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ぐりこ

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万病薬

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ヴェルナー.フックス博士は研究助手のミラと共にいた。

「くくく、やっと完成したぞ。」
ヴェルナー博士は深いしわのある口元から摩耗した歯を覗かせながら笑った。
「おめでとうございます。」
ミラは目に涙をためている。

ヴェルナー博士は薬学研究の世界的権威だ。博士が開発した数々の新薬は莫大な富と利益をもたらしていた。
それを証明するかのように研究者達の休憩室には賞状やトロフィー、勲章が所狭しと飾られている。

今回、ヴェルナー博士が開発に成功したのは今までの研究の集大成とも言えた。

「これが、万病を治す事が出来る薬なんですね・・・。」
ミラがヴェルナー博士の持つ丸底フラスコの中の白い小さな塊を見つめる。
「正確には体の中の異常を感知し、正常な状態に戻す薬じゃ。
人間本来の寿命を延ばす事は出来んが、大抵の病気は治るぞ。」
ヴェルナー博士がフラスコの中から薬を取り出した。
「では、早速実験してみたいのだが・・・。」
実はもうマウスを使った動物実験は行っていた。なので本来なら人に少量ずつ投与する治験を行うべきなのだが、ヴェルナー博士には悪癖があった。
完成したばかりの薬を自分や身近な人間で試すという悪癖が。
「私も試してみたいとは思いますが・・・。」
ミラはそう言いながら自分の体を見つめる。まだ20代であるミラには自分の体に特に異常を感じていなかった。細かい不調が無いことはないが実験には向かない。目に見える効果が確認出来てこそ実験の意味があるのだから。
「となるとやはり儂が適任よな。」
ヴェルナー博士が自分の額だか頭だかよく分からない部分を搔いた。

ヴェルナー博士は誰の目に見ても分かる高齢だった。腰は大きく曲がり、2本の足ではバランスがとれないので杖を使用している。
頭は額から頭頂部にかけて大きく禿げあがり、老人特有の濃いしみがいくつもあった。
顔には深い皺が刻まれ、皮膚はたるんでいたが、研究への好奇心が打ち勝つように目は大きく見開かれている。

博士は手に持った薬をパクリと口に入れひと飲みした。
すると瞬く間に変化が起こる。
曲がった腰はしなやかな茎のようにすらりと伸び上がり、2本の足でしっかりと立つ事が出来た。禿げ上がった頭部からは髪が生え、白髪のままではあったが、つやつやと光沢のある髪がフサフサと生えた。

「ふははは・・・!成功じゃ!成功じゃよ!」
ヴェルナー博士は立てるようになった足でジャンプしながら喜んだ。
ミラは割れんばかりに拍手を送っている。
ハゲって病気だったんだ・・・。ともミラは思うが、黙っていることにした。

「それでは早速量産体制に入ろう!」
ヴェルナー博士は実験台に向かった。
ところが、頭と手が動かない。どの薬剤をどのように調合すればいいのか、どの器具をどう扱えばいいのかがさっぱり分からなくなってしまった。
「どういうことじゃ・・・?」
博士は訳が分からなくなって、大量の冷や汗を流す。
博士の様子を傍で見ていたミラは恐る恐る意見を述べた。
「もしかして博士の天才的な脳が異常と感知され正常値になってしまったのでは・・・?」
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