【短編集】リアル・ラブドールの憂鬱

ジャン・幸田

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マリアンヌの派遣

2-1

 着ぐるみ美少女のようなラブドールを派遣してもらう男っていったいなに? マリアンヌの内臓となった私は考えていた。変態それとも?

 私は男の部屋の掃除を始めた。部屋はそこそこ広く、窓からは遠くまで見通せるのでタワーマンション、しかも上層階にあるようだった。契約では派遣先の部屋から出るオプションは選択されていないので、派遣期間終了までこの部屋から一歩も出る必要はなかった。それはともかく、調度品は洗練された高級品で、生活水準は高そうだった。

 マリアンヌのオーナーの男は中年、おそらく40半ばで多分独身だった。部屋にある用品を見れば一目瞭然だった。まあ、何をするかというのは既にオプションでオーダーされたことを確認しているので想像は出来た。

 「マリアンヌ、掃除が終わったらソファーに来なさい。僕の隣に座って」

 オーナーはそう言ってくれたが、為人はよさそうで、良き家庭の主人の典型的なタイプだった。そんな男がなぜ動き回るラブドールを派遣させたのか理解できない面もあった。

 「かしこまりました、ご主人様」

 私を覆うスーツは自動的に応答してくれたが、内臓の私はマリアンヌを稼働させるためのパワーソースであり、骨組みなので、私の頭部を覆う人工知能からの指示で動いていた。だから人間である時よりも効率的に家事をこなしていた。

 掃除が終わり今のソファーに向うとオーナーが座っていた。私は手招きされて横に座った。それは人形の姿にされているので、当然のことだ。オーナーは横に座った私の肩に手を回し、傍へと近づけた。肩に回した手はメイド服の下のドールスーツの感触を確かめているようだった。

 私はそのまま押し倒されてしまうかもと思ったが違っていた。その恰好のままで何か物思いにフケていたのだ。ただテレビに見入っていた。私は肩透かしを食っていた。大抵の客は契約時間をメイいっぱい楽しもうと思って、最初から最後までラブドールの身体を貪ろうとするエッチであった。

 しかし彼は私を抱き寄せて、そのままの姿でテレビを見ていた。その時テレビで見ていたのは小難しい経済ニュースだった。正直、恋人や愛人とすごすのには、到底場違いな状況であった。もし私がラブドールでなく内臓の姿だったら、親子で仲良く見ているように見えたと思う。

 オーナーはなぜそんなことを? と思ってテレビの横のマントルピースの方に目をやると、まあ着ぐるみマスクのセンサー越しであるけど、あるものに目が釘付けになった。
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