お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro

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その二人を避けて民家の方へ向かうかと思っていたら、それを止めるかのように目の前にいた男性が口を開いた。


「やけに騒がしいな。この時期何か行事でもあったか?」


男性にしては少しだけ高い声で、不機嫌さを含んだその声に聞き覚えがあった。
あれは確かブライアンが剣術を習いに行っていたときに何度も見かけたような気がする。


「覚えがないな。もうかれこれ4年も前のことだしなぁ」


男性の後ろにいた人がそれに答えたが、その人の逞しい声にも聞き覚えがある。
誰だったかまでは思い出せないけども。


「だな、俺もほとんど覚えてねぇ」


顔を見れば思い出せそうなのに二人揃って顔が口の部分しか見えていないので、声の情報しか入ってこない。
あと背丈と体格も分かるけれど、はっきり言って誰だかまでは分からない。
その人たちの前で不自然に立ち止まってしまったからなのか、たまたまなのか分からないが、不機嫌さが増したように見える男性から声をかけられてしまった。


「なぁ、あんた。知っていたら教えて欲しい。ブライアン・ダルに用があってアポ無しで来たんだが、今日何か行事でもあるのか?屋敷の中が騒がしいようだが」


「え。あ、はい。今日はブライアン殿下がやっと………マリー王女、と婚約を結べたという」


喜ばしいことが起きている、と言おうとしたのに何故か口が上手く動かなかった。
何事もないように答えて、二人の前を去れば良いのに不自然に言葉が切れてしまったせいで、二人が変に思ったに違いない。
平然と答えれば良いだけなのに、たったそれだけの言葉が出せない。
これは私が喜ばしいことだと本音では思えていないということなのだろうか。
ブライアン本人にはいつも練習していた『おめでとう』を言えたというのに、何故この二人には言葉が出てこないのだろう。
そう思い悩んでいたら、いきなり私の顔目掛けてベージュのマントが投げつけられた。
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