元虐げられた公爵令嬢は好きに生きている。

しずもり

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レンとリアの旅 〜過去編〜

リアと告白 3

アメリアはレインの身の上を聞いた時、同情、ではなく素直に感心した。方向性は違うが、頭に浮かんだのは学校の校庭の片隅に薪を背負いながら本を読んでいるひっそりと立つ像だ。

正直、何を成した人なのかはサッパリ覚えていないが、小学生時代に嫌と言うほど眺め、そして話を聞いた像だ。主に怪談話で、なのだが。


だけど何故か、レインの話から連想してしまったのだ。幼いながらに母と弟妹の為に頑張っていたレインは、夢であった冒険者になったという。

素晴らしい!レインの母にとったら自慢の孝行息子だろう。

アメリアはあまり表情に出てはいなかったが、いたく感動していた。勤労少年、今は勤労青年になるだろうか。そのレインの為にレンに必死に頼み込んでいるトニーというギルド長の気持ちもよく分かる。

レインのことを息子、もしかしたら孫のように思って見守ってきたのではないだろうか。
誰の目から見たって、家族の為に頑張っている子どもレインは応援したくなるものだろう。その頑張る姿を何年も見守り続けていたのだ。人並み以上の情が移るのもおかしくはない。


だがそれに対してレンの態度はどうだろう。
私の時には頼んでもいないのに自ら指導担当者になると言い出したくせに、冒険者としての将来を期待されている若者の指導をするのを渋るとは。

相手はレンたちが滞在している間だけで良い、と言っているのだ。快く引き受けてやるのが漢というものではないのか。

何よりレンがレインの指導者になるということはー。


「どうせ今日からこの街に滞在するんだから受けてあげなよ、レン。レンが指導担当者になって私も直ぐにE級に上がれたんだもん。きっとその子もレンに教えて貰った方があっという間にE級に上がれると思う。だってレンて凄く強いだけじゃなくて教え方も上手だよ」


アメリアがそう言うと、あんなに渋っていたのに意外にもレンはあっさりと指導担当者を引き受けた。

出会いのあれやこれやや旅に出てからのレンの態度に思うことは色々あるが、レンの実力は認めている。しなければ、アメリアなどレンの足元にも及ばないという事を充分に理解していた。

アメリアだってレンの指導でE級に難なく上がれたのだ。才能があるというレインならばきっと直ぐにE級どころか、D級やC級に上がれるんじゃないだろうか。だってレインはきっと夢を叶えた今でも家族の為にこれからも頑張っていくのだろうから。


まだ会った事もないレインに、本人も気付かず内にアメリアも随分と肩入れをしていたようである。

そしてレンがレインの指導担当者に決まり、いよいよレインとの顔合わせの日となった。事前にレンの事を聞いていたレインは、S級冒険者であるレンをキラキラとした目で見ている。

そのレインがレンから隣に立っていたアメリアに視線を移すといきなり固まった。

それまでは茶色の大型犬が尻尾をブンブンと振っている姿が見えるような、体を動かしてはいないのにソワソワワクワクとした雰囲気だったのが今は置き物の犬になっている。


ん?私、何かした?

レインとは初対面だ。それは分かりきっている。なのに何故、アメリアを見た途端に固まっているのか?

困惑気味に隣のレンを見上げれば、眉間に皺が浮かぶレンは何も言わずに、アメリアが挨拶の為に外していたマントのフードをアメリアの頭に被せた。

人に挨拶するのにフードで顔を見せないのは失礼でしょ。私、常識知らずにはなりたくないんだけど!


ムッとするアメリアだったが、何故かアメリアがフードを被った途端、レインが置き物から人に戻ったので正解だったのだろう。理由は分からないけれど。


そんな初対面ではあったが、その日からレインを含めた三人で行動するようになった。日帰りで出来る案件をレインに経験を積ませる為に、冒険者ギルドでちょうど良さげな依頼を引き受ける。

レンも素直にレンを慕うレインに絆されたのか?近場の森や山で完了するような依頼を選んでいるようである。

アメリアはアメリアでせっせとレインの世話を焼いていた。


何たってレインはアメリアの弟弟子ですから!


レインはアメリアの後にレンに指導を受けているのだ。だからアメリアはレインの兄弟子になるはずだ。

レンが師匠というのはちょっとアレだが、自分が兄弟子になるのはちょっと、いやかなり嬉しい。そりゃあ、弟弟子の世話をするのは兄弟子の役目だろう。

だが、まだレンに一人前だと認められていないアメリアがレインの世話をするのは不満なのか、レンからの物言いがちょくちょく入る。

『レインと呼ぶのは紛らわしい』などとレインをレインと呼んで何が悪いのか。
アメリアには全く理解出来ないが、物言いが入る度に『僕の所為で』とレインが叱られた犬のように大きな体を丸くするので不本意だがアメリアが渋々折れる。

まぁ、そんなこんなもあったが、アメリアの目から見てもレインは日に日に冒険者として成長していっていると分かる。
息子、ではなく弟弟子の成長のなんと喜ばしい事か!

そしてある朝、いつものように冒険者ギルドでレインと落ち合うとレインの様子が少々おかしい。

何があったのか?いつもは元気いっぱい大きな声で話すレインが今日は何やらボソボソと途切れ途切れにアメリアに話しかけてくる。

冒険者ギルドはいつものように冒険者たちでごった返している。賑やかな冒険者たちの声で余計に何を言っているのか聞き取り難い。

弟弟子が何と話しているのかを辛抱強く聞いていたアメリアの耳にハッキリと聞こえてきた言葉が『~それでリアさんっ!付き合って下さいぃっ!!』だったのだ。


なんだ。レニーったら何を必死に話していたのかと思ったらか。

だからアメリアは笑顔で言ったのだ。『うん。いいよ』、と。

アメリアの言葉に喜ぶレインを見て、やっぱり一人前だと認められても、一人で依頼を受けるのは不安だったのだな、と確信する。

ここは可愛い弟弟子の為に兄弟子が手助けしてあげる場面だ。
良し!まだ一人前と認められてはいないけれど、ここは兄弟子として弟弟子のサポートを立派に務めよう!

そうしてまた笑みを浮かべてアメリアはレインに聞いた。


「それでレニー。どの依頼を受けるつもりなの?」




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