泣くなといい聞かせて

mahiro

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宿に到着

電車の中で眠っていたら、奴に叩き起こされた。
辿り着いたそこは、自然豊かな土地に恵まれた宿で、なかなかお洒落な外装で内装も和をベースにした造りだった。
奴にしてはなかなかセンスの良い宿である。
確実に昔の奴だったら選ばなかったに違いない。
月日が経てば人は変わるものだな、と横目で隣に立つ奴の横顔を見れば、目に被さりそうな癖のない前髪を鬱陶しそうに横に退けていた。


「また伸びてきたな、切ってやろうか?」


「あ?あぁ………今度ね」


何気なく言ったであろう『今度』という言葉。
いつもならそうだなと言える一言が今は言えないのが辛い。
言ってしまえば、守れない約束をしてしまうことなる。


「遠慮せずとも部屋に入ったら切ってやるぞ?邪魔だろう?」


「いいって。それより早く入ろうぜ」


手に持っていた鞄を奪われ、1人中に突き進んで行く奴の背を慌てて追い掛けながら、奴の髪を切るのは今後俺ではなくなるのだな、とその時に気付いて胸が傷んだ。
ロビーから客室へ向かう廊下を通り、エレベーターに乗る際、エレベーター目の前に中庭があり、綺麗な竹が立っているのが見えた。
綺麗だな、とそれを見ていると上から視線を感じて目線を上げれば奴が俺のことを見ていることに気が付いた。


「な、何だ?」


「いや?何も?」


「そうか……」


何もないなら見つめるな、照れるじゃないか。
この視線から逃れたくて顔を背ければ、目の前のエレベーターが到着した。
どうやら中から外の風景が見えるようで、階が上がるごとに景色が光輝いていき、それらから目が離せなくなってしまった。
どうせならカメラを持ってくれば良かったか。
ま、どの段ボールに仕舞ったか忘れたけど。

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