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「ルイス先輩ってあのガタガタだった営業部を立て直した人なんだって」
「まだ若いのに凄いよね……それでいて顔良し、頭良し、声良し、運動神経良しって凄いよね」
「出来ないことってないのかね」
仕事場のお姉さま方が話しているルイス先輩ーーールイス・オルテは前世の私ーーーファン・ウォルソンの婚約者だった。
彼ーーー昔の彼女は、今と同じくらい美しい見た目で、焼けた肌も黒く長い髪も素敵でいつもその美しさに見惚れていた気がする。
彼女は見た目の美しさだけでなく、動作も美しかった。
そんな彼女が第三王子という肩書きだけの私の婚約者だなんて勿体ないと常に思っていた。
本来であれば第一王子の婚約者だと言われてもおかしくない程の逸材であった。
何故か私の婚約者として名をあげられ、断りたかっただろうに、皇族相手に断れる筈もなく、嫌々婚約者になったのだと後に知った。
それでも彼女は嫌な顔一つせず、必要なときは私の側にいてくれた。
だから、せめて私の側に居てくれる間だけでも嫌な思いだけはせず、快適に過ごせるようにと努力したが、彼女が欲しがっていたものはそんなものではなかった。
私の後ろにある第一王子、第二王子の妃を狙っていたのだと後で知った。
それを知ってもなお、私は彼女を離せず予期せぬ形で生涯を終える形となり、その罰なのか、前世と異なる性別と名前も見た目も全く異なる人物へと転生していた。
私が見知らぬ女性のサラ・エドワードとして転生したと同時にルイスも転生したであろうことは予想していた。
が、なかなか再会出来ぬままときは過ぎ、転職した場所で再会してしまった。
それも男性となったルイス・オルテと。
私がファン・オルテである証拠は、もうこの記憶しかない。
この記憶が証拠ですなんて言える筈もないし、彼女の目指していたものは惜しくも達成することが出来ず、悲しい終わりを迎えさせてしまったこともあり、再会を素直に喜べる立場ではない。
そんなこんなで私は遠く離れた場所で今日も今日とてルイスを見守っていた。
そんなある日のこと、事件は起きた。
いつものように開店準備を進めていたとき、入り口のドアが強引に開かれた。
まだお客様の出入り時間ではないため、自動ドアでなく手動になっていたガラス扉は嫌な音を立てていた。
皆の視線がそちらに向かい、私もそれに倣うようかのように視線を向ければそこには昔の私ーーーファン・ウォルソンにそっくりな女性が居て、受付へヒールの音を鳴らしながら向かってきた。
「ねぇ、ここに『ルイス・オルテ』って男性が居るわよね?呼び出してくださらない?」
昔の私にはなかった色気を出しながらそう言った女性に受付の女の子たちは戸惑いながら問いかけた。
「えっと………どういったご用件でしょうか?」
そうだよね。
いきなり繋ぐのではなくて、用件を伺ってから繋ぐんだよね。
そうルイスに教わっていたもんね、君たち。
偉いぞ、なんて若い女の子たちのことを心の中で褒めながら、この人物が何者なのか疑問に思った。
私ではない誰かってことは分かっているが、果たして誰なのか。
口調は私のものではないから、今の姿のものに合わせているのだとしても誰だか全く分からない。
「貴女に伝える必要はないわ。でもそうね………『ファン・ウォルソンが来た』と伝えてくれれば、ルイスは分かるはずよ。それでも分からなければ『私の顔を見て欲しい』って伝えて」
「まだ若いのに凄いよね……それでいて顔良し、頭良し、声良し、運動神経良しって凄いよね」
「出来ないことってないのかね」
仕事場のお姉さま方が話しているルイス先輩ーーールイス・オルテは前世の私ーーーファン・ウォルソンの婚約者だった。
彼ーーー昔の彼女は、今と同じくらい美しい見た目で、焼けた肌も黒く長い髪も素敵でいつもその美しさに見惚れていた気がする。
彼女は見た目の美しさだけでなく、動作も美しかった。
そんな彼女が第三王子という肩書きだけの私の婚約者だなんて勿体ないと常に思っていた。
本来であれば第一王子の婚約者だと言われてもおかしくない程の逸材であった。
何故か私の婚約者として名をあげられ、断りたかっただろうに、皇族相手に断れる筈もなく、嫌々婚約者になったのだと後に知った。
それでも彼女は嫌な顔一つせず、必要なときは私の側にいてくれた。
だから、せめて私の側に居てくれる間だけでも嫌な思いだけはせず、快適に過ごせるようにと努力したが、彼女が欲しがっていたものはそんなものではなかった。
私の後ろにある第一王子、第二王子の妃を狙っていたのだと後で知った。
それを知ってもなお、私は彼女を離せず予期せぬ形で生涯を終える形となり、その罰なのか、前世と異なる性別と名前も見た目も全く異なる人物へと転生していた。
私が見知らぬ女性のサラ・エドワードとして転生したと同時にルイスも転生したであろうことは予想していた。
が、なかなか再会出来ぬままときは過ぎ、転職した場所で再会してしまった。
それも男性となったルイス・オルテと。
私がファン・オルテである証拠は、もうこの記憶しかない。
この記憶が証拠ですなんて言える筈もないし、彼女の目指していたものは惜しくも達成することが出来ず、悲しい終わりを迎えさせてしまったこともあり、再会を素直に喜べる立場ではない。
そんなこんなで私は遠く離れた場所で今日も今日とてルイスを見守っていた。
そんなある日のこと、事件は起きた。
いつものように開店準備を進めていたとき、入り口のドアが強引に開かれた。
まだお客様の出入り時間ではないため、自動ドアでなく手動になっていたガラス扉は嫌な音を立てていた。
皆の視線がそちらに向かい、私もそれに倣うようかのように視線を向ければそこには昔の私ーーーファン・ウォルソンにそっくりな女性が居て、受付へヒールの音を鳴らしながら向かってきた。
「ねぇ、ここに『ルイス・オルテ』って男性が居るわよね?呼び出してくださらない?」
昔の私にはなかった色気を出しながらそう言った女性に受付の女の子たちは戸惑いながら問いかけた。
「えっと………どういったご用件でしょうか?」
そうだよね。
いきなり繋ぐのではなくて、用件を伺ってから繋ぐんだよね。
そうルイスに教わっていたもんね、君たち。
偉いぞ、なんて若い女の子たちのことを心の中で褒めながら、この人物が何者なのか疑問に思った。
私ではない誰かってことは分かっているが、果たして誰なのか。
口調は私のものではないから、今の姿のものに合わせているのだとしても誰だか全く分からない。
「貴女に伝える必要はないわ。でもそうね………『ファン・ウォルソンが来た』と伝えてくれれば、ルイスは分かるはずよ。それでも分からなければ『私の顔を見て欲しい』って伝えて」
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