弱職忍者はなりきり悪魔っ娘と「敵の後ろに回り込むスキル」で無双したい!

白遠

文字の大きさ
19 / 28

19 追撃

しおりを挟む
 なんとか街まで辿り着き、温泉に入ることができた。

「あの人数は厳しかったなあ」
「『烈火』が嫌だな」
「ああ。あとあの忍者だな……」

 影下跳梁をうまく使われるとすぐに死んでしまう。実感した。死角から飛んでくる手裏剣と真後ろからの攻撃というのは、敵になってみるとめちゃくちゃ厄介だ。

「少し対策を練らないとな。あー疲れた」
「そうだな」

 サタンが温泉の淵に腰掛けた。休憩。

 サタンの後ろに人影が立った。太刀がサタンの喉元に当てられる。

「うわっ」

 とっさに手裏剣を投げつける。太刀を持つ手の甲に突き刺さって手が引っ込む。サタンが温泉の中に転がり込むと、首につけられた太刀の傷が消えた。

「もう追っ手かよ」

 温泉の中にずっといれば生きてはいられるかもしれないが、どんどん連合軍のプレイヤーが集まって来ていつかは引き摺り出されるだろう。サタンを担ぐ。

「攻撃すんな。影下跳梁を使われてまた忍者に寄られる」

 忍者は対人特化。嫌な感じだ。まとにならないように屋根の上にはあまり出ないことにする。街の外に……。

「『メテオレイン』!」
「!」

 広場の上に黒雲が現れる。打ち合わせたのかよ……。全力疾走だ。この辺から離れないといけない。地震のような地響きと共に物凄い数の隕石が落ちてくる。一階建ての家を飛び越える。着地点に誰かいる。勇者か。目が合う。齊藤だ。

「『英雄の閃光』!」
「『影下跳梁』」

 紙一重で躱す。とんと屋根に乗ると、町中にプレイヤーが散っているのが見えた。こんなに……。

[危ない]

 ニドの声が聞こえると同時に、ニドに矢が突き刺さって砕け散った。一転突破を使われたのかもしれない。また身代わりになってくれたのか。

「そっちに行ったぞ!」

 屋根から飛び降りる。道の向こうから誰かが駆けてくる。反対側を振り向く。そっちからも何人かがこちらに向かってくるのが見えた。挟み撃ちになる。飛んで二階へ……。

 二階の高さに飛び上がった瞬間、目の前に忍者が同じように飛び上がっていた。見たことがある顔だ。

 ルイ?

 だだっと手裏剣が飛んでくる。まずい! 逃げられない……

 背中の方から放たれた黒い渦がそれを受け止めた。

「『影下跳梁』」

 ルイがスキルを唱える。その瞬間、目の前から姿を消す。後ろを取られる。前に出るしかない。サタンが半身を捻って唱える。

「『妨げる者』!」

 一斉に皆が動きを止めた。いいタイミング。いける……。固まったやつらの他に散らばっていた数人の攻撃を掻い潜ってマップに飛び出す。抜けた!

「はあ……」
「ニドが……」

 ニドを生き返らせるために、また街に行かないといけない。でもたぶん、俺たちの居場所がバレた速さからすると……。

「誰かが忍者でレベル35になったな。『飛天』を使ってると思う」
「お前もそう思うか」

 そうなるとどこが一番安全なのか。

「ピュグマリオンの神殿のフィールドはどこだったか覚えているか? あそこ……」
「あそこに逃げ込む気なのか? エネミーのレベルが高い。エネミーとも戦わなければならない」
「それは相手方も同じだからさ。エネミーたちは俺たちばかりを狙うわけじゃない。急ごう。マップ上で出くわさないとも限らないんだ」

 それにあそこで石像を一体倒せればレベルが上がってニドも戻ってくる。サタンに誘導してもらってフィールドに入る。早速ピュグマリオンが動き出した。

 頭を使わないとな。

「サタン、ピュグマリオンをプレイヤーの初期位置に誘導する。お前は隠れていろ……そうだ」

 






 
 

 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元商社マンの俺、異世界と日本を行き来できるチートをゲットしたので、のんびり貿易商でも始めます~現代の便利グッズは異世界では最強でした~

黒崎隼人
ファンタジー
「もう限界だ……」 過労で商社を辞めた俺、白石悠斗(28)が次に目覚めた場所は、魔物が闊歩する異世界だった!? 絶体絶命のピンチに発現したのは、現代日本と異世界を自由に行き来できる【往還の門】と、なんでも収納できる【次元倉庫】というとんでもないチートスキル! 「これ、最強すぎないか?」 試しにコンビニのレトルトカレーを村人に振る舞えば「神の食べ物!」と崇められ、百均のカッターナイフが高級品として売れる始末。 元商社マンの知識と現代日本の物資を武器に、俺は異世界で商売を始めることを決意する。 食文化、技術、物流――全てが未発達なこの世界で、現代知識は無双の力を発揮する! 辺境の村から成り上がり、やがては世界経済を、そして二つの世界の運命をも動かしていく。 元サラリーマンの、異世界成り上がり交易ファンタジー、ここに開店!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...