【短編集】リアル・ラブドールの憂鬱

ジャン・幸田

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 ラブドール・タイプ58は”ラボ”で用意されているラブドールの頭部のなかではアニメマスクに分類されていた。用意されている頭部はアニメキャラのほかにもケモノやリアル、ホラー(どんな人が指名するんだろ?)など様々なものがあるが、私はもっぱらタイプ58の内臓にされる場合が多い。

 このタイプはお姉さまキャラで、面長の顔に長く三つ編みにした髪で少し古風なタイプだった。私が選ばれるのは痩せていて長身だからだ。おまけにペチャパイだし・・・

 それはともかく、首から下は既にラブドールになっている私の頭部を、その顔の内臓に改造する番だ。ちなみに人形は呼吸などしない! という設定なので肺の中に酸素交換可能な液体が注入する作業が始まった。

 詳しいシステムはよくわからないけど、超濃度に酸素が溶け込んだ特殊な液体を肺の中に挿入することで、大気に依存せずに生存可能になる長期着用型宇宙服の技術だという。理論上は数年以上、酸素の供給があれば生存できるという事だ。

 もっとも、そこまで必要はないので、ラブドールの場合、大きな胸の中に酸素圧縮装置があって、空気中の酸素はラブドールの股間の吸気口から取り入れられているのだという。だからラブドールにされた女は股間から呼吸してオッパイで酸素を吸収してから、口から挿入された管で内臓に必要な酸素が送り込まれるというわけだ。だから、ラブドールになると自分の声ではしゃべれなくなってしまう!

 「じゃあねえ、58を被せるわね。そのまえに辛抱してね」

 そういってジャンヌさんは私の頭にヘッドギアみたいなものを被せた。それは私を人形の頭に変えてしまうものだ。その時、私の頭は人形の中身にされてしまう!

 思いっきり口を開けられ、ロボットアームが私の口と鼻に管を挿入し始めた! 

 「あががが!」

 私は歯医者で無理矢理治療されているような気分になった。でも、本当は身体の奥深くまでかき回されているのだ! しばらくするとシステムのセッティングが完了し私は呼吸しなくなり、変わりに人形のオッパイの中で酸素濃縮装置が作動し、ヴァキアの脇から空気の流れが起き始めた。人形として息をし始めた瞬間だ。

 それと並行して私の頭に58の顔が被せられていった。私の眼窩にヴァイザーレンズが入れられ、口蓋は特殊な樹脂を入れられ固定され、頭部はポリマーで覆われたと同時にドールの骨格が被せられた。そして58の顔面の皮膚がつけられウィッグがはめられた。

 私はしばらく呆然としていたらジャンヌさんが私の顔を擦り始めた。さっきとは違い互いに人形になっていたので表情も動くことは無く呼吸もしていなかった。そして私は・・・発声練習をしはじめた、人形として!

 「これで58ちゃんになったわね。何かしゃべってみて」

 私たちラブドールには人工発声装置が内臓されている。これは脱ぐことのできない宇宙服を着た者同士のコミュニケーションのために開発されたもので、脳波を読み取ってAIが発音してくれるものだ。

 「えー、あー、私はお人形ですわ!」

 その声は58のモデルになったとあるアニメのキャラクターの声優と酷似していた。

 「もうちょっと考えた方が良いわよ、最初に一声は! いつもそれなんだから!」

 そう言いながら、ジャンヌさんは衣装ケースを持ってきた。それは今日お客様の所に着ていく衣装だ!

 「め、メイド服?」

 私は、それって定番じゃん! と思った。しかも内臓の私が着たら衣装の方が悲鳴をあげそうなぐらい可愛らしいフリフリのメイド服だった!

 「そうよ、だって家事をするんだからね、あなたは! なんなら着物でも良いのよ、少し息苦しいかもしれないけど」

 そう言われている間、私は下着をつけていた。人形と言えども下着なしではいけないから。
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