聖女派遣いたします

ゆうゆう

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魔導師ジェイコブ

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「ジェイコブさんとお呼びしても?」

「好きにすればいい」

「追放されたあなたがなぜ王宮に居たのです?」

「王宮に用があった訳ではない」

「ええ、あなたが居たのは王妃宮ですものね。王妃様が目的ですか?」

「…」

次の日ジェイコブの意識が戻った知らせを聞いて、私とドーリスとマルグリット姉さんと3人で対峙します。
もちろん騎士団の人たちも側で待機してくれています。

ジェイコブが身につけていた魔法具などは没収しましたが、まだ何を隠していたりするか分かりません。

この空間そのものを3人で重複結界をかけ、中では私達以外の者が魔法や道具を使えなくしました。

その上マルグリット姉さんもいるので、嘘をついてもすぐ分かる。

「なぜ、あなたが自らここへ来たのか?
それはロジェの持っていたブローチが作動しなくなったからではないのですか?」

「っ! はぁー、
やっぱりバレてしまっていましたか」

白銀の髪の頭をかきながら、肩を落とすジェイコブ。


「なぜ?王妃様の動向を探ろうとしたのですか?
誰かに頼まれたの?」

「別に動向を探っていたわけでも、何処かの貴族に頼まれたわけでもない」

マルグリット姉さんを見ると首をふる。
嘘は付いていないようだ。

「では、何が目的ですか?」

「ただ、王妃… マリーエル様の事を見ていたかっただけだ」
とても小さい声でいいます。

もしかしてこの人マリーエル様の事を?


「ジェイコブさん、この国でも珍しい魔導師であったあなたが王宮から追放された理由はなんです?」

「マリーエル様に求婚したからだ」

「は?」「へ?」「…」

私達は絶句してしまった。

マリーエル様はこの国の国王と結婚したから、王妃としてここにいるのだ。
独身であるなら、この国にすらいなかったかもしれないのに…

「今さらですけど、マリーエル様は既婚者ですよ?」

「そんなこと分かっている。
だが、自分の気持ちを抑える事が出来なかった。
あの方のそばにいられるなら、一生あの方の奴隷でもよかった。
だから自分の気持ちを伝えただけだ。一緒にいたい私のモノになってくれと」

それは… 国王陛下の逆鱗に触れる訳だわ。
マリーエル様を溺愛する陛下の事だもの自分の妻を女としてみている不届き者なんて、同じ王宮に置いておける訳ないものね。

「よく、不敬罪で死刑にならなかったものね」

「まったくだ、どうせなら殺してくれればこんなに悩まないのに」

相当マリーエル様に横恋慕しているようだわ。


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