【短編集】リアル・ラブドールの憂鬱

ジャン・幸田

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 人形娘体操をすることで動作に問題ない事が確認された。私は「女の子」入りのラブドールに生まれ変わったのだ。この姿から人間に戻る手段はラボに戻るしかなかった。だから派遣されたら回収してもらわないとならなかった。聞いた話では、派遣先の男があまりにも気に入ってしまい延長に次ぐ延長で半月も人形にされたままの女の子もいたというから恐ろしい話である。

 「58! ではクライアントの所に行くぞ!」

 そう言われ私は移動用ケースの中へ入った。このケースに入る事で私は完全に人形娘になった。移動中はいつも眠る事にしていた。もうやることがないからだ。個人用の携帯なんて所持できないし、もう人間ではないから当然だった。人形が自分の意志で動き回るなんてありえないことだし。

 そしてとある場所につくと、私を入れたケースはカートに乗せられてワゴンから降りた。今日の派遣先はエントランスが開く様な音がしてエレベーターに乗ったので、たぶんどこかのマンションに向っているようだ。私を送り届けるために。

 「お世話になります。キジネコ・サービスです」

  今日の「職場」に到着したようだ。ここでケースから出る事が出来た。ただ、まど稼働許可が出ていないので動けなかったけど。

  「それでは署名をここにお願いします。それとお支払いはクレジットですか、それとも電子マネーですか?」

  私の目の前で、男たちがタブレットで契約手続きが行なわれていた。ここでは私は商品なのだ。

  「お客様に最終確認です、このラブドールのレンタル期間は24時間です。24時間経過しましたら回収しにやってきます、注意事項ですが、中身については詮索しない! また物理的破壊は厳禁です。もし守っていただけない場合には違約金として料金の10倍を請求します、それと細かい事についてはスクロールして確認してください」

  いまタブレットを操作している男は今日の私のマスターのようだ。今日の客は割合ハンサムな男で安心した。

  「それじゃあ、僕が24時間この娘と何をしてもかまわないということですね?」

  「ええ、そうですよ。でも優しくしてくださいね。この娘は生きているのですから。大事に楽しんでくださいね!」

  私、58の服装はメイド服であったが、何故かスベスベのペイル・ピンクのタイツが着せられていた。今の私は着ぐるみ美少女だ。

  「取り扱いですが・・・まあ傷んだり壊れたりしない程度で御願いします。いま初期設定でスリープモードにしておりますが、そのままスリープモードで楽しまれても、起動させても構いませんが、楽しみ方についてはこの娘に話しかけてください。可能な限り答えるはずですから」

  そう説明している間に私を人形にしている統括システムがあの男をマスターとして認識し、指示に従うようにとプログラムしていた。そして私はあの男の専属ラブドールになった。

 帰る時に私を運んできた男が耳元で「いやかもしれないけど頑張れよ」とささやいで帰っていった。というのは、生身の女でなくリアル・ラブドールをデリバリーする男は一癖も二癖もあるような連中が多いからだ。

  この部屋にはラブドールの私と男だけになった。すると男はこういった。

  「名前は・・・マリアンナにしよう。僕の好きな女優の名前だからな。それとモードは・・・とりあえず起きてくれたまえ!」

  マリアンナと名付けられた私ははすくっと立ち上がった。そしてプログラム通りに人工音声でこう応答した。

  「おはようございます! なにから始めましょうか?」

  「それじゃあ・・・とりあえず部屋の掃除をしてくれないか?」

  マリアンナとなった私は内心あっけにとられていた。大抵の客はエッチな事を最初に要求することが多いからだ。まあ、こんな客もいるんだと思って部屋の掃除を始めたけど、その男のイヤラシイ視線を感じていた。 
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