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side木佐
認識
宇沙ちゃんを認識したのはちょうど一年前だ。
少し前に総務部に可愛い子が入ったと同期の斉藤が騒いでいたが、俺は特に興味はなかった。総務部へ行ったときにチラリと見て、たしかに斉藤好みの清楚系だなと思っただけだった。
でも、ある日、総務部に経費精算の書類を持っていくと、営業の先輩がなにやら粘っている現場に遭遇した。
相手はまっすぐな黒髪が美しい女の子だった。
(あれはたしか宇沙見さんだったっけ?)
彼女は黒目がちの大きな瞳をしっかりと先輩の岡崎さんに合わせて、一生懸命説明していた。
「ですから、五万円以上で収入印紙の貼っていない領収書は受け取れないんです。再発行してもらっていただけますか?」
「そうは言っても、出張先のお店だよ?」
「郵送で対応してくれないでしょうか?」
「う~ん、どうだろう。やってくれなかったら、どうすればいい?」
「それはどうにかしてもらうしかありません」
宇沙ちゃんは困っているようで、うるうるの瞳で先輩を見上げつつも、言うべきことはしっかり言っていた。
(これはたしかに可愛い)
小動物のようで構いたくなる可愛らしさだ。
先輩も気持ちの半分くらいは可愛いからいじめているのだろうと思った。
「どうにかって、六万円を自費でかぶるのはきついよ~」
「そんなことは言っていません。収入印紙をもらってくださいと言っているだけで……」
「だけどさー、そのお店って小さいお店だし、対応してくれるかなぁ」
「ですから……」
岡崎さんはうだうだ言い、堂々巡りをしているようだ。
それでも、宇沙ちゃんは真面目に彼に対応していた。
「あの調子でもう三十分粘ってるんですよ。無理なのに」
そばにいた総務の子があきれたように、こそっと俺に告げる。
俺は見かねて声をかけた。
「不備があるんだから、あきらめましょうよ、岡崎さん。宇沙見さんがかわいそうですよ。皆さんの仕事の邪魔になってるし」
振り向いた岡崎さんは周りのあきれた視線を感じて、ばつの悪い顔をした。慌てて、撤収しようとする。
「じ、じゃあ、とりあえず、お店に連絡してみるよ」
「お願いします。それから、クレジットカードで支払うと収入印紙がいらないので、もしよろしければ次回からカード払いにすればこういうことがないかと……」
「そうなんだ。わかった。ありがとう」
ウザ絡みをしていた岡崎さんにちゃんとアドバイスまでしてあげる宇沙ちゃんはいい子だと思った。
彼が去ると、宇沙ちゃんは俺のほうを向いて、頭を下げる。
「ありがとうございました。助かりました」
「いいや、別に。お疲れさまだったね」
俺がいたわると、彼女はにこりと笑みを返してくれて、またぺこりとお辞儀をして自席に戻っていった。
面倒だったはずなのに、愚痴る様子もなく、好感が持てる。
なにより、その一瞬だけの笑顔に惹きつけられた。
少し前に総務部に可愛い子が入ったと同期の斉藤が騒いでいたが、俺は特に興味はなかった。総務部へ行ったときにチラリと見て、たしかに斉藤好みの清楚系だなと思っただけだった。
でも、ある日、総務部に経費精算の書類を持っていくと、営業の先輩がなにやら粘っている現場に遭遇した。
相手はまっすぐな黒髪が美しい女の子だった。
(あれはたしか宇沙見さんだったっけ?)
彼女は黒目がちの大きな瞳をしっかりと先輩の岡崎さんに合わせて、一生懸命説明していた。
「ですから、五万円以上で収入印紙の貼っていない領収書は受け取れないんです。再発行してもらっていただけますか?」
「そうは言っても、出張先のお店だよ?」
「郵送で対応してくれないでしょうか?」
「う~ん、どうだろう。やってくれなかったら、どうすればいい?」
「それはどうにかしてもらうしかありません」
宇沙ちゃんは困っているようで、うるうるの瞳で先輩を見上げつつも、言うべきことはしっかり言っていた。
(これはたしかに可愛い)
小動物のようで構いたくなる可愛らしさだ。
先輩も気持ちの半分くらいは可愛いからいじめているのだろうと思った。
「どうにかって、六万円を自費でかぶるのはきついよ~」
「そんなことは言っていません。収入印紙をもらってくださいと言っているだけで……」
「だけどさー、そのお店って小さいお店だし、対応してくれるかなぁ」
「ですから……」
岡崎さんはうだうだ言い、堂々巡りをしているようだ。
それでも、宇沙ちゃんは真面目に彼に対応していた。
「あの調子でもう三十分粘ってるんですよ。無理なのに」
そばにいた総務の子があきれたように、こそっと俺に告げる。
俺は見かねて声をかけた。
「不備があるんだから、あきらめましょうよ、岡崎さん。宇沙見さんがかわいそうですよ。皆さんの仕事の邪魔になってるし」
振り向いた岡崎さんは周りのあきれた視線を感じて、ばつの悪い顔をした。慌てて、撤収しようとする。
「じ、じゃあ、とりあえず、お店に連絡してみるよ」
「お願いします。それから、クレジットカードで支払うと収入印紙がいらないので、もしよろしければ次回からカード払いにすればこういうことがないかと……」
「そうなんだ。わかった。ありがとう」
ウザ絡みをしていた岡崎さんにちゃんとアドバイスまでしてあげる宇沙ちゃんはいい子だと思った。
彼が去ると、宇沙ちゃんは俺のほうを向いて、頭を下げる。
「ありがとうございました。助かりました」
「いいや、別に。お疲れさまだったね」
俺がいたわると、彼女はにこりと笑みを返してくれて、またぺこりとお辞儀をして自席に戻っていった。
面倒だったはずなのに、愚痴る様子もなく、好感が持てる。
なにより、その一瞬だけの笑顔に惹きつけられた。
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