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思いもよらないの相手
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目を開けるとそこは知らない部屋だった。
「あれ? 私なんで寝ているのかしら?」
「なんでって、倒れたからだよ
どこか具合が悪いところとか、痛いところはないか?」
足元辺りからカイルの声が聞こえます。
起き上がると、ちょうどカイルが椅子から立ち上がりベッドの横にきました。
「どうなんだ? 急に気を失ったんだぞ。
すぐに抱き留めたから、頭を打ったりはしていないけど、どこか具合が悪いところはないか?」
カイルに重ねて聞かれ、何となく思い出してきました。
「私、クッキーを運んでバザー会場に向かったのよね?」
カイルを見ると頷かれる。
「歩いている時… 前から来た人とふいに目が合ったの。
その瞬間目の前が真っ暗になって…
カイル! あれはバイロン殿下だったわ!
なぜ、バイロン様がここにいるの?
私、あの方を認識する前に気を失ってしまったらしいわ。
多分…ショックと恐怖よね…」
バイロン殿下を見たと認識した途端に身体か震えだした。
そのくらいもう彼に会いたくなかったし、何か言われるのは嫌なのだ。
両腕で自分を抱きしめても身体は小刻みに震えがとまらなかった。
カイルがそっと肩を抱いてくれる。
「落ち着いて、大丈夫だ。
セシリアが倒れた時、前にいた2人組の男達だろ?
何となく気になったから、後をつけさせている。
そうか、あれがバイロン殿下か…
やはり、聖女の事を聞き回っていたのは、アランソルの奴らだったな」
やっと落ち着いて来て、震えも止まってきた。
「ごめんなさい、ちゃんと分かっているつもりだったのに、どこかで彼らが私を追ってくる事なんてないだろうって思っていたのかもしれない。
私の存在を必要ないって、切り捨てた人達だもの。
それで、あの… 大伯母様はこの事を知っているの?」
「ああ、実はセシリアが倒れてからまだ大した時間は経っていないんだ。
シスターにこの部屋を借りて、今マリナ様を呼びに行ってもらってる」
わずかな時間しか経っていないと、言われてホッとした。
本当にその場で衝撃を受けただけだったのね。
バイロン様とはもう二度と会わないと思っていたのに…
ひとつもいい思い出のない婚約者だった人。
「大丈夫だよ、彼らは君がエレーナだとは気付いてないし、目の前で倒れたのだって自分達に関係あるとは思っていないよ」
難しい顔をしていた私にカイルが言います。
「そうよね、今の私はエレーナではない。
そして聖女セシリアでもないものね」
私は黒く変えた三つ編みの髪を触りながら言った。
「あれ? 私なんで寝ているのかしら?」
「なんでって、倒れたからだよ
どこか具合が悪いところとか、痛いところはないか?」
足元辺りからカイルの声が聞こえます。
起き上がると、ちょうどカイルが椅子から立ち上がりベッドの横にきました。
「どうなんだ? 急に気を失ったんだぞ。
すぐに抱き留めたから、頭を打ったりはしていないけど、どこか具合が悪いところはないか?」
カイルに重ねて聞かれ、何となく思い出してきました。
「私、クッキーを運んでバザー会場に向かったのよね?」
カイルを見ると頷かれる。
「歩いている時… 前から来た人とふいに目が合ったの。
その瞬間目の前が真っ暗になって…
カイル! あれはバイロン殿下だったわ!
なぜ、バイロン様がここにいるの?
私、あの方を認識する前に気を失ってしまったらしいわ。
多分…ショックと恐怖よね…」
バイロン殿下を見たと認識した途端に身体か震えだした。
そのくらいもう彼に会いたくなかったし、何か言われるのは嫌なのだ。
両腕で自分を抱きしめても身体は小刻みに震えがとまらなかった。
カイルがそっと肩を抱いてくれる。
「落ち着いて、大丈夫だ。
セシリアが倒れた時、前にいた2人組の男達だろ?
何となく気になったから、後をつけさせている。
そうか、あれがバイロン殿下か…
やはり、聖女の事を聞き回っていたのは、アランソルの奴らだったな」
やっと落ち着いて来て、震えも止まってきた。
「ごめんなさい、ちゃんと分かっているつもりだったのに、どこかで彼らが私を追ってくる事なんてないだろうって思っていたのかもしれない。
私の存在を必要ないって、切り捨てた人達だもの。
それで、あの… 大伯母様はこの事を知っているの?」
「ああ、実はセシリアが倒れてからまだ大した時間は経っていないんだ。
シスターにこの部屋を借りて、今マリナ様を呼びに行ってもらってる」
わずかな時間しか経っていないと、言われてホッとした。
本当にその場で衝撃を受けただけだったのね。
バイロン様とはもう二度と会わないと思っていたのに…
ひとつもいい思い出のない婚約者だった人。
「大丈夫だよ、彼らは君がエレーナだとは気付いてないし、目の前で倒れたのだって自分達に関係あるとは思っていないよ」
難しい顔をしていた私にカイルが言います。
「そうよね、今の私はエレーナではない。
そして聖女セシリアでもないものね」
私は黒く変えた三つ編みの髪を触りながら言った。
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