氷の魔術師(引きこもり)のはずなのに、溺愛されても困ります。

入海月子

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単独行動②

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 バリケードを作りながら、シーファは足を止めない。
 とうとう魔物を射程範囲に捉えたようで、その集団のど真ん中に特大の氷魔法を放った。
 一瞬にして、十数頭が凍りついた。
 最初から飛ばしまくるシーファにサナリは心配でならなかった。
 想いが通じ合ったはずなのに、自分の身を顧みないシーファの戦い方は変わらず、胸が痛くなった。

 ――必ず守るから!

 そう言った力強い彼の言葉も、今となれば『僕は死んでもいいから』という言葉が隠れていたように感じられ、背筋が凍る。

「バカッ、もっと自分を大事にしてください!」

 やるせなくなったサナリはもはや声の届かない距離にいるシーファに文句を言い、自分の手を握りしめて、彼の無事を祈った。

 魔法の弾ける音、氷壁に魔物が激突する音、咆哮……戦場からずいぶん離れているのに、辺りには耳が痛いほどの轟音が鳴り響く。
 シーファは魔物の集団に魔法を打ち込んでいくが、凍った死体を乗り越え、また新たな魔物が湧いてくる。その様子はキリがないように見える。
 そのうち、横から回り込んでこようとする魔物の群れが現れた。

「危ない!」

 サナリが叫んだ。
 他の魔術師がその魔物を攻撃し、ひるんだところに騎士が氷の壁から飛び出し仕留めた。
 ようやくシーファを守る係の騎士も追いついたらしく、彼の背後につく。
 その陣形でひたすら彼らは戦い続けた。
 途中で交代する者もいたのに、シーファはちっとも帰ってこない。
 サナリはやきもきしながら、遠くの彼を見つめるしかできなかった。

 どれくらい経ったのだろうか。
 延々と続くように思えた魔物の群れもだんだん勢いを失くし、最後の一群がどさっと倒れたとき、わぁっと歓声があがった。
 そこには魔物の死体が累々と山になり、もう動くものはない。
 前の戦いのときよりも数は多かったが、密集していたので、戦っている時間は短かった。
 魔物たちは暴走していたので、シーファの作った氷壁に激突して死ぬものも多かったようだ。

「終わったの……?」
 
 サナリも喜びかけたが、シーファがゆらりと揺れて、膝をついたのを見て、悲鳴をあげた。

「シーファ!」

 彼のもとへ全速力で駆け出す。
 普段は走るなんてことのないので、自分の足が遅く、もつれそうになるのを不甲斐なく思った。

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