婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう

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覚醒の前と後

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父の事を考えて黙っていると、大叔母様が心配しながら言います。

「このままお父様に連絡をしなかったら、後悔するんじゃないかと思ったのよ。
あなたの身が安全なら、1度アランソルに戻るのもひとつの選択肢だと思うわ」
そう言いながら先程のパドックとのやり取りを思い出していた。


       ◇

「パドックさん、最後にもう1つだけお聞きしていいかしら?」

「はい?」

「もしエレーナが生きていて、本当に聖女に覚醒していたら、アランソルの国王はエレーナをどうするつもり?」


「今の国王であるゲルハルト陛下は父親の愚行を恥じておいでです。
王子のエレーナ嬢に対する仕打ちも激怒されて、廃嫡することにしたのです。
そのような清廉潔白なお方ですので、エレーナ嬢が聖女であっても彼女の意志を無視して無理強いするような事はないでしょう」

「その言葉に嘘偽りはありませんね?」

「はい、神に、いいえ聖女マリナ様あなた様に誓って嘘偽りは言っておりません」
と頭を下げたのだった。



       ◇


「あの時あなた達も聞いたでしょ?
パドックさんの言葉を。
今のアランソル国王は無体をするような人ではないと。
エレーナを探しているのも、聖女に覚醒したからではなくて、もし覚醒していれば生きている可能性があるから探しているのだと」

私とカイルは大叔母様の言葉に頷きました。

「エレーナの無事を家族に知らせて、その上でこれからあなたがどちらの国で生きていくか決めればいいのではなくて?」
と大叔母様は言います。

確かに大叔母様の言うことに頷いてしまいたくなるけど、ひとつ問題がある。
「でも、私がエレーナだと言ってもお父様は分かってくれるかしら?」
私は長いハニーブロンドの髪を見詰めて言いました。

この髪を聖女の力で元の栗色の髪に戻しても、あまり前の面影はないから。

「ねえ、セシリア… いいえエレーナ。
あなたは今の覚醒後の姿は覚醒してそうなったと思っているの?」

「え? 大叔母様何を言っているのですか?」

「そうね… ちょっとまっていて」
そう言って大叔母様は部屋を出ていきました。

そして、直ぐに戻って来た大叔母様の手に片手でも持てる程度の小さめの額縁がありました。


テーブルに置かれたその絵には若い頃の大叔母様が描かれていました。

「これを見て私だとわかる?」

「ええ、お若い頃の絵ですね。
私と同じくらいかしら?
あまりお変わりなくて、直ぐに分かりましたよ」

「そう… これはね私が聖女として覚醒する前に書かれた絵なの」

「え?」

覚醒前…ってそれじゃあ大叔母様は聖女になったから今の姿って言う訳ではないと言う事?

私は驚いて大叔母様と絵を何度も見てしまった。
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