広がる世界

mahiro

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冷えきった部屋の電気をつけ、暖房のスイッチをすぐに入れた。


「汚いですが、適当に座ってください」


玄関で立ち尽くす男性に声をかければ、茶髪のふわふわした、髪の隙間から赤くなった目をこちらに向けた。


「………?」


「どうして」


こんなことをしてくれるのか、だろうか。
別にそんなの理由が必要だろうか。
困っている人がいたら助ける、なんてヒーローみたいなことは言えない。
けれど、出来ることがあるならやれる範囲でやる、のは当然のことなのではないだろうか。


「理由なんて良いじゃないですか。ほら、玄関は冷えますよ」


俺がそう言えば、男性は諦めたのか漸く中に入ってきた。
まさかこんなに背の高い男性とは思わず、着替えはない。
当たり前だがパンツだってサイズが合うとは思えない。
でもとりあえずシャワーでも浴びて貰うか。
いや、いきなりそんなこと言ったらよけいに警戒されるか。


「………凄い資料の山ですね」


「あぁ、散らかっていてすみません。今退けますね」


床に資料の束があり、それを退けようとすれば首を横に振られた。


「別にそのままで大丈夫ですから」


「そうですか?邪魔なら退かしてください」


そう言えば、男性は頷き空いているスペースに腰を降ろしたのでクッションを手渡しそれの上に座らせた。
お茶まだあったような、と台所の戸棚を見ていれば、ラスト1つあった。
今度買ってこなければダメだな、と思いながら最後のそれを準備し男性の前にそれを差し出した。


「はい、暖かいうちにどうぞ」


「ありがとうございます」


素直にそれを受け取った男性は恐る恐るそれに口をつけて、暖かい、と言っていた。
もしかして俺が思っているよりも長い時間あそこに座り込んでいたのだろうか。


「………お兄さん、いい人ですね」


「そうですか?別に俺は自分のことそうとは思えませんけど」


着ていたジャケットを脱いでハンガーにかけ、ネクタイを外して元の定位置に戻した。


「いい人ですよ………普通、あんなところに座り込んでいた人が居たら見て見ぬふりしますよ」


「ううん………それも出来たでしょうけど、家に帰って気にして過ごすよりはまだ良いと思いましてね」 

「やっぱりいい人です………」


両手でお茶の入ったコップを握る男性の横顔は憂いを帯びていて、何となくこの人は女性にモテそうだなと思った。


「そんないい人に、俺の話を聞いて貰っても良いですか?」

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