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「ドミニク殿下、おはよう。今朝も清々しい気分だな!」
慌てもせずに後ろを振り返ったローランドは手に持っていたスコップを隠しもせずにニコニコと笑ってみせれば、ドミニク殿下は端整な顔を少し歪めた。
こんな表情もするのか、と思いもするも慌てて頭を下げた。
平民がじろじろと殿下の顔を見ていたら失礼だ。
それにしてもこうしてちゃんとお互いの顔がしっかりと見える距離で会うのは処刑日が最期だ。
「おはよう。お前は清々しいだろうが俺は全く清々しくないのだが……どうしてか分かるか?」
私に婚約破棄を命じたときのような声の低さに思わず、手先が震え始めた。
それを隠すように両手を握りしめる。
別に私がまた処刑をされたり、破棄をされたりするわけでもないのに緊張してしまうのは、もしかしかたら自分のなかであのときのことがトラウマになっているからなのかもしれない。
「どうしてだろうな?まだ登校2日目だからなぁ、殿下も緊張しているのではないか?」
「そんなわけないだろう。お前が持っている物を見てから言え」
「ただのスコップじゃないか。それがどうかしたのかい?」
「どうかしたからお前に話しかけているんだが?」
ローランドがとぼける程にドミニク殿下の声が下がっていく。
それと比例するように私の震えが増したような気がする。
大丈夫よ、私。
ドミニク殿下は私を怒っているわけじゃない。
「全く…彼女が相手だとすぐに怒るな、君は」
「婚約者に何かあれば怒るのが当たり前だろう」
ドミニク殿下の声のトーンが戻ったことと婚約者に何があれば?という言葉を聞いた瞬間、震えが止まった。
私が婚約者だったとき、私にトラブルが起きても心配もされなかったし、無関心だったじゃないか。
きっと私は婚約者とも思われていなかったといつことか。
まぁ、そんなこと分かっているから昨日よりは衝撃は少ないけど、身体は思っているより正直ということだ。
「何処が良いのかねぇ…あのご令嬢の。さっぱり俺には分からん」
「分からなくていい、が。今回のことは謝っておけよ?怪我はしなかったから良いが、怪我でもしたらいくらお前でも許さないからな」
「へーい。だけどよ、いっつも言ってるが、少しは彼女に礼儀作法だとかマナーだとか学ばせろよ。社交の場に出ることがこれから沢山あるってのに、あれじゃ殿下の評価も勿論、彼女自身の評価も落ちるだけだぜ?」
「………それに関しては、俺から彼女に伝えておこう。だから、もうこんなことするなよ」
「彼女がやることやればこんなことしないぜ、俺は」
「どうだか」
それだけ言ってドミニク殿下は私に気付いたか気付いていないか分からなかったが、去っていった。
それを確認したあとに頭を上げれば、ローランドはまたつまらなそうな顔をしていた。
「ちぇ…俺だけが悪いみたいになってるのが気に食わん!」
「今回のは貴方が悪いでしょ。ご令嬢は貴方に何かしたわけじゃないのだから」
「したさ。俺だけじゃなく皇族や貴族の品格を下げられているじゃないか」
「穴を掘ったりする貴方には言われたくないと思うわよ?」
「俺のはまだ可愛いものだろ?!」
「可愛い可愛くないの問題じゃないと思うのだけど。それより早く教室に行きましょう。遅刻しちゃうわ」
そのあとも後ろで文句を言っているのが聞こえたけれど、私は無視して教室へと向かった。
慌てもせずに後ろを振り返ったローランドは手に持っていたスコップを隠しもせずにニコニコと笑ってみせれば、ドミニク殿下は端整な顔を少し歪めた。
こんな表情もするのか、と思いもするも慌てて頭を下げた。
平民がじろじろと殿下の顔を見ていたら失礼だ。
それにしてもこうしてちゃんとお互いの顔がしっかりと見える距離で会うのは処刑日が最期だ。
「おはよう。お前は清々しいだろうが俺は全く清々しくないのだが……どうしてか分かるか?」
私に婚約破棄を命じたときのような声の低さに思わず、手先が震え始めた。
それを隠すように両手を握りしめる。
別に私がまた処刑をされたり、破棄をされたりするわけでもないのに緊張してしまうのは、もしかしかたら自分のなかであのときのことがトラウマになっているからなのかもしれない。
「どうしてだろうな?まだ登校2日目だからなぁ、殿下も緊張しているのではないか?」
「そんなわけないだろう。お前が持っている物を見てから言え」
「ただのスコップじゃないか。それがどうかしたのかい?」
「どうかしたからお前に話しかけているんだが?」
ローランドがとぼける程にドミニク殿下の声が下がっていく。
それと比例するように私の震えが増したような気がする。
大丈夫よ、私。
ドミニク殿下は私を怒っているわけじゃない。
「全く…彼女が相手だとすぐに怒るな、君は」
「婚約者に何かあれば怒るのが当たり前だろう」
ドミニク殿下の声のトーンが戻ったことと婚約者に何があれば?という言葉を聞いた瞬間、震えが止まった。
私が婚約者だったとき、私にトラブルが起きても心配もされなかったし、無関心だったじゃないか。
きっと私は婚約者とも思われていなかったといつことか。
まぁ、そんなこと分かっているから昨日よりは衝撃は少ないけど、身体は思っているより正直ということだ。
「何処が良いのかねぇ…あのご令嬢の。さっぱり俺には分からん」
「分からなくていい、が。今回のことは謝っておけよ?怪我はしなかったから良いが、怪我でもしたらいくらお前でも許さないからな」
「へーい。だけどよ、いっつも言ってるが、少しは彼女に礼儀作法だとかマナーだとか学ばせろよ。社交の場に出ることがこれから沢山あるってのに、あれじゃ殿下の評価も勿論、彼女自身の評価も落ちるだけだぜ?」
「………それに関しては、俺から彼女に伝えておこう。だから、もうこんなことするなよ」
「彼女がやることやればこんなことしないぜ、俺は」
「どうだか」
それだけ言ってドミニク殿下は私に気付いたか気付いていないか分からなかったが、去っていった。
それを確認したあとに頭を上げれば、ローランドはまたつまらなそうな顔をしていた。
「ちぇ…俺だけが悪いみたいになってるのが気に食わん!」
「今回のは貴方が悪いでしょ。ご令嬢は貴方に何かしたわけじゃないのだから」
「したさ。俺だけじゃなく皇族や貴族の品格を下げられているじゃないか」
「穴を掘ったりする貴方には言われたくないと思うわよ?」
「俺のはまだ可愛いものだろ?!」
「可愛い可愛くないの問題じゃないと思うのだけど。それより早く教室に行きましょう。遅刻しちゃうわ」
そのあとも後ろで文句を言っているのが聞こえたけれど、私は無視して教室へと向かった。
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