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いまだかつてこんな理不尽な婚約破棄の断罪劇があったでしょうか?
当事者のわたくしは困惑して、突然始まった断罪劇に、唖然呆然とする周囲の皆様に救いを求めるように、辺りを見回してしまいました。
私、クラリスはガーネット王国のレイブン公爵家の娘であり、この国の第二王子ルーシェ・ガーネット様の婚約者でもありました。
いえ、まだ婚約者?
でも婚約破棄を言い渡されたから元婚約者ですかしら?
何ともはっきりとしない言い方になってしまいましたのは、たった今、王立高等学園の食堂で言い渡されたルーシェ殿下による婚約破棄の宣言にあります。
いつしか流行り始めた某系恋愛小説の影響を受けて、学生自身による婚約破棄がどこの国でも『またか』と言われるほど珍しくはなくなった今日この頃。
この学園での今年何組目かの婚約破棄を言い渡されたのが私のようです。
例によって平民育ちのどこかの男爵の庶子だったご令嬢が編入してきたところ、貴族令嬢らしからぬ振る舞いに、ハートを撃ち抜かれた男子学生たちの筆頭が残念王子……いえ、ルーシェ殿下とその側近候補たちでした。
……。
男性優位の貴族社会とはいえ、庶子が多すぎません?
編入してくる元平民の庶子の皆様の多いことと言ったら、、、。
その度に骨抜きになる男子学生の多さに女子生徒一同呆れを通り越し、ついには一周回って生暖かい目で見守るようになってしまいましたわ。
そんなに貴族令嬢に不満があるなら、最初から平民と婚約すれば宜しいのではなくて?
貴族令息の婚約者を持つ女子生徒たちの共通の気持ちですわね。
けれど、その庶子であるご令嬢たちも、元々は貴族男性が平民女性との間に生まれた子どもが殆どだと思うと、もうこれは遺伝なのでしょうか?
勿論、庶子の男子生徒の編入もありますのよ?
ですが、そもそもそういう方々は、婚約者のいる女子生徒に馴れ馴れしく近付いてはきません。
たどたどしくても貴族令息らしく振る舞おうとなさるお姿に、貴族令嬢の皆様方はホッコリとした気分を味わいつつ、陰ながら愛でている程度ですの。
それなのに、、、ねぇ?
どうして元平民の女子生徒ばかりが、いつまで経っても貴族令嬢として必須の淑女教育を疎かにするだけでなく、いつまでも平民のような立ち居振る舞いをするのでしょう?
いえ、平民を貶めている訳でもありませんのよ?
平民女性だって時と場所を選び、相手に対して礼儀を弁えた言動をしている方々が殆どでしょうから。
だって王族の方々が視察やお忍びで街に出ていたって、『アレクセイ国王陛下、初めまして!お友だちになって欲しいです♪』、なんて突撃してくる平民なんていませんでしょう?
そんな場面、見たことあります?
でも、学園に編入してくる元平民の女子生徒たちは、当たり前のようにそれをやるのです。
隣に婚約者がいようが護衛騎士に止められようが、隙をついて体当たりくる姿を目の前で見せられた時はドン引きを通り越して恐怖を感じましたわ。
この方、優秀な暗殺者になれるのではなくて?
と。
だって、これが暗殺者だったら確実に殺されていますわよ?
それなのに自分の腕に豊かなお胸が当たっているからと、鼻の下を伸ばしている場合じゃないでしょう?
側近候補たちも護衛騎士たちも、微笑ましいモノを見る目をしていないで、危機意識を感じるところでしょう、そこは!
まぁ、そんな学園生活を送っていた訳ですけれど、一体、婚約破棄の理由は何だと思います?
私も人前での婚約破棄を予想していなかった訳はありません。
来るべき日に備えて、婚約者のいる女子生徒の皆様たちと防衛策を取ってはいたのです。
それが……。
それなのに、ねぇ?
「クラリス・レイブン公爵令嬢!
我が愛しのアンが貴様に虐げられるのを待っていたのに、嫌がらせをしないで無視するとは何事だ!
貴様のような下の者を人とも思わぬ傲慢な女を、我が伴侶になど出来るはずがない。よって、お前との婚約を破棄する!」
は?
はぁ~?
私に虐げられるのを待っていたとは?
嫌がらせをしない事を責められる断罪って一体!?
淑女教育と王子妃教育をみっちりと受け、完璧な貴族令嬢と言われているこの私でも、驚きの断罪理由に流石に扇子を落としそうになったわよ。
――――――――――――
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ストック少なめの見切り発車での投稿になりますので、数日したら投稿頻度が落ちると思います。
当事者のわたくしは困惑して、突然始まった断罪劇に、唖然呆然とする周囲の皆様に救いを求めるように、辺りを見回してしまいました。
私、クラリスはガーネット王国のレイブン公爵家の娘であり、この国の第二王子ルーシェ・ガーネット様の婚約者でもありました。
いえ、まだ婚約者?
でも婚約破棄を言い渡されたから元婚約者ですかしら?
何ともはっきりとしない言い方になってしまいましたのは、たった今、王立高等学園の食堂で言い渡されたルーシェ殿下による婚約破棄の宣言にあります。
いつしか流行り始めた某系恋愛小説の影響を受けて、学生自身による婚約破棄がどこの国でも『またか』と言われるほど珍しくはなくなった今日この頃。
この学園での今年何組目かの婚約破棄を言い渡されたのが私のようです。
例によって平民育ちのどこかの男爵の庶子だったご令嬢が編入してきたところ、貴族令嬢らしからぬ振る舞いに、ハートを撃ち抜かれた男子学生たちの筆頭が残念王子……いえ、ルーシェ殿下とその側近候補たちでした。
……。
男性優位の貴族社会とはいえ、庶子が多すぎません?
編入してくる元平民の庶子の皆様の多いことと言ったら、、、。
その度に骨抜きになる男子学生の多さに女子生徒一同呆れを通り越し、ついには一周回って生暖かい目で見守るようになってしまいましたわ。
そんなに貴族令嬢に不満があるなら、最初から平民と婚約すれば宜しいのではなくて?
貴族令息の婚約者を持つ女子生徒たちの共通の気持ちですわね。
けれど、その庶子であるご令嬢たちも、元々は貴族男性が平民女性との間に生まれた子どもが殆どだと思うと、もうこれは遺伝なのでしょうか?
勿論、庶子の男子生徒の編入もありますのよ?
ですが、そもそもそういう方々は、婚約者のいる女子生徒に馴れ馴れしく近付いてはきません。
たどたどしくても貴族令息らしく振る舞おうとなさるお姿に、貴族令嬢の皆様方はホッコリとした気分を味わいつつ、陰ながら愛でている程度ですの。
それなのに、、、ねぇ?
どうして元平民の女子生徒ばかりが、いつまで経っても貴族令嬢として必須の淑女教育を疎かにするだけでなく、いつまでも平民のような立ち居振る舞いをするのでしょう?
いえ、平民を貶めている訳でもありませんのよ?
平民女性だって時と場所を選び、相手に対して礼儀を弁えた言動をしている方々が殆どでしょうから。
だって王族の方々が視察やお忍びで街に出ていたって、『アレクセイ国王陛下、初めまして!お友だちになって欲しいです♪』、なんて突撃してくる平民なんていませんでしょう?
そんな場面、見たことあります?
でも、学園に編入してくる元平民の女子生徒たちは、当たり前のようにそれをやるのです。
隣に婚約者がいようが護衛騎士に止められようが、隙をついて体当たりくる姿を目の前で見せられた時はドン引きを通り越して恐怖を感じましたわ。
この方、優秀な暗殺者になれるのではなくて?
と。
だって、これが暗殺者だったら確実に殺されていますわよ?
それなのに自分の腕に豊かなお胸が当たっているからと、鼻の下を伸ばしている場合じゃないでしょう?
側近候補たちも護衛騎士たちも、微笑ましいモノを見る目をしていないで、危機意識を感じるところでしょう、そこは!
まぁ、そんな学園生活を送っていた訳ですけれど、一体、婚約破棄の理由は何だと思います?
私も人前での婚約破棄を予想していなかった訳はありません。
来るべき日に備えて、婚約者のいる女子生徒の皆様たちと防衛策を取ってはいたのです。
それが……。
それなのに、ねぇ?
「クラリス・レイブン公爵令嬢!
我が愛しのアンが貴様に虐げられるのを待っていたのに、嫌がらせをしないで無視するとは何事だ!
貴様のような下の者を人とも思わぬ傲慢な女を、我が伴侶になど出来るはずがない。よって、お前との婚約を破棄する!」
は?
はぁ~?
私に虐げられるのを待っていたとは?
嫌がらせをしない事を責められる断罪って一体!?
淑女教育と王子妃教育をみっちりと受け、完璧な貴族令嬢と言われているこの私でも、驚きの断罪理由に流石に扇子を落としそうになったわよ。
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ここまでお読みくださりありがとうございます。
ストック少なめの見切り発車での投稿になりますので、数日したら投稿頻度が落ちると思います。
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