氷の魔術師(引きこもり)のはずなのに、溺愛されても困ります。

入海月子

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魔物の出現②

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「サナリは関係ない。連れていかない」

 執務室に入るなり、シーファはぶっきらぼうに宣言した。
 師団長は遠征に出る前に提出する書類があるのか、執務机でペンを走らせていた。

「補給係なんだ。連れていくのが当たり前だろ」
 
 忙しそうな師団長は苛ついた顔でシーファを見て、そっけなく言うと、また書類に目を落とした。

「サナリは違う! 僕には補給係なんて必要ない!」

 シーファが即座に否定すると、師団長は顔を上げ、ニヤリと笑う。
 
「違うのか? それなら、他の魔術師が指名していいな? サナリに興味を持っている者もいるようだから――」
「ダメだ!」

 皆まで言わせず、シーファが叫んだ。
 濃紺の瞳が尖って、周囲に冷気が立ち込めるが、師団長は意に介さず、ニヤニヤ笑いを引っ込めない。

「ダメもなにも、お前の補給係じゃないなら、他の者が指名しても、お前に邪魔する権利はない」

 そう言われて、シーファは悔しそうに黙る。そして、窺うようにサナリを見た。

「私だって嫌です!」
「ふん、お前にも拒否権はない。魔術師の補給係に指名されたら、先約がない限り拒否できない。それがこの国のルールだ」

 ムカッとしたが、そういう決まりだとシーファも言っていた。サナリも黙るしかなかった。
 不安そうにする彼女を見て、シーファはポツリとつぶやく。

「それじゃあ、僕がサナリを補給係に指名する……」

 驚いてバッとシーファを振り返ったサナリに、彼は慌てて弁解した。

「違うよ! 補給はしないけど、補給係にするってことだよ!」

 ほっとしたサナリを意味ありげに見て、師団長は口を歪めてせせら笑う。

「茶番だな。まぁいい。補給係ならやっぱり行かないといけないな?」
「どうしてそんなに私を同行したいんですか?」

 自分になにかさせるつもりかと、サナリは師団長を窺い見る。しかし、彼は肩をすくめ、そっけなく言うだけだった。

「別に。シーファは勝手な行動ばかりするから、目付役が必要だろうと思っただけだ」
「必要ない」

 シーファが即座に否定するも、師団長はうんざりしたように言った。

「お前にはなくても、俺には必要あるんだ。グダクダ言ってないで、さっさと準備してこい。俺は忙しいんだ」

 言うだけ言うと、師団長はシッシッと手を振って、追い払うようにサナリたちを退出させた。
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