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19 追撃
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なんとか街まで辿り着き、温泉に入ることができた。
「あの人数は厳しかったなあ」
「『烈火』が嫌だな」
「ああ。あとあの忍者だな……」
影下跳梁をうまく使われるとすぐに死んでしまう。実感した。死角から飛んでくる手裏剣と真後ろからの攻撃というのは、敵になってみるとめちゃくちゃ厄介だ。
「少し対策を練らないとな。あー疲れた」
「そうだな」
サタンが温泉の淵に腰掛けた。休憩。
サタンの後ろに人影が立った。太刀がサタンの喉元に当てられる。
「うわっ」
とっさに手裏剣を投げつける。太刀を持つ手の甲に突き刺さって手が引っ込む。サタンが温泉の中に転がり込むと、首につけられた太刀の傷が消えた。
「もう追っ手かよ」
温泉の中にずっといれば生きてはいられるかもしれないが、どんどん連合軍のプレイヤーが集まって来ていつかは引き摺り出されるだろう。サタンを担ぐ。
「攻撃すんな。影下跳梁を使われてまた忍者に寄られる」
忍者は対人特化。嫌な感じだ。的にならないように屋根の上にはあまり出ないことにする。街の外に……。
「『メテオレイン』!」
「!」
広場の上に黒雲が現れる。打ち合わせたのかよ……。全力疾走だ。この辺から離れないといけない。地震のような地響きと共に物凄い数の隕石が落ちてくる。一階建ての家を飛び越える。着地点に誰かいる。勇者か。目が合う。齊藤だ。
「『英雄の閃光』!」
「『影下跳梁』」
紙一重で躱す。とんと屋根に乗ると、町中にプレイヤーが散っているのが見えた。こんなに……。
[危ない]
ニドの声が聞こえると同時に、ニドに矢が突き刺さって砕け散った。一転突破を使われたのかもしれない。また身代わりになってくれたのか。
「そっちに行ったぞ!」
屋根から飛び降りる。道の向こうから誰かが駆けてくる。反対側を振り向く。そっちからも何人かがこちらに向かってくるのが見えた。挟み撃ちになる。飛んで二階へ……。
二階の高さに飛び上がった瞬間、目の前に忍者が同じように飛び上がっていた。見たことがある顔だ。
ルイ?
だだっと手裏剣が飛んでくる。まずい! 逃げられない……
背中の方から放たれた黒い渦がそれを受け止めた。
「『影下跳梁』」
ルイがスキルを唱える。その瞬間、目の前から姿を消す。後ろを取られる。前に出るしかない。サタンが半身を捻って唱える。
「『妨げる者』!」
一斉に皆が動きを止めた。いいタイミング。いける……。固まったやつらの他に散らばっていた数人の攻撃を掻い潜ってマップに飛び出す。抜けた!
「はあ……」
「ニドが……」
ニドを生き返らせるために、また街に行かないといけない。でもたぶん、俺たちの居場所がバレた速さからすると……。
「誰かが忍者でレベル35になったな。『飛天』を使ってると思う」
「お前もそう思うか」
そうなるとどこが一番安全なのか。
「ピュグマリオンの神殿のフィールドはどこだったか覚えているか? あそこ……」
「あそこに逃げ込む気なのか? エネミーのレベルが高い。エネミーとも戦わなければならない」
「それは相手方も同じだからさ。エネミーたちは俺たちばかりを狙うわけじゃない。急ごう。マップ上で出くわさないとも限らないんだ」
それにあそこで石像を一体倒せればレベルが上がってニドも戻ってくる。サタンに誘導してもらってフィールドに入る。早速ピュグマリオンが動き出した。
頭を使わないとな。
「サタン、ピュグマリオンをプレイヤーの初期位置に誘導する。お前は隠れていろ……そうだ」
「あの人数は厳しかったなあ」
「『烈火』が嫌だな」
「ああ。あとあの忍者だな……」
影下跳梁をうまく使われるとすぐに死んでしまう。実感した。死角から飛んでくる手裏剣と真後ろからの攻撃というのは、敵になってみるとめちゃくちゃ厄介だ。
「少し対策を練らないとな。あー疲れた」
「そうだな」
サタンが温泉の淵に腰掛けた。休憩。
サタンの後ろに人影が立った。太刀がサタンの喉元に当てられる。
「うわっ」
とっさに手裏剣を投げつける。太刀を持つ手の甲に突き刺さって手が引っ込む。サタンが温泉の中に転がり込むと、首につけられた太刀の傷が消えた。
「もう追っ手かよ」
温泉の中にずっといれば生きてはいられるかもしれないが、どんどん連合軍のプレイヤーが集まって来ていつかは引き摺り出されるだろう。サタンを担ぐ。
「攻撃すんな。影下跳梁を使われてまた忍者に寄られる」
忍者は対人特化。嫌な感じだ。的にならないように屋根の上にはあまり出ないことにする。街の外に……。
「『メテオレイン』!」
「!」
広場の上に黒雲が現れる。打ち合わせたのかよ……。全力疾走だ。この辺から離れないといけない。地震のような地響きと共に物凄い数の隕石が落ちてくる。一階建ての家を飛び越える。着地点に誰かいる。勇者か。目が合う。齊藤だ。
「『英雄の閃光』!」
「『影下跳梁』」
紙一重で躱す。とんと屋根に乗ると、町中にプレイヤーが散っているのが見えた。こんなに……。
[危ない]
ニドの声が聞こえると同時に、ニドに矢が突き刺さって砕け散った。一転突破を使われたのかもしれない。また身代わりになってくれたのか。
「そっちに行ったぞ!」
屋根から飛び降りる。道の向こうから誰かが駆けてくる。反対側を振り向く。そっちからも何人かがこちらに向かってくるのが見えた。挟み撃ちになる。飛んで二階へ……。
二階の高さに飛び上がった瞬間、目の前に忍者が同じように飛び上がっていた。見たことがある顔だ。
ルイ?
だだっと手裏剣が飛んでくる。まずい! 逃げられない……
背中の方から放たれた黒い渦がそれを受け止めた。
「『影下跳梁』」
ルイがスキルを唱える。その瞬間、目の前から姿を消す。後ろを取られる。前に出るしかない。サタンが半身を捻って唱える。
「『妨げる者』!」
一斉に皆が動きを止めた。いいタイミング。いける……。固まったやつらの他に散らばっていた数人の攻撃を掻い潜ってマップに飛び出す。抜けた!
「はあ……」
「ニドが……」
ニドを生き返らせるために、また街に行かないといけない。でもたぶん、俺たちの居場所がバレた速さからすると……。
「誰かが忍者でレベル35になったな。『飛天』を使ってると思う」
「お前もそう思うか」
そうなるとどこが一番安全なのか。
「ピュグマリオンの神殿のフィールドはどこだったか覚えているか? あそこ……」
「あそこに逃げ込む気なのか? エネミーのレベルが高い。エネミーとも戦わなければならない」
「それは相手方も同じだからさ。エネミーたちは俺たちばかりを狙うわけじゃない。急ごう。マップ上で出くわさないとも限らないんだ」
それにあそこで石像を一体倒せればレベルが上がってニドも戻ってくる。サタンに誘導してもらってフィールドに入る。早速ピュグマリオンが動き出した。
頭を使わないとな。
「サタン、ピュグマリオンをプレイヤーの初期位置に誘導する。お前は隠れていろ……そうだ」
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