聖女派遣いたします

ゆうゆう

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侯爵の陰謀

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王城すべての人事を調整している文官達を纏めているのは、バランティ侯爵家の者だ。

バランティ侯爵は数年前最後まで側妃の選定を諦めなかった1人。

侯爵には3人の娘がいた。
確か末娘がマリーエル様と同い年だったと思う。
まだ王妃は幼いから是非女盛りの令嬢達の中から側妃をと自分の長女を猛プッシュしてきた男だった。


「キャンティあなたに王妃宮へ行くように言ったのは誰?」

「ロダン伯爵です」
青い顔のままキャンティは答えた。

ロダン伯爵はバランティ侯爵の腰巾着だ。
いつもでも侯爵の側で厭な目付きで周りを牽制している。

「ロダン伯爵はあなたに何か言った?」

「伯爵は私は王族存亡の危機を救う尊い使命を担っている。
お前にもその使命を手伝う栄誉を与えてやるって…」
キャンティは自らの立場の危うさを感じ取ったのか素直に全てを話した。

何が王族存亡の危機よ。
単に自分達が優位な立場になれる家名から側妃を出したいだけじゃない。

ロダン伯爵には陛下と王妃の面会数や会話の内容など知り得た事を全部報告せよ。
と言われていたそうだ。

なんだそのプライベートを探る的なゴシップ記事を書いてる町の号外屋みたいな指示は。

「で、あなたは何回ロダン伯爵に報告したの?」

キャンティは激しく首を横に振った。

「だって、ここへ来てから私はまだ王妃様の部屋にだって入った事がないもの。
何も報告するような事はなかったし」

「それで相手から何も言われなかったの?」

小さく頷く。

「無理する事はないから、侍女長の信頼を勝ち取って、王妃宮の隅から隅からまで分かるベテランになれって、いつかお前にしか出来ない使命が下りるからって」

ふーん、これは長~い目でみてキャンティをこの王妃宮の侍女にしときたいから、無理にいろいろ調べさせるのではなく、いざと言う時に使える保険に近いのかも。

いざとは、王妃宮に忍び込む時の引き込みに使うとか、それか
王妃様暗殺とか…

まぁ、そんなに物騒な事まで想定に入れていたのかは、疑問だけどね。

「では、あなたはこの王妃宮に配属された後はロダン伯爵とは連絡を取っていないのね?」

「はい、神に誓ってもこれは本当です」
キャンティはしっかりこちらを見て言いきった。
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