新たな物語はあなたと共に

mahiro

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ジュリアンにはそう見えたかもしれないが、事実は二人のみぞ知る、といった所か。
そこへ扉をノックする音が聞こえ、ジュリアンが扉を開ければそこにはドミニク殿下が神妙な顔をして中へと入ってきた。
私は慌てて立ち上がり、軽く頭を下げればドミニク殿下より楽しにてくれと疲れた口調で言われた。


「父上と母上が悪かったな」


「驚きましたが、大丈夫です。ただ、このようなことをされましても私はお二人が望まれるような関係をドミニク殿下と構築することは出来ないと考えております」


私はドミニク殿下が座った後にさっきまで座っていた場所に腰掛け、ジュリアンに部屋から出て行かずに部屋に居るようにと目線で合図を送った。
もしこのまま二人きりになろうものなら、アルレートに対して裏切り行為に見えてもおかしくないのだ。
そうならないためにも第三者がこの場にいることは重要だし、ジュリアンとしてみても私たちの会話を報告する命を素直に従ったと見られるので、側にいた方が良いだろう。


「俺もアルレート以外を婚約者として考えるつもりはないが、父上と母上は今後の俺には君のような女性でなければダメだと言って聞かない。確かにアルレートは最近嫌だ嫌だと良いながらもレッスンは受けているが、周りからの評価は悪く、俺も対応に困ることが増えているのが現状だ。だが、これはきっと時間の経過と共に評価が変わっていくものと俺は思っている」


ドミニク殿下は目頭を押さえながらそう言った後に、溜め息を吐いた。


「ただ………今はまだ外交という部分は回数としては低いが、今後はどんどん増えてくる。その為に今、アルレートには頑張って貰っているわけだが………これは本当に彼女のためになるのか、俺が押し付けているだけなんじゃないかと最近考えてしまうんだよな」
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