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指輪

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私と大伯母様は、カイル達が帰った後も話をしていた。

「大伯母様、パルフィートの国王陛下は私の事をどう思っていらっしゃるのでしょう?」

「陛下はエレーナの事を大変心配していらっしゃったわよ。
それと同じくらい感謝もされていたわ」

「感謝ですか?」

「ええ だってもう少しで大事な息子を失うところだったでしょ?」

「息子… カイル殿下のことですか?」

「そうよ。 あなたが覚醒しなければ2人とも死んでいたでしょう?」

確かにあの時聖女の覚醒がなければ馬車は崖下へ叩き付けられて恐らく私達は無事では済まなかっただろう。

「あれは、指輪に助けられたのです。
この指輪は大伯母様が作ったとカイルに聞きました。
この指輪にはどのような力があるのですか?」
そう聞くと、大伯母様は首を振って言いました。

「大した力などないのですよ。
そもそも、私はあなたの母、シェリーの身を案じて、何かあれば異変が分かるように同じ指輪を作り共鳴するようにしたのです。
それをシェリーに密かに渡して何かあったらこれに向かって祈って欲しいと伝えたの」

「え? でもあの時この指輪を嵌めたら指輪から光が溢れたのですよ?」

「その指輪に力を込めたのは確かだから、きっとあなたの聖女としての力に、共鳴したのでしょう」

「なるほど、私がもともと持っていて眠っていた力が大伯母様の力に触れて呼び起こされたって事でしょうか…」

「それと、あなたの危機を体で感じた事。この二つが重なった事によって急激な覚醒に繋がったのね。
でも、これも仮説なのですよ。
私も自分が覚醒するまで、全く知らなかった聖女について、この国で少しづつ自覚して、調べたり、実験したりして今に至っているの。
だから、私とエレーナが全て一緒なのかも、エレーナしか出来ない力があるのかも、まだ分からないの」

そうか…
大伯母様もこの国に逃れてきた時は今の私と一緒だったのよね。

「では、これから私も大伯母様と一緒にいろいろ研究していきます。
そしてこれからどうすべきか、カイル達にもどんな恩返しが出来るか、考えなくっちゃ!」
こんな前向きな自分に少しびっくりしている。
聖女になってから、私の中であまり後ろ向きな気持ちがなくなっているような…

「大伯母様、私なんだか厭な思い出や感情が薄れているって言うか、
あまり後ろ向きな考えが出来なくなったと言うか…」


私を大伯母様がニコニコと笑って見ています。



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