広がる世界

mahiro

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暫く平和な、いつもと変わらない生活を送っていた。
その間に荒巻さんのことを思い出すことはあったけれど、それを打ち消すように仕事に熱中してしまっていた。
そうしていれば、仕事のことのみ考えられるから。


そう、そういった日々を送っていたんだ、俺は。


なのに何故今、俺の目の前にスマホを俺に向けたまま眉間の皺をこれでもかと寄せた宇佐美さんがいるのだろうか。


「突然で悪ぃが、出てくれないか?ずーと煩いんだ、こいつ」


こいつとは誰なのか、聞かなくても分かるような分からないようなそれを受け取るか悩んだ。
あの日を最後に荒巻さんの姿を見かけていないし、あの女子生徒も構内で見かけることもなくなってしまっていた。
あれをきっかけに退学をしなければ良いが。


『しーまーぬーきー』


呆然と差し出されているスマホを見つめていたら、スピーカーから荒巻さんの声が聞こえた。
それに思わず、肩が大きく揺れてしまった。


『会いたいよぉ……一緒に暮らしたいよぉ、抱き締めたいよ………』


まるで酔っぱらっているような声がそこから聞こえてくる。
何処かの飲み屋で飲んでいるのだろうか。


パパラッチがどうのと、言っていたのにそんなに大きな声を出して大丈夫なのか。
『嶋貫』という女性と勘違いされたりしないのだろうか。


いや、俺が勘違いしているだけで、本当は俺以外の『嶋貫』という人のことを言ってるだけじゃないのか?
そんな筈ないか、だとしたらわざわざ宇佐美さんが俺の家に来るはすがないし。
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