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思ったよりも時間がかかってしまった。
それもこれも行きに退治はずなのに、何処からともなく現れる魔物のせいだ。
気付いてしまったからには無視できず、そのまま退治し続けていたらこの有り様だ。
予定時刻よりも3時間遅い。
これではまたナマンに呆れられ、溜め息を吐かれ、簡単なお使いも出来ないわけ?あり得ないんだけど、と言われるのが目に見えている。
あぁ、行きたくない……もうこのままウェリアムかヨアンに指輪を託し部屋で寝たらダメだろうか。
もう全身クタクタだし、目を開けてるのもやっとな状態でナマンからの攻撃に耐えられそうにない。
もういっそのこと逃亡すれば良かったか、と眠い目を擦りながら重たい足を動かしていると目の前に大きな影が出来た。
まさか、と視線を恐る恐る上に上げる。
「やっほー、随分時間かかったね。心配で出てきちゃった」
昨日同様胡散臭い笑顔を振りまき、語尾にハートマークを付けるウェリアムの格好は昨日の教会の制服ではなく、白の上下スーツで胸元には青色のバラが刺さっていた。
確かお祝いの場では男女ともに青い何かをつけるんだったか。
服装に興味がない私はいつも誰かに渡されるものをそのまま身につけていただけだったので、そういったルールのようなものはあまり覚えていない。
「遅くなりすみません。仕事は無事終えました。それであの、会場抜けてきて良かったんですか?」
「ん?良いの良いの。私が居なくてもヨアンがいるし、ナマンもひとりでどうとでも出来るから」
そうかもしれないが、今日は良い意味でも悪い意味でも様々な人たちが集まっているのだ。
万が一にも何か起こっても良いように側で控えておくのが、ウェリアムの仕事だろう、と呆れながらもここで会えたのは好都合だと思ってしまう私がいるのも事実なわけで。
「あ、そうだ、これ」
さっさと指輪を渡してウェリアムを早く会場へ戻そうという思いと、早く寝たいという気持ちが勝り、自分の体の奥からそれを取り出そうとするとその手を掴まれた。
「はーい、それは自分の手で渡そうね。もうそろそろナマンも会場から出てくるから」
「いや、出てきて貰うの申し訳ないですし、代わりに」
「それじゃあ意味ないからね。はい、行くよ」
意味って何だよっと言いたいのに、一回り以上大きい手に手を引かれ、まるで引き摺られるように会場へと向かっていく。
足の長さも歩幅も何もかもが異なるせいで、ウェリアムはただ歩いているだけなのに私は走って追いかけるような形となる。
ただでさえ長時間に渡って魔物退治をしてきたというのに、ここでも走らされるとはと息を切らせていれば煌びやかな会場が見えてきた。
いつもは音ひとつしない神秘的な空間なのに今日は華やかなパーティー会場だ。
綺麗な花も飾られ、何処からか良い香りもしてくる。
「あれ?待てが出来なかったのかい?ナマン」
え、ナマン?と視線を横から正面に戻すもウェリアムの大きな背中しか見えない。
「待てって僕犬じゃないんだけど」
不貞腐れた声が聞こえ、彼が会場の外に居たことを知らせてくるも私からは彼が全く見えず、そのことに思わずホッとしてしまった。
「どうだか。ほら、ロマーヌちゃん帰ってきたよ」
それもこれも行きに退治はずなのに、何処からともなく現れる魔物のせいだ。
気付いてしまったからには無視できず、そのまま退治し続けていたらこの有り様だ。
予定時刻よりも3時間遅い。
これではまたナマンに呆れられ、溜め息を吐かれ、簡単なお使いも出来ないわけ?あり得ないんだけど、と言われるのが目に見えている。
あぁ、行きたくない……もうこのままウェリアムかヨアンに指輪を託し部屋で寝たらダメだろうか。
もう全身クタクタだし、目を開けてるのもやっとな状態でナマンからの攻撃に耐えられそうにない。
もういっそのこと逃亡すれば良かったか、と眠い目を擦りながら重たい足を動かしていると目の前に大きな影が出来た。
まさか、と視線を恐る恐る上に上げる。
「やっほー、随分時間かかったね。心配で出てきちゃった」
昨日同様胡散臭い笑顔を振りまき、語尾にハートマークを付けるウェリアムの格好は昨日の教会の制服ではなく、白の上下スーツで胸元には青色のバラが刺さっていた。
確かお祝いの場では男女ともに青い何かをつけるんだったか。
服装に興味がない私はいつも誰かに渡されるものをそのまま身につけていただけだったので、そういったルールのようなものはあまり覚えていない。
「遅くなりすみません。仕事は無事終えました。それであの、会場抜けてきて良かったんですか?」
「ん?良いの良いの。私が居なくてもヨアンがいるし、ナマンもひとりでどうとでも出来るから」
そうかもしれないが、今日は良い意味でも悪い意味でも様々な人たちが集まっているのだ。
万が一にも何か起こっても良いように側で控えておくのが、ウェリアムの仕事だろう、と呆れながらもここで会えたのは好都合だと思ってしまう私がいるのも事実なわけで。
「あ、そうだ、これ」
さっさと指輪を渡してウェリアムを早く会場へ戻そうという思いと、早く寝たいという気持ちが勝り、自分の体の奥からそれを取り出そうとするとその手を掴まれた。
「はーい、それは自分の手で渡そうね。もうそろそろナマンも会場から出てくるから」
「いや、出てきて貰うの申し訳ないですし、代わりに」
「それじゃあ意味ないからね。はい、行くよ」
意味って何だよっと言いたいのに、一回り以上大きい手に手を引かれ、まるで引き摺られるように会場へと向かっていく。
足の長さも歩幅も何もかもが異なるせいで、ウェリアムはただ歩いているだけなのに私は走って追いかけるような形となる。
ただでさえ長時間に渡って魔物退治をしてきたというのに、ここでも走らされるとはと息を切らせていれば煌びやかな会場が見えてきた。
いつもは音ひとつしない神秘的な空間なのに今日は華やかなパーティー会場だ。
綺麗な花も飾られ、何処からか良い香りもしてくる。
「あれ?待てが出来なかったのかい?ナマン」
え、ナマン?と視線を横から正面に戻すもウェリアムの大きな背中しか見えない。
「待てって僕犬じゃないんだけど」
不貞腐れた声が聞こえ、彼が会場の外に居たことを知らせてくるも私からは彼が全く見えず、そのことに思わずホッとしてしまった。
「どうだか。ほら、ロマーヌちゃん帰ってきたよ」
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