る!? 1
リアは機嫌が良かった。いや、上機嫌である。
隣国ラクスの街ダフではダンジョンに入れず残念だった。だが、後から冒険者ギルドのお姉さんが有益な情報を教えてくれた。
ダフから東へ馬車で二日行ったところに一年ほど前に、ダンジョンが発見されたという話を聞いたからだ。
一年前?ダンジョンを発見?
それは凄い発見なのではないだろうか?
言ってしまえば、エジプトで新たなピラミッドが発見されたとか、そこまでではなくとも戦国時代の有名武将が建てたとされる城の土台が発掘されたと新聞に載るぐらいには凄いことではなかろうか?
それなのに何故、レンはその事を知らなかったのか?
レンは冒険者が誰もが憧れるS級冒険者ではなかったのか?
曲がりなりにも、アメリアに冒険者を舐めていると怒り、冒険者ギルドで指導担当者を買ってでるぐらいには、冒険者である事を誇りに思っているのではなかったのか?
それなのに何故知らないのだ。
前世では新聞もテレビも普通にあって、全国ニュースから地方のニュースまで割と手軽に見て聞いて、興味のない話も何となくは知っていたりしたものだ。流石にテレビや新聞が無くとも、冒険者としてこういう情報には敏感なはずではないのか?
それなのに何故!
S級冒険者を名乗る者が、ダンジョン発見のニュースを知らぬままだったのか!
アメリアが不審そうな目でレンを見ていると、冒険者ギルドのお姉さんがフォローをしていた。
「あの、クリンの街のダンジョンはですね。地下と地上を合わせても十階層もない規模の小さいダンジョンだったんですよ。しかも出てくる魔物もF級でも倒せるような弱い魔物が多いそうです。
その為、初心者向けのダンジョンと言われてまして、D級以上の冒険者には不人気のようなんです。ですからあまり冒険者の方たちの間でも話題に上がらないみたいです」
なるほど。全国的に有名な遊園地と違って、低年齢向けの遊園地とも言えない地元民しか知らない遊園地みたいな扱いか。
それならば、この国に居なかったレンが知らなかったのは仕方のないことだろう。
「初心者向けのダンジョンか。それはアメリアには良いかもしれないな。俺もついていることだし、全階層踏破も出来るんじゃないか?」
アメリアが一人で納得していると、レンがアメリアを喜ばすような事を言うではないか。
全階層踏破。
よく分からないが、何とも魅力的な響きに聞こえる。
冒険者になって数ヶ月のアメリアは、まだまだ冒険者の事はよく分かっていない。いや、基本的な事は講習も受けているし、何しろ指導担当者がS級冒険者だったのだ。
レンもアメリアに惚れていても、それはそれ。これはこれ。指導はきっちりと行っていた。
けれど、ダンジョンはまだ未体験。ダンジョンのことは、聞き齧った内容程度のことしか知らない。だからよくは分からないが、それでも全階層踏破という言葉は、乙女心ならぬ冒険者心をくすぐる言葉という事だけは雰囲気で分かる。
そしてレンは『リアなら出来る!』と、アメリアにそう言ったのだ。
いや、言ってない。
アメリアの心の内を知っていれば、流石のレンも冷静にツッコミを入れていただろう。
しかし、割と無表情なのが通常のアメリアの表情からは、レンがアメリアの考えを読み取ることは残念ながら出来なかった。
でも、読み取れなくても大丈夫。D級の冒険者ですら見向きもしない小さなダンジョンなのだから。
アメリアとレンの心情は微妙にズレていたようだが、初心者向けの小さなダンジョンだ。問題など起こるはずもない。
レンはアメリアと仲直りが出来た上に、更にクリンの街の小さなダンジョンの情報で、アメリアの機嫌が一層良くなったことでホッとしていた。
少しばかり浮かれていたのかもしれない。何しろ、気持ちは、地獄から天国、だったので。
そう、レンは油断していたのだ。色々と。
まさか、またアメリアの気分が上機嫌から不機嫌になるような事が、レンがまだ行った事もないクリンの街で起こるなどとは。
そしてその原因がまたも自分にあっただなんて。
しかもそれが女性問題!?
クリンの街へ向かう馬車の中で、上機嫌なアメリアの様子を愛でていたレンには予想など出来るはずもなかった。
それはアメリアとて同じ事ではあったのだが。
まあ、アメリアはアメリアなので、終始あたふたとしていたのはレン一人だけ。
そういう厄介ごとがクリンの街で待ち受けていたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
隣国ラクスの街ダフではダンジョンに入れず残念だった。だが、後から冒険者ギルドのお姉さんが有益な情報を教えてくれた。
ダフから東へ馬車で二日行ったところに一年ほど前に、ダンジョンが発見されたという話を聞いたからだ。
一年前?ダンジョンを発見?
それは凄い発見なのではないだろうか?
言ってしまえば、エジプトで新たなピラミッドが発見されたとか、そこまでではなくとも戦国時代の有名武将が建てたとされる城の土台が発掘されたと新聞に載るぐらいには凄いことではなかろうか?
それなのに何故、レンはその事を知らなかったのか?
レンは冒険者が誰もが憧れるS級冒険者ではなかったのか?
曲がりなりにも、アメリアに冒険者を舐めていると怒り、冒険者ギルドで指導担当者を買ってでるぐらいには、冒険者である事を誇りに思っているのではなかったのか?
それなのに何故知らないのだ。
前世では新聞もテレビも普通にあって、全国ニュースから地方のニュースまで割と手軽に見て聞いて、興味のない話も何となくは知っていたりしたものだ。流石にテレビや新聞が無くとも、冒険者としてこういう情報には敏感なはずではないのか?
それなのに何故!
S級冒険者を名乗る者が、ダンジョン発見のニュースを知らぬままだったのか!
アメリアが不審そうな目でレンを見ていると、冒険者ギルドのお姉さんがフォローをしていた。
「あの、クリンの街のダンジョンはですね。地下と地上を合わせても十階層もない規模の小さいダンジョンだったんですよ。しかも出てくる魔物もF級でも倒せるような弱い魔物が多いそうです。
その為、初心者向けのダンジョンと言われてまして、D級以上の冒険者には不人気のようなんです。ですからあまり冒険者の方たちの間でも話題に上がらないみたいです」
なるほど。全国的に有名な遊園地と違って、低年齢向けの遊園地とも言えない地元民しか知らない遊園地みたいな扱いか。
それならば、この国に居なかったレンが知らなかったのは仕方のないことだろう。
「初心者向けのダンジョンか。それはアメリアには良いかもしれないな。俺もついていることだし、全階層踏破も出来るんじゃないか?」
アメリアが一人で納得していると、レンがアメリアを喜ばすような事を言うではないか。
全階層踏破。
よく分からないが、何とも魅力的な響きに聞こえる。
冒険者になって数ヶ月のアメリアは、まだまだ冒険者の事はよく分かっていない。いや、基本的な事は講習も受けているし、何しろ指導担当者がS級冒険者だったのだ。
レンもアメリアに惚れていても、それはそれ。これはこれ。指導はきっちりと行っていた。
けれど、ダンジョンはまだ未体験。ダンジョンのことは、聞き齧った内容程度のことしか知らない。だからよくは分からないが、それでも全階層踏破という言葉は、乙女心ならぬ冒険者心をくすぐる言葉という事だけは雰囲気で分かる。
そしてレンは『リアなら出来る!』と、アメリアにそう言ったのだ。
いや、言ってない。
アメリアの心の内を知っていれば、流石のレンも冷静にツッコミを入れていただろう。
しかし、割と無表情なのが通常のアメリアの表情からは、レンがアメリアの考えを読み取ることは残念ながら出来なかった。
でも、読み取れなくても大丈夫。D級の冒険者ですら見向きもしない小さなダンジョンなのだから。
アメリアとレンの心情は微妙にズレていたようだが、初心者向けの小さなダンジョンだ。問題など起こるはずもない。
レンはアメリアと仲直りが出来た上に、更にクリンの街の小さなダンジョンの情報で、アメリアの機嫌が一層良くなったことでホッとしていた。
少しばかり浮かれていたのかもしれない。何しろ、気持ちは、地獄から天国、だったので。
そう、レンは油断していたのだ。色々と。
まさか、またアメリアの気分が上機嫌から不機嫌になるような事が、レンがまだ行った事もないクリンの街で起こるなどとは。
そしてその原因がまたも自分にあっただなんて。
しかもそれが女性問題!?
クリンの街へ向かう馬車の中で、上機嫌なアメリアの様子を愛でていたレンには予想など出来るはずもなかった。
それはアメリアとて同じ事ではあったのだが。
まあ、アメリアはアメリアなので、終始あたふたとしていたのはレン一人だけ。
そういう厄介ごとがクリンの街で待ち受けていたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
あなたにおすすめの小説
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
本当に現実を生きていないのは?
朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。
だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。
だって、ここは現実だ。
※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
《完結》 どうぞ、私のことはお気になさらず
ヴァンドール
恋愛
実家の伯爵家では、満足に食事も取らせてもらえず毎日、使用人以上に働かされた。
そして縁談が来たと思ったら火遊び好きな侯爵の隠れ蓑としての婚姻だった。