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02 ガイド
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「セーブ!」
「アイテム!」
「帰還!!」
とにかく何か出てきそうな言葉を考えつくだけ叫んでいたが、何も出てこない。ネタも尽きてきたし嫌になってきた。
「タコ!」
「説明書読め!! すぐに電話してくんじゃねー」
「何にもしてないのにおかしくなりましたぁとか言うな!! 絶対お前がなんかしたんだから正直に言え!」
「OSアップデート勝手にかけてんじゃねー! こっちでかかんねーように設定してんだろうが!! 何でそこだけできんだクソが」
説明書読め、は俺もだったな。いやいや。こんな分かりにくいの問題だろ。
「アクセシビリティィィイ!」
[気が済みましたか?]
はっと振り返ると、変なものがぷかぷか浮かんでいた。薄緑色でなんとも言えない形をしている。あえて言うなら、マウスをもう少しコロンとさせたような、丸っこいウミウシをロボ化したような。
「何だこれ」
[私はゲームガイドの"インフォマ"です。この世界のご案内とあなたの戦闘のお手伝いをします]
「最初から出てこいよ!」
[最初からいましたけど]
「えっ」
インフォマ、という物体は左肩の後ろあたりにいる。確かに見てなかった。見るか? そんなとこ、あえて。
[あなたがこちらを全く振り返らないものですから。いつ気がつくのかなと]
「声をかけろよ!」
[自分の世界に入っているようでしたので]
「はあ……」
[まず、私に名前を付けてください]
「あのさ、そういうのは後にしたいのよ。俺はとりあえず一回ログアウトしたいんだ。もうさ、一時か二時か、それくらいだと思うんだ。さすがに寝ないと」
[ログアウト]
「ログアウトだよ。ゲームを終わらせたいの」
[ログアウトという概念は存じ上げませんが、ゲームはクリアすれば終わります]
「はあ?」
[クリアすれば終了です。私に名前を付けてください]
わけがわからん。そういう仕様のマスコット的なやつなのか。もしかしたらチュートリアルなのかも知れない。終わったら終われるかも。
「じゃあ……ニド」
[ニド。了解です]
「で、どうすればいい?」
[とりあえず狩でもなさってレベルを上げてみてはいかがですかね]
なんだこの投げやりなマスコットは。
「武器は?」
[初期装備ならもうお持ちですが]
言われてもう一度自分を見てみる。背中に太刀を背負っていた。腰に袋があり、何か入っている。ちょっと覗いてみると数枚の手裏剣があった。
「おー! なるほど。手裏剣は何枚投げられんの?」
[お持ちの分だけですね。レベルが上がると枚数も増えますし、減った分も補充されます]
「結構厳しい!」
太刀を抜いてみる。見た目ほど重くない。調整されているのかもしれない。振っていると、足元に掌サイズの蜘蛛みたいなモンスターが湧き出した。
「げっ」
[一番弱いモンスターです]
思わず反射的に踏む。ぐしゃり。音。ぬめぬめした体液の感触。きんもっ!
「うわあ~やだなコレ……」
[あ、体液には毒があるんで]
「早く言えよ!」
わらわらと蜘蛛が近づいてきた。太刀で切ってみる。なんかこう、エフェクトが出て何匹か一気に薙ぎ払えたりしないかな……と一瞬期待したがそんなことはなくて、モグラ叩きみたいに1匹ずつ潰して行くしかない。随分地味で現実的……。VRって、ゲームってこういうのじゃなくね? もっとこうさ!!
「必殺技みたいなのないの?」
[出したいですか?]
「出したいよ!! こんなにちまちまやってらんねー」
[では、『影下跳梁』と叫んでください]
「おっ! なんか強そうじゃん。エイカチョウリョウ!」
ひらっと体が空を切る。視界が回る。こりゃ凄い……。
すたん、と地面に着地。
「は?」
蜘蛛は自分達の後ろに着地した俺に気付き、向きを変えてまたにじり寄ってくる。
「おい! なんも起きねーぞ」
[起きたじゃないですか。敵の後ろを取ったでしょう]
「はああ?」
仕方なく蜘蛛を太刀の先で突き殺すのを再開する。まさか……。
「他に何か……」
[あなたの持つ特殊スキルは『影下跳梁』だけです]
「はあああああ??」
[しかしこのスキルには唯一ディレイがないという強みがあります。良かったですね]
「ディレイがないってのは、連発できるってこと?」
[そうです。他のスキルはそれなりにディレイがありますからね。とてもお得ですよ]
がっかりしながらとにかくぷすぷすと蜘蛛を潰していると、下から風が吹き上がるような不思議な感じがした。
[おめでとうございます。レベルアップです]
「お! レベルいくつ?」
[2ですよ]
まじか……。蜘蛛もだいたい潰し終わったようだ。これで終わりかな?
[来ますよ]
「何が」
くるりと首を巡らすと、小山のようなものが近づいてくる。なんだあれは?
[親です]
「何の?」
[先程あなたが殺した子蜘蛛]
「はああ??」
八つの目が爛々と赤く輝いているのが土煙の隙間から見えた。尖った爪。牙。
「あんなん俺が殺せんの?」
[やってみては? あっちはレベル10です]
「ちょっ……」
逃げよう。無理だ。背中を向けて一目散に走るが、とても逃げ切れるスピードではない。
[こう言う時に使うスキルなんですよ]
「ハアハア……何が?!」
[影下跳梁]
「影下跳梁!!!」
叫ぶなり、ワープでもしたように大蜘蛛の背中が目の前に現れた。きびすを返して逃げ出す。蜘蛛の方は後ろにいるとは思わないらしく、そのまま真っ直ぐ走って行く……。
「ハア……ハア……ハア……」
[大丈夫ですか?]
「助かった……」
また風が足元から起こる。レベルアップ?
[レベルが高い相手から逃げることに成功すると経験値が少し入ります。良かったですね]
「よくねえよ! あんなの死ぬだろ!」
[まあ、次はもう少しレベルに見合ったモンスターの湧くフィールドに入りましょう。マップ上でエンカウントするエネミーはレベルがランダムなので危険なんです]
「てか、このチュートリアルはいつまでやんの?」
[チュートリアルではありませんよ。あなたの戦いは始まったばかりです]
「はああああ?」
[もう少し直進すればモスキートが出る森がありますから。さあ、歩いて]
とんでもねえ。クソゲーかよ。
でもなんとなくわかった。これは多分明晰夢というやつだ。俺はベッドセットしか付けてない。それなのに足に蜘蛛の感触がしたり、風を感じたりというのはおかしい。いつの間にか眠ってしまったんだろう。
社畜根性で5時には目が覚めるはずだ。それまでせいぜいこのゲームを楽しもうじゃないか。
「アイテム!」
「帰還!!」
とにかく何か出てきそうな言葉を考えつくだけ叫んでいたが、何も出てこない。ネタも尽きてきたし嫌になってきた。
「タコ!」
「説明書読め!! すぐに電話してくんじゃねー」
「何にもしてないのにおかしくなりましたぁとか言うな!! 絶対お前がなんかしたんだから正直に言え!」
「OSアップデート勝手にかけてんじゃねー! こっちでかかんねーように設定してんだろうが!! 何でそこだけできんだクソが」
説明書読め、は俺もだったな。いやいや。こんな分かりにくいの問題だろ。
「アクセシビリティィィイ!」
[気が済みましたか?]
はっと振り返ると、変なものがぷかぷか浮かんでいた。薄緑色でなんとも言えない形をしている。あえて言うなら、マウスをもう少しコロンとさせたような、丸っこいウミウシをロボ化したような。
「何だこれ」
[私はゲームガイドの"インフォマ"です。この世界のご案内とあなたの戦闘のお手伝いをします]
「最初から出てこいよ!」
[最初からいましたけど]
「えっ」
インフォマ、という物体は左肩の後ろあたりにいる。確かに見てなかった。見るか? そんなとこ、あえて。
[あなたがこちらを全く振り返らないものですから。いつ気がつくのかなと]
「声をかけろよ!」
[自分の世界に入っているようでしたので]
「はあ……」
[まず、私に名前を付けてください]
「あのさ、そういうのは後にしたいのよ。俺はとりあえず一回ログアウトしたいんだ。もうさ、一時か二時か、それくらいだと思うんだ。さすがに寝ないと」
[ログアウト]
「ログアウトだよ。ゲームを終わらせたいの」
[ログアウトという概念は存じ上げませんが、ゲームはクリアすれば終わります]
「はあ?」
[クリアすれば終了です。私に名前を付けてください]
わけがわからん。そういう仕様のマスコット的なやつなのか。もしかしたらチュートリアルなのかも知れない。終わったら終われるかも。
「じゃあ……ニド」
[ニド。了解です]
「で、どうすればいい?」
[とりあえず狩でもなさってレベルを上げてみてはいかがですかね]
なんだこの投げやりなマスコットは。
「武器は?」
[初期装備ならもうお持ちですが]
言われてもう一度自分を見てみる。背中に太刀を背負っていた。腰に袋があり、何か入っている。ちょっと覗いてみると数枚の手裏剣があった。
「おー! なるほど。手裏剣は何枚投げられんの?」
[お持ちの分だけですね。レベルが上がると枚数も増えますし、減った分も補充されます]
「結構厳しい!」
太刀を抜いてみる。見た目ほど重くない。調整されているのかもしれない。振っていると、足元に掌サイズの蜘蛛みたいなモンスターが湧き出した。
「げっ」
[一番弱いモンスターです]
思わず反射的に踏む。ぐしゃり。音。ぬめぬめした体液の感触。きんもっ!
「うわあ~やだなコレ……」
[あ、体液には毒があるんで]
「早く言えよ!」
わらわらと蜘蛛が近づいてきた。太刀で切ってみる。なんかこう、エフェクトが出て何匹か一気に薙ぎ払えたりしないかな……と一瞬期待したがそんなことはなくて、モグラ叩きみたいに1匹ずつ潰して行くしかない。随分地味で現実的……。VRって、ゲームってこういうのじゃなくね? もっとこうさ!!
「必殺技みたいなのないの?」
[出したいですか?]
「出したいよ!! こんなにちまちまやってらんねー」
[では、『影下跳梁』と叫んでください]
「おっ! なんか強そうじゃん。エイカチョウリョウ!」
ひらっと体が空を切る。視界が回る。こりゃ凄い……。
すたん、と地面に着地。
「は?」
蜘蛛は自分達の後ろに着地した俺に気付き、向きを変えてまたにじり寄ってくる。
「おい! なんも起きねーぞ」
[起きたじゃないですか。敵の後ろを取ったでしょう]
「はああ?」
仕方なく蜘蛛を太刀の先で突き殺すのを再開する。まさか……。
「他に何か……」
[あなたの持つ特殊スキルは『影下跳梁』だけです]
「はあああああ??」
[しかしこのスキルには唯一ディレイがないという強みがあります。良かったですね]
「ディレイがないってのは、連発できるってこと?」
[そうです。他のスキルはそれなりにディレイがありますからね。とてもお得ですよ]
がっかりしながらとにかくぷすぷすと蜘蛛を潰していると、下から風が吹き上がるような不思議な感じがした。
[おめでとうございます。レベルアップです]
「お! レベルいくつ?」
[2ですよ]
まじか……。蜘蛛もだいたい潰し終わったようだ。これで終わりかな?
[来ますよ]
「何が」
くるりと首を巡らすと、小山のようなものが近づいてくる。なんだあれは?
[親です]
「何の?」
[先程あなたが殺した子蜘蛛]
「はああ??」
八つの目が爛々と赤く輝いているのが土煙の隙間から見えた。尖った爪。牙。
「あんなん俺が殺せんの?」
[やってみては? あっちはレベル10です]
「ちょっ……」
逃げよう。無理だ。背中を向けて一目散に走るが、とても逃げ切れるスピードではない。
[こう言う時に使うスキルなんですよ]
「ハアハア……何が?!」
[影下跳梁]
「影下跳梁!!!」
叫ぶなり、ワープでもしたように大蜘蛛の背中が目の前に現れた。きびすを返して逃げ出す。蜘蛛の方は後ろにいるとは思わないらしく、そのまま真っ直ぐ走って行く……。
「ハア……ハア……ハア……」
[大丈夫ですか?]
「助かった……」
また風が足元から起こる。レベルアップ?
[レベルが高い相手から逃げることに成功すると経験値が少し入ります。良かったですね]
「よくねえよ! あんなの死ぬだろ!」
[まあ、次はもう少しレベルに見合ったモンスターの湧くフィールドに入りましょう。マップ上でエンカウントするエネミーはレベルがランダムなので危険なんです]
「てか、このチュートリアルはいつまでやんの?」
[チュートリアルではありませんよ。あなたの戦いは始まったばかりです]
「はああああ?」
[もう少し直進すればモスキートが出る森がありますから。さあ、歩いて]
とんでもねえ。クソゲーかよ。
でもなんとなくわかった。これは多分明晰夢というやつだ。俺はベッドセットしか付けてない。それなのに足に蜘蛛の感触がしたり、風を感じたりというのはおかしい。いつの間にか眠ってしまったんだろう。
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