【短編集】リアル・ラブドールの憂鬱

ジャン・幸田

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 ラブドール・タイプ58に生まれ変わったわたしは着替えていた。ここで製造されるラブドールは全て固有名詞ではなくナンバーで呼ばれている。これは派遣されるたびにユーザーが自分の好みの名前が付けられるからだ。もっとも広告上は愛称みたいなものはあるけど。それにラブドール・タイプ58は同型が三体あって、場合によって一卵性の姉妹というプレイもオプションで可能とされている。

 またラブドールには美少女型のほかにも、雌雄同体のフタナリ型や美少年型やマッスル男性型もあって、その内臓は男性が入っている事もあるみたいけど、それらはジャンヌさんが言うだけのことなどで、見た事はなかったけど。

 メイド服に着替えた私はチェック用の大きな壁面にある鏡で確認した。そこに映る私はもう自分のものではなかった。体形が自分ではないからだ。私の肉体を覆うポリマーラバースーツによって強制的に細胞レベルで体形が補正されているからだ。ウエストは引き締まりバストは美しく盛り上がりヒップは魅力的になっていた。その姿は女であるはずの自分が惚れそうになりそうであった。

「58ちゃん、気分はいかがかしら?」

 ジャンヌさんはそういって近づいて来た。鏡には二体の等身大人形が写っていた。それは等身大のマネキンがいるようだったが、いつもジャンヌさんがいうことがあった、それは・・・

 「いいですわ」

 わたしはそういうとメイド服のスカートをひらひらさせていた。そして普段の自分ではしない可愛らしい仕草をしてみた。

 「いつも言う事だけど、これから行くご主人様にお答えするのよ。それに内臓も今の姿に相応しいものに変わるのよ。それにね、プロテクトをかけるからね」

 彼女が言うプロテクトとは、ラブドールとして勝手な行動を取れないようにすることだ。いまのように自由に動けるのとは別に人形のように動かなくすることだ。そう全身が硬直した状態になる事だ。ジャンヌさんは58の小さなリモコンの形をした機能制御盤を操作すると、私の全身から力が抜けた。

 人形そのものになった私の身体を、入室してきた作業員が梱包し始めた。私は今日の派遣先まで箱にいれられてしまうのだ。わたしは人間ではなく人形なのだ。

 カートに乗せられ地階にある発着場にとめてある配達車にいれられ、いづこかへと向かった。箱の中にいれられている私はどこに向っているのか知ることは出来なかった。ただ、今日は高速道路に入り少し遠い所に向っているようだった。今日のマスターはどんな人なんだろう?
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