お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro

文字の大きさ
8 / 11

8

しおりを挟む
言い合いをしている二人に頭を下げて今のうちに去ろうとしたら、ノエリア王子に背後から首元を掴まれた。
いや、猫じゃないんだからそういう持ち方は止めてくださいよ、と言おうと振り返れば、見ようによっては爽やかな笑みを浮かべているように見えるのだが、私には怒り心頭している姿にしか見えず何も言えなくなった。


「何勝手に居なくなろうとしてんだぁ?お前は」


「い、いやぁ、その、お二人とも国へ帰られるのですよね?それならそろそろお別れだろうなぁ、と思いまして?」


「はぁ?」


心底何言っているのか分からないというような表情でそう言われたのだが、私だって意味分からないのですけども。
その後ろで顔に手を当てて溜め息を吐いているアルノルフは、何に溜め息ついているのかさっぱり分からない。


「お前本気で分かってないのか?」


「はい………」


素直にそう答えれば、ノエリア王子まで溜め息を吐いた。
何、私だけが分かっていない感じなの?
周りを見たら少しは分かるのかと思って、周辺を見渡せば。


「っ?!」


そこには、物陰に隠れた状態で今まで一緒に屋敷で過ごしてきた兵が数名私たちを取り囲んでいたのが見えたのだ。


「やっとかよ」


私を掴んでいない手で頭をガリガリと掻いたノエリア王子は、お前が屋敷を出てきたときから居たぞ、と言った。


「………全然気付かなかったです」


「まぁ、普通は気付かないだろうな」


兵が居る方を睨み付けるノエリア王子は、面倒くさそうに言うと私を離して、私の前に出た。


「大方、必要なくなった元婚約者を消せとかそういう指示でもしたか?あわよくば喧嘩を売った俺を始末しろと追加で言われでもしたんだろうな」


さっきより兵の数増えてるし、と腰に下げていた刀を手にしながら言えば、その隣に同じ様に刀を構えたアルノルフが立った。


「挑発させるからだ、全く」


「それに乗ってくる辺り、まだまだだよな。少しくらい流すことを覚えろよ、あのお坊っちゃん」


二人とも不敵に笑いながら今にも襲ってきそうな兵たちを睨み付けているが、私はそれどころではなかった。
『必要なくなった元婚約者を消せ』?
つまり、ブライアンは屋敷を追い出した後、一人になった私を殺そうとしていたということ?
あんなに一緒に過ごしてきたのに、ブライアンの邪魔にならないようにしてきただけなのに、多くは何も望まず、あくまでも『飾りの婚約者』を演じてきただけなのに。
そんなに私の存在って邪魔でしかなかったの?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんでも押し付けてくる妹について

里見知美
恋愛
「ねえ、お姉さま。このリボン欲しい?」 私の一つ下の妹シェリルは、ことある毎に「欲しい?」と言っては、自分がいらなくなったものを押し付けてくる。 しかもお願いっていうんなら譲ってあげる、と上から目線で。 私よりもなんでも先に手に入れておかないと気が済まないのか、私が新品を手に入れるのが気に食わないのか。手に入れてしまえば興味がなくなり、すぐさま私に下げ渡してくるのである。まあ、私は嫡女で、無駄に出費の多い妹に家を食い潰されるわけにはいきませんから、再利用させていただきますが。 でも、見た目の良い妹は、婚約者まで私から掠め取っていった。 こればっかりは、許す気にはなりません。 覚悟しなさいな、姉の渾身の一撃を。 全6話完結済み。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない

有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。 魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。 「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。 その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。 ──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。 全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。 だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。 「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」 その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。 裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。

〘完結〛婚約破棄?まあ!御冗談がお上手なんですね!

桜井ことり
恋愛
「何度言ったら分かるのだ!アテルイ・アークライト!貴様との婚約は、正式に、完全に、破棄されたのだ!」 「……今、婚約破棄と、確かにおっしゃいましたな?王太子殿下」 その声には、念を押すような強い響きがあった。 「そうだ!婚約破棄だ!何か文句でもあるのか、バルフォア侯爵!」 アルフォンスは、自分に反抗的な貴族の筆頭からの問いかけに、苛立ちを隠さずに答える。 しかし、侯爵が返した言葉は、アルフォンスの予想を遥かに超えるものだった。 「いいえ、文句などございません。むしろ、感謝したいくらいでございます。――では、アテルイ嬢と、この私が婚約しても良い、とのことですかな?」 「なっ……!?」 アルフォンスが言葉を失う。 それだけではなかった。バルフォア侯爵の言葉を皮切りに、堰を切ったように他の貴族たちが次々と声を上げたのだ。 「お待ちください、侯爵!アテルイ様ほどの淑女を、貴方のような年寄りに任せてはおけませんな!」 「その通り!アテルイ様の隣に立つべきは、我が騎士団の誉れ、このグレイフォード伯爵である!」 「財力で言えば、我がオズワルド子爵家が一番です!アテルイ様、どうか私に清き一票を!」 あっという間に、会場はアテルイへの公開プロポーズの場へと変貌していた。

断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった

Blue
恋愛
 王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。 「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」 シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。 アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

処理中です...