新たな物語はあなたと共に

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オデットというご令嬢はローランドよりも神出鬼没で、ローランドが現れる場所に必ずといって良いほど現れる。
以前の私とローランドのように。
私はそれを第三者として見ていることしか出来ず、時間だけが経過していく。
その間に何かローランドにお礼を返せないかと考え付いた結果、お金を少しでも稼ごうと人生初のバイトというものを経験した。
新しいことを始めるのは楽しいけれど、ローランドとの関係性はどんどん薄くなっていくようだった。
前が仲の良い友達であるとするのなら、今はただのクラスメイトといった所だろうか。
本来であればそれが普通で、今までが異常だったのだ。
お礼を済ませたら、今の関係性に戻った方が良いのだろうか。


「ドミニク様！」


物思いにふけていた所に遠くからアルレートの声が聞こえ、その奥にはドミニク殿下の姿があった。
二人は相変わらず仲が良いようで、最近ではアルレートが嫌な勉強も嫌がりながらも頑張っていると耳に入るようになった。
この調子なら国王陛下も王妃様が望む姿になる日がいつか来ることだろうし、そのうちドミニク殿下もご自身の心のうちをお二人に告げられることだろう。
ドミニク殿下が婚約したいのはアルレートだけである、と。
お二人はドミニク殿下を大切に思われている方々なので、話を聞けばきっと、ドミニク殿下とアルレートの婚約を祝ってくれるはず。
そのとき、『私』はどうなっているのだろう。
処刑されるようなことを今回は何一つしていないけれど、ローランドへお礼も満足も出来ず、幸せな生活を送るにもその先に望むものが今のままでは何も浮かんでこない。
まるで迷子にでもなってしまったかのような気分だ。


「はぁ………」


思わず吐き出されるものも、最近頻度が高い気がしてならない。
そう思いながら空を眺めていたら急に目の前が真っ暗になった。


「な、何？！」


次に口を塞がれ、気付けばそこで意識を失っていた。